動物と飼い主、両方に寄り添う。
50周年を迎えた「宮川動物病院」
その他
2026.02.15
2025年に開院50周年を迎えた中央区の「宮川動物病院」。2代目院長の宮川先生に、獣医師を目指した幼少期のことや、これまでどんな思いで治療に向き合ってきたのかなど、いろいろとお話を聞いてきました。撮影に協力してくれたのは先生の愛犬「ルイくん」。いつもと違う雰囲気にそわそわしていたようでしたが、先生が声をかけながらルイくんを優しく撫でると、みるみるうちに表情が柔らかくなっていきました。
宮川 篤史
Atsushi Miyagawa(宮川動物病院)
1982年新潟市生まれ。北里大学獣医学部卒業。名古屋の動物病院で経験を積んだ後、2011年に新潟に戻り「宮川動物病院」に勤務。2代目院長。社会人チーム所属の現役バスケットボールプレイヤーで、ポジションはポイントガード。
病気そのものより、
ひとつの「命」に向き合う。
――宮川先生は、お父さんの後を継いで獣医師になられました。小さい頃、お父さんのお仕事をどう思っていたか覚えていますか?
宮川先生:周りに動物がいるのが当たり前の環境だったんですよね。自宅でも犬と猫を飼っていましたし、病院に遊びに行くとイグアナやアライグマがいたこともありました。仕事を終えて帰ってきた父から「今日は、こんな子を診たよ」と話を聞いたり、街中で父が患者さんに声をかけられている姿を目にしたりして、小学生の頃から「獣医師になりたい」と口にしていました。
――最初のお勤めは、名古屋の動物病院だったそうですね。
宮川先生:大学の先輩が勤めていたので安心感があったのと、病院の規模も理想的だったんです。あまりに大きな病院では、いろいろな治療に関わることができません。一方、小規模の病院に勤めるのであれば、当院とあまり変わらないですから。新しいことを学びつつ、「宮川動物病院」に戻るときの下地になる経験をしたかったんです。
――私たちがお世話になる病院と動物病院、いちばん大きな違いってなんでしょう?
宮川先生:人間の病院と比べると、診療分野が幅広いところかもしれませんね。当院では、内科、外科、整形外科、ドッグ検診を診療内容としています。ただ最近は、特定の分野を得意とする動物病院も増えているんですよ。新潟県内でも、その傾向にあります。
――では、宮川先生のお得意分野というと?
宮川先生:満遍なく診療ができる「町のお医者さん」になれたらいいな、と思っています。病気を診る以上に、「その子」を丁寧に、しっかり診てあげたいという思いがあります。
――「まず最初にお世話になる病院」ですね。
宮川先生:最初であって、最後でもありたいですね。病気を治すために全力を尽くすのは当たり前のこと。でもみんながみんな完治するわけではありません。当然、命には限りがあります。最期を看取るのはしんどいものです。でもそのとき、飼い主さんと動物のどちらも幸せで、悔いのない締めくくりを迎えてほしいと思っています。

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「治す」から、
「幸せを考える」へ。
――これまで、つらい場面も経験されたと思います。動物を看取ることについて、先生はどうご自身の気持ちを整理されてこられたんでしょうか?
宮川先生:動物を治すために勉強したり、経験を積んだりしているわけなので、若い頃は「治すんだ」って気持ちが全面に出ていたと思います。でもやっぱり、現実は「さまざまな死」と向き合わなくてはいけません。「動物と飼い主さんにとって苦しくないかたち」を一緒に考えるため、そして「どうしたら納得ができるか」をすり合わせるために、飼い主さんとはたくさんお話をします。
――そのように考えが変わったできごとがあったんでしょうか。
宮川先生:「あの体験があったから」というよりは、徐々に変わっていったような気がしますね。「ただ動物を治す」という視点から、「動物と飼い主さんを幸せにする」という価値観にシフトしてきたところがあるかもしれない。「どうにか治したい」という段階から、治療が難しい状況に変わったときこそ、自分の真価が問われている、と思っています。
――飼い主にも愛情深い言葉をかけてくださるし、宮川先生はもちろん、他の動物病院の先生方からも大きな包容力を感じるんですよね。何か秘密があるんでしょうか?
宮川先生:やっぱり、動物が好きでこの仕事に就いているからだと思いますよ。それに物腰が柔らかくないと、動物は私たちを怖がります。「この人なんだか怖いぞ」と感じたら、もう受け入れてくれません。優しく接して、「この人はいい人だ」「安心できる」と思ってもらわないと(笑)

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治ってくれて、
ありがとう。
――どんなときに獣医さんとしての喜びを感じますか?
宮川先生:やっぱり動物たちが元気になって、飼い主さんが喜ばれている姿を見ると励みになりますね。そのためにこの仕事をしている、と言ってもいいくらい。それから以前に動物を亡くされた方が、「新しい子を飼いはじめました。先生、診てください」と、再び当院を選んでくださるときも、とても嬉しいです。
――ちょっと聞きにくいですが、その逆は?
宮川先生:「もっと、こうしてあげればよかったかな」と思うときもいっぱいありますんで……。自分の力が不足しているために亡くなった子がいたとしても、その経験を次への糧にしないといけない、と思っています。「立ち止まっていては、責任を果たせない」という気持ちでいますので。
――その真摯なお考えで、お父さんの代からずっと診療に向き合ってこられたんですね。そして昨年、「宮川動物病院」さんは50周年を迎えられました。
宮川先生:50周年を迎える動物病院さんは、新潟市内、いや県内でもほとんどないと思います。こうして当院が続いてきたのは、必要としてくださる方と一緒に働いているスタッフや関係者の皆さんのおかげです。これまでお世話になった皆さんに楽しんでもらう機会として、お礼の気持ちを込めて、昨年の夏にイベントを開催したんですよ。「楽しかった」という声をたくさんいただけて、よかったです。
――さて、最後の質問です。宮川先生がお仕事をされる上で、常に心に留めていることはなんでしょう?
宮川先生:常に忘れないようにしようと思っているのは、自分が動物の病気を治すのではなく、「動物の病気が治る手伝いをしている」という気持ちでいること。自分が治したんじゃない。「治ってくれてありがとう」という気持ちでいるから、治療が実を結ばない子がいても受け入れられるのかな、と思います。それともうひとつは、動物と飼い主さんの両方の幸せを模索し続けること。医者は神様じゃないから、すべての病気を治せるわけじゃないです。「命をどれだけ大切にできるか」「残された命にどう関わるか」、しっかりと飼い主さんと共有していこうと思っています。

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