Things

暮らしに寄り添うキャンドルの魅力を伝える「amulette」。

個性的なお店がたくさんあって、探索のしがいがあるところも古町の魅力のひとつです。そんな古町に去年移転してきた「ろうそく屋」さんの「amulette」。キャンドルの魅力、そして安全に配慮した作り方を教えてくれるのは、以前ハーブ園で働いていたという阿部さんです。キャンドル作りをはじめたきっかけや運営している教室の特徴など、いろいろとお話を聞いてきました。

 

amulette

阿部 絵理香 Erika Abe

1975年新潟市生まれ。会社員を経て、新潟市内のハーブ園に転職。2021年に開業し「amulette」をはじめる。2023年、拠点を西区から古町へ移す。

 

自分を癒してくれるハーブと出会い、趣味のクラフトに生かす。

——「amulette」さんではキャンドル教室やワークショップを開催している他に、作品も販売されていますよね。

阿部さん:教室とワークショップの運営、それと自分で制作したキャンドルの販売もしています。自己紹介をするときは「ろうそく屋です」と言っています(笑)

 

——「ろうそく屋さん」とはかわいらしい。

阿部さん:いろいろな活動をしていますが、自分の中で「いちばんは講師業」だと思っています。そういう意味ではメインは「キャンドル教室」でしょうか。生徒さんには作家として歩まれている方もいらっしゃるので、今は生徒さんの後方支援に力を入れたいと思っています。なので自分の作品販売は、このショップ内とオンラインストア、ときどきお誘いいただくマルシェへ出店する程度に留めています。

 

 

——ホームページを拝見したら、阿部さんは大変なご病気を経験されたと書かれていました。

阿部さん:2015年にくも膜下出血を発症し、入院生活を送っていました。でもお医者さんがびっくりされるくらいの回復力で、病後は安定していたんです。それが退院の前夜にパニック障害を起こしてしまって。そこからの治療がすごく長かったんです。それで自分を癒すというか、整える手段としてハーブに出会いました。

 

——今の阿部さんのお姿からは想像できません。大変な生活を送られていたんですね。それにキャンドルではなく、ハーブに関心を持たれたのが先だったとは意外でした。

阿部さん:そう、ハーブが先なんですよ。それから後にお勤めすることになるハーブ園に足しげく通って、資格取得に向けて勉強しました。他の生徒さんたちは、ハーブをお料理に使うとか栽培とかに関心を持っていたんですけど、私は断然クラフトが好きだったんですね。

 

——クラフトというのは、ハーブを使って何か作るということ?

阿部さん:そうそう。ハーブでリースを作ったりとか。資格を取ってから、ふと「ところで、これから何をするんだろうな」と考えたとき、たまたまキャンドルにハマっていて。キャンドルとハーブをつなげられないかなと考えました。キャンドルは火を使うし、人さまにプレゼントすることを考えると安全でなくてはなりませんので、きちんと学ぼうと思って2019年に横浜の教室にキャンドル作りを習いに行きました。

 

暮らしを彩り、大切な人のプレゼントにもなるキャンドル。

——それはプロフィールに記載されている「JCA日本キャンドル協会認定キャンドルインストラクター」ですね。

阿部さん:ええ、そうです。当初は「JCA」の認定校を新潟で開校できたらいいなと思っていました。でも横浜の先生がご自身で協会を立ち上げたんですね。私はこの先生についていきたいと思ったので、先生が立ち上げた協会の認定校をはじめることにしたんです。なので私の教室は、新潟初の「FCDA認定校」という位置付けです。

 

——きっと深く学ばれたんですね。

阿部さん:通常のコースレッスンを終え、講師向けのコースも修了しました。「FCDA認定校」となったのは2022年です。

 

——会社を辞められたのは?

阿部さん:2020年です。そこからはハーブ園のスタッフとして働いて、キャンドル教室もやっている人みたいな感じでした。そういうスタンスで進んでいこうと思っていたんですけど、どちらも中途半端だなと思って。2021年に開業し、西区でキャンドル教室を開きました。古町に移転したのは去年です。

 

——ちなみにキャンドル制作をされる以前にも、ものづくりをされていた?

阿部さん:いろいろと作るのが好きでしたね。ワークショップに参加したり、あちこち出かけていました。

 

——それからご病気されてググッと関心のある分野に進まれていったと。

阿部さん:大病された方は「人生観が変わる」とよくおっしゃいますよね。私も確かにそれはあるなと思います。ただそれが「会社を辞めよう」と直結したかというとちょっと違って。大病したことでハーブに出会い、それがキャンドルにつながっていったという感じがします。触れ合っているときは発作が抑えられ、癒される時間だったんです。

 

 

——阿部さんが作られたり、教えたりされるもののキーワードのひとつは「癒し」ですか?

阿部さん:「植物の優しさをお守りに(Kindness of the plant will be your “amulette”)」をコンセプトにしています。「amulette」の単語には「お守り」という意味があるので、癒されるお守りですね。

 

——どんな思いを込めて制作しているんでしょう?

阿部さん:とにかく楽しんで作っているように思います。植物を使ったボタニカルキャンドルを作るときは、灯火の光が入ったときに大好きな植物が美しく見えるような配置とか、透け感とかを意識しています。キャンドル制作は注ぎ込みの温度やタイミングによっても仕上がりに差が生じるので、ひとつひとつの動作に気を配りつつ、灯した姿を想像しながら夢中になって作っているかな。

 

——「FCDAフロールキャンドルデザイン協会認定校」のレッスンの特徴みたいなものはあるんでしょうか?

阿部さん:デザイン性はもちろん、安全面をいちばんに考えているところでしょうか。私自身、安全面をきちんと学びたいと思ったのが、キャンドル作りを学ぶきっかけだったんです。特に植物が入っているとね。植物は可燃物なので炎が干渉しないように、ロウの配合や作り方など細かいところまで計算された技術を学ぶことができます。

 

——どのキャンドルもとてもきれいで、火をつけるのがもったいないくらいです。

阿部さん:お客さまもよくそう言ってくださるんです。ありがたいなと思うんですけど、私はキャンドルは火を灯した姿が完成形だと思っています。大切に飾ってくださるのも嬉しいんですけど、灯した姿はぐっと表情が変わるんですよね。それは灯した人にしか見えない世界ですよ。

 

レッスン講師は「伝える仕事」。

——教室のこともお伺いします。先ほどのお話だと、生徒さんには作家さん志望のような方が多いんでしょうか?

阿部さん:生徒さんの中には、すでに何名か作家活動をされている方がいらっしゃいます。自分のためにキャンドルを灯したいという方はたくさんいらっしゃいますし、趣味として「やってみたい」という方も大歓迎です。単発レッスンやワークショップも開催しているので、気構えずにお越しください。

 

 

——レッスン内容にもよるんでしょうけど、キャンドルを完成させるまでにはどれくらい時間がかかるんですか?

阿部さん:どうしても「固まり待ちの時間」が発生するんですよね。その時間を含まないとだいたい2時間くらいでしょうか。今は古町で活動しているので、待っている時間に近くを散策していただけるようになりました。そうしたくて古町に拠点を移したんです。ランチやお茶をしながらおしゃべりする時間も楽しいじゃないですか。

 

——私もお友達を誘ってワークショップに参加したくなりました。自分が作ったキャンドルに愛着が湧きそうです。

阿部さん:ご自分でキャンドルに使用するお花を選んでいただくんですよ。やっぱり自分の好きなお花で作ったキャンドルはかわいいですよね(笑)

 

——今後の展開として何か考えていることはありますか?

阿部さん:ようやく古町に移転して1年ちょっとですけど、「この先」というよりはまず地盤固めをしなくちゃいけないと思っているんです。まだまだ認知度をあげたいですしね。私としては講師業を頑張りたくて。もっともっといい先生になれるように日々意識していますかね。

 

——ご自身で作品も作るけど、特に力を入れるのは講師業なんですね。

阿部さん:「伝える人」でありたいと思っているんです。実は私、会社員時代は取扱説明書を作る仕事をしていたんですよ。いろいろな基準を守りながら伝える仕事を。今は講師業をしているので、きっと伝えることが好きなんですね。やっぱりひとりでも多くの人にキャンドルの魅力を知ってもらいたいですし、生徒さんの活動も全力で応援したいです。暮らしの中に寄り添うキャンドルを作る人になってくれたら嬉しいなっていう思いでいるんです。

 

 

 

amulette

新潟市中央区古町通4番町579番地1 グリーンミナミ古町2F

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP