沼垂テラス商店街にあったカフェ「Merci」が今年10月、新潟駅南口近くの米山に移転しました。移転前から人気のあったメニューは変わらず、新たに夜カフェの営業もはじめたんだとか。乙女心をくすぐるかわいらしい内装のお店におじゃまして、店主の松田さんに「Merci」をはじめたきっかけやメニューのことなど、いろいろなお話を聞いてきました。
Merci
松田 理絵 Rie Matsuda
1976年新潟市東区生まれ。高校卒業後、県外の大学へ進学。卒業後は新潟に戻り、約20年間教育業界で勤務。退職後は飲食店で働いて経験を積み、2年前に沼垂テラス商店街にてシェアショップで「Merci」をはじめる。今年10月に米山に移転。
――すごくかわいらしいお店ですね。さっそくですが、今回沼垂から米山にお店を移転されたのはどういう理由で?
松田さん:沼垂ではシェアショップで間借りしてお店をやっていたんですよ。居心地がよくて2年もいちゃったんですけど、独立する前提でやっていたので「そろそろかな」と思って移転しました。
――そもそも「Merci」をはじめたきっかけはなんだったんでしょうか。
松田さん:前職で全国のホテルを見に行く機会があり、そのときに「サービス業っていいな」「飲食業っていいな」ってぼんやりと思って。その後、子育てと仕事の両立で日々忙しくしていたこともあって、その気持ちを忘れかけていましたが、「カフェをやってみたい」という気持ちが再び強くなって、約20年働いた会社を退職し、飲食業界に飛び込みました。
――20年勤めた会社を辞めることに迷いはなかったんですか?
松田さん:結構な決断だとは思うんですけど、「今しかできないし」と思って。だけど飲食業の経験がほとんどなかったので、まずは何店舗かの飲食店で働かせてもらいました。
――沼垂でお店を出すことになったのはどのタイミングで?
松田さん:コーヒー専門店で働いていたとき、沼垂テラス商店街のシェアショップの話をいただいたんです。平日はコーヒー専門店で働きながら、週末は沼垂テラス商店街でお店をやっていました。
――お休みがないですね……。沼垂でやっていたときはどんなお店だったんですか?
松田さん:最初はお店がすごく小さかったので客席はなくて、テイクアウトだけだったんですよ。お料理が出せないので、苦肉の策でショーケースにケーキとかプリンを並べて販売していました。
――そうだったんですね。どんなきっかけでお料理も出すようになったんでしょうか。
松田さん:沼垂テラス商店街の朝市で「何かテイクアウトできる食べ物を出してみようかな」と思ってスパイスカレーを出したんです。そのときに来てくれたお客様から、「月に1度の朝市だけじゃなくて、もうちょっと頻繁にカレーを出してよ」って声をいただいたんです。「じゃあ」って大家さんがお店に客席を作ってくれて、カレーやパスタも出すようになりました。
――松田さんのセンスが表れているとても素敵なお店だと思うんですけど、お店のイメージはいつからあったんでしょうか。
松田さん:「Merci」をはじめる前に、当時働いていたコーヒー専門店の社長に「いずれこういうカフェがやりたい」っていう話をしたんですね。そしたら「いいね、ワンダーランドだね。その夢を実現できるように頑張れ!」って言ってくださったんです。
――「ワンダーランド」っていい表現ですね。
松田さん:それまで自分のやりたいことを上手く言い表すことができなかったんですけど、「ワンダーランドだね」って言われたときにすごくしっくりきたんです。人に話したことで自分の気持ちが整理できて、どんなふうにお店をやるかっていうイメージが固まりました。
――そういうことってありますよね。松田さんは「Merci」に来る方にどういうふうに過ごしてほしいですか?
松田さん:新宿のとあるホテルに行くと、入口のところにペンと時計の飾り物があるんですよ。ホテルの方にその理由を聞いてみたら、「ビジネスや勉強のことはここに置いて忘れて、ホテルでくつろいでください」って意味なんですって。忙しい毎日を過ごしている方も、ここにいるときだけは忙しさを忘れてくつろいでもらえたら嬉しいですね。
――看板メニューは沼垂時代から変わらずカレーですか?
松田さん:自分ではカレーをメインにしようとは思っていなかったんですけど、朝市をきっかけに出すようになってからはカレーを食べに来る方が多くて、看板メニューみたいになっちゃいました。もともと家で作っていたスパイスカレーを出しただけなんですけど(笑)
――お家でスパイスカレーっておしゃれですね。カレーの種類は日によって変わるんでしょうか。
松田さん:ベースのメインは「チキンカレー」か「キーマカレー」って決めています。昨日のメインは「黒ゴマのキーマカレー」でした。あいがけにすると違うカレーが乗るんですけど、それは何日かに1回変えています。
――黒ゴマのキーマカレーって初めて聞きました。
松田さん:ココナッツミルクの代わりに胡麻を使っているみたいな感じですね。お子さんや辛いものが苦手な方でも食べられるような辛さにしているので、辛みが足りない方には後からカイエンペッパーとかガラムマサラをかけて調整していただけるようにしています。
――自分で辛さを調整できるのは嬉しいです。スイーツはどんなものがあるんですか?
松田さん:今は「キャロットケーキ」「プリン」「お豆腐のマフィン」の3つを作っています。マフィンは生地の半分が豆腐で、バターや卵を使っていない罪悪感少なめのケーキです。中に入るものはいろいろ変えているんですけど、昨日だったら「レーズンとクリームチーズ」「黒糖とくるみ」の2種類用意して、どちらがいいか選んでもらったり。マフィンを買いに遠方から毎週来てくださるお客様もいるんですよ。
――米山に移転してから夜の営業もはじめられたそうですね。
松田さん:金曜日と土曜日だけ「夜カフェ」をやっています。おつまみとワイン、カレーとビールを頼む方もいれば、コーヒーを飲みに来る方もいらっしゃいます。過ごし方は様々ですが、昼とは違った雰囲気でくつろいでくださるお客様が多いです。
――「夜カフェ」ってなんだかワクワクする響きです。
松田さん:私自身、駅南で飲んだ後にコーヒーを飲みたくなるときがあったんですよね。でも駅の反対側まで行くほどではないし、仕方ないからコンビニでコーヒーを買うっていう(笑)。だから「夜やっているカフェがもっとあればいいのにな」って思っていたことはありましたね。
――お客様はどんな方が多いですか?
松田さん:幅広い年齢層の方が来られます。学生さんや私よりも年上の方、ひとりの方、カップルもいれば男性ふたり組で来られる方もいますよ。高校生の男の子がひとりで来てテストの話をしていったこともありましたね。「大変だね~」って(笑)。子育て中のママさんの悩みを聞いたりすることもありますし、コーヒー好きなお客様とコーヒー談義に花を咲かせることもしばしば。
――本当に幅広いですね(笑)
松田さん:そうやって私と話したりしてもいいし、静かに本を読んでいてもいいし、好きなときここに来てほっこりして帰っていってくれたらいいなって思います。
――今後はどんなふうにお店を続けていきたいですか?
松田さん:沼垂時代からのお客様が今も離れずに来てくれているわけで。ここに移って新しいお客様との出会いもたくさんあるから、そういう出会いを大事にしながら長く続けていきたいですね。自分の好きなものを置いて、自分の好きな空間「小さなワンダーランド」を作っていけたらいいなって思います。
Merci
新潟市中央区米山2-8-8
日~水曜 11:00-18:00(L.O17:00)
金・土曜 11:00-16:00(L.O15:00)/18:00-22:00(L.O21:00)
木曜定休