とろ〜り流れる半透明のハチミツ。黄金色のものから琥珀がかったものまで色もさまざま。栄養価の高い健康食品としても注目を集めています。そんなハチミツには花や木によって、驚くほどいろいろな種類があるって知ってました? 新潟市中央区の西堀通「ハチミツ専門店 Miele(ミエーレ)〜近藤養蜂〜」のオーナーにして養蜂家の近藤さんに、ハチミツについていろいろ教えてもらいました。
ハチミツ専門店 Miele 〜近藤養蜂〜
近藤 基道 Motomichi Kondo
1970年柏崎市生まれ。近藤養蜂代表。金融関係のサラリーマン、レストランの仕事を経験した後、30代半ばから養蜂家を目指し始める。養蜂の修行を8年間した後「近藤養蜂」として独立。2018年新潟市中央区に「ハチミツ専門店 Miele」をオープンする。養蜂場とお店を行ったり来たりの毎日を過ごしている。
——こちらのお店はいつオープンしたんですか?
近藤さん:昨年の1月にオープンしました。以前はイベントに出店しながらハチミツの販売をしていたんです。そのたびにお客さんから、いつでも買えるように店舗販売してほしいという要望をいただいてたんですよ。そこで、まずは様子を見てみようということで西堀ローサのチャレンジショップで3年2ヶ月営業してみたんです。
——なるほど。チャレンジショップの反響はいかがでしたか?
近藤さん:おかげさまでお客さんは増えました。チャレンジショップは契約期間が2年間なんですが、管理しているところから契約を延長してほしいと言われて、もう1年2ヶ月延長したんです。卒業という形で移転したわけですけど、地上に出て今の店舗で営業してみたら、もっとお客さんが増えました(笑)
——地上の方が露出度が高いですもんね(笑)。お店のこだわりを教えてもらえますか?
近藤さん:安全なハチミツを安心して楽しんでほしいと思っています。ですから、自分で採ったハチミツの他は、厳選した海外のハチミツを扱っています。なぜ海外のハチミツなのかというと、日本で採れないハチミツもたくさんあるんですよ。あと、お客さんが納得できるハチミツを選んでほしいと思ってます。ですから私やアドバイザースタッフがひとつひとつ丁寧に説明させてもらってるんです。
——ハチミツってこんなにあるんですね!お店のオススメを教えてほしいんですけど…。
近藤さん:うちの店ではオススメはないんです。たくさんの種類がある中から、テイスティングして自分好みのものを買ってもらうようにしています。味や香りは花の種類によって変わりますからね。
——どんなハチミツがあるのか教えてください。
近藤さん:一番人気があるのはアカシアのハチミツですね。わりと一般的なハチミツで、新潟の養蜂家がメインで採るものなので馴染みがあると思います。くせがなくて、さっぱりした味わいなので日本人好みのハチミツですね。レモンのハチミツはさっぱりして爽やかな風味が特徴です。テイスティングしてみますか?
——ほんとだ。レモンの方が爽やかですね。他にもありますか?
近藤さん:フランス産ラベンダーのハチミツは、華やかで桜餅みたいな味がするんです。鎮静作用があるので、紅茶やミルクティーに入れて寝る前に飲んでもいいですね。同じくフランス産の栗のハチミツもありますよ。ほのかな苦味があって黒糖飴のような風味が特徴です。コーヒーに入れてもいいし、ハード系パンやブルーチーズによく合います。鉄分豊富なので女性にオススメです。
——このふたつはかなり個性的な味ですね。変わったハチミツってありますか?
近藤さん:花ではなくて樹液のハチミツとしてもみの木があります。どっしりとした落ち着いた味わいと、木の香りが特徴です。抗菌作用があるので健康食品としてストレートで味わってもらってもしいいし、トーストに乗せて食べてもらっても合います。
——樹液のハチミツってはじめて舐めました。どっしりした感じですね。この「百花蜜」って何ですか?
近藤さん:「ひゃっかみつ」といって、2種類以上の花の蜜がブレンドされたハチミツです。「ハチミツ」としてひとまとめに売ってるところも多いんですけど、うちの店ではハチミツの個性を大切にしたいので、どんな花の蜜のブレンドか細かく分類して売っています。ハチを置く場所や季節によって花の種類が変わるので、味わいや風味にも変化が出ます。たとえば、春はまろやかな味で、夏は個性が強い味になるんですよ。
——いろんな国のハチミツがあるんですね。どんな国のものを扱っているんですか?
近藤さん:ニュージーランドやイタリア、フランス、ハンガリー、ルーマニアといったヨーロッパのものが多いです。こうした国々は、乾燥していて涼しいのでミツバチが過ごすのに適した気候なんですよね。その反面、日本は湿度が高くて国土が狭いので、ハチミツに関しては後進国なんです。
——なるほど。では、ハチミツにはどんな性質があるんですか?
近藤さん:糖度80%前後、水分20%で酸性のため雑菌がわかないので、品質のしっかりしたハチミツは腐らずにもちます。賞味期限の長い食品ですね。海外では「メディカルハニー」と呼ばれて、健康食品として注目されています。うちの店でも扱っているハチミツ配合の石けんは保湿性に優れていて、使うと肌がしっとりします。ハチミツ入りの歯磨き粉は歯周炎に効果があるといわれています。
——そんなハチミツはどんな場所で採っているんですか?
近藤さん:私は海のそばで採っています。巣箱を通年置いておける場所もあるし、花の咲いている時期が終わったら移動する場所もあります。ミツバチは家畜扱いになるので役所に届出して許可をもらわなければダメなんです。その際、同業者との縄張り調整が行われます。ミツバチの縄張りは2km圏内なので、その範囲内に同業者がかぶらないようにしてるんですね。
——「ハチミツ専門店 Miele」では、どんなことにこだわってハチミツを提供してるんですか?
近藤さん:つねに品質にこだわったハチミツを置くようにしています。私はハチミツを採るときは、濃いめに採るようにしてるんです。量が少なくなって値段も高めになってしまうんですが、変なハチミツは採りたくないし、クオリティーは下げられないですからね。今後はもっとクオリティーの高いハチミツをお客さんに味わってほしいと思ってますし、お店に置く種類も増やしていきたいです。
質の高いハチミツだけを厳選し、ハチミツのことを知ってもらい、テイスティングしてもらった上で、お客さんそれぞれに好みのハチミツを買ってほしいという近藤さん。今回の取材を通して、花や木によってハチミツにもこんなに種類があるのかと驚きました。深く知ることで、ハチミツをもっと楽しめるのではないでしょうか。今度はぜひハチミツ採集の現場におじゃましたいと思います。