長岡市のJR宮内駅前には、長岡名物・生姜醤油ラーメンの店が何軒も並んでいます。そのなかに「ショウガカレー」というカレーを提供しているお店があります。交差点にあるカメラ屋の看板からずーっと目線を下げてみると、おしゃれなシルバーの外観に「ミヤウチショウガカレー研究所」の看板が。店内もカメラ屋と飲食店が溶け合ったようなハイブリッドな雰囲気。今回はこの不思議な「ミヤウチショウガカレー研究所」のオーナー・花田さんからお話を聞いてきました。
ミヤウチショウガカレー研究所
花田 圭太 Keita Hanada
1973年新潟市西区生まれ。「ミヤウチショウガカレー研究所」所長。大学卒業後、専門学校で建築を学び、工務店兼建築設計事務所に入社し建築デザインをやっていた。2012年「ミヤウチショウガカレー研究所」をオープン。学生の頃はクラブ通いをしていて今でもテクノ系の曲をよく聞く。趣味は店や家のインテリアレイアウトなど。
——今日はお休みのところありがとうございます。店内にカメラ屋の看板がありますけど(笑)
花田さん:このお店はもともとカメラ屋の店舗だったんですよ。私は学生の頃から、いつか店をやりたいとずっと思っていたんです。それも、カレー屋をやろうと決めていました。でも、会社勤めをして定年間近になったら始めようかな…という漠然とした考えだったんです。
——それが、どうしてお店を始めることになったんですか?
花田さん:今店舗に使っている場所にあったカメラ屋の娘さんと知り合いで、何度かお邪魔させていただいたことがあったんですよね。その頃から、この店の雰囲気が好きで、自分で店をやる時はこんな場所でやりたいなと思っていました。そのカメラ屋が閉店することを知って、この店舗を使ってカレー屋を始める決心をしたんです。
——よっぽどこのお店に惚れ込んでたんですね。じゃあ、わりと内装はカメラ屋さんのまま生かしてあるんでしょうか?
花田さん:生かしたところも多いですね。たとえばレジのとこの壁にある看板は、表にあったものを中に持ってきて取り付けました。オーディオ機器やCDが入っているガラスケースも元はカメラが陳列されていたものです。でも、けっこう直してるところもありますよ。建築関係の仕事をしていたので、職人さんの作業を見ていましたから、自分で出来そうなところは自分でやりました。壁塗り、タイル貼り、天井や床もやったし。
——外観はけっこう直したんですよね?
花田さん:そのままでもよかったんですけどねぇ。だいぶ壁が剥がれたりしてきてましたから、外壁の一部は直しました。ただ、高々と掲げられているカメラ屋のテント看板は、べつに外すまでもないかなと思って、そのままにしてあるんです。時々おじいさんが「写真の現像できますか?」って入ってきたりしますけど(笑)
——メニューの「ショウガカレー」って、どんなカレーなんですか?
花田さん:ターメリックライスの上にカレーをかけ、さらにクリームをかけてあります。クリームは見た目のきれいさと同時にコクを出すためにかけてあるんです。カレーは特別なものではなく、家庭用の一般的なカレー粉に手を加えたものです。カレーの中には、とり肉、トマト、マッシュルーム、玉ねぎ、果物が入れてあります。材料にも特別なものを使っているわけじゃなくて、みんなスーパーに売ってるのと同じものですよ。なるべくコストをかけないようにというのもあるし、自分が普段の食生活であまり食材にこだわらないからなんです。
——そのショウガカレーはどのようにして誕生したんですか?
花田さん:実をいうと、今提供しているショウガカレーが完成したのは、店がオープンする3日前だったんです。店の内装作業が楽しくて夢中になり過ぎまして、カレー作りが後回しになっちゃってたんですね(笑)。一人で時間をかけず作れることと、低価格で提供できることを念頭に考えました。
——カレー作りはどこかで修行したんでしょうか?
花田さん:まったくの独学です。小学生の頃から趣味でカレーを作り続けてましたから、なんとなく作れたんですよね。本格的に作り始めたのは高校に入って一人暮らしを始めた頃です。大学時代には通ってたクラブイベントでカレーブースを出展させてもらったり、会社員時代にはアパートに同僚を呼んでカレーを有料で振る舞ったりしてました。わりと評判がよかったので、それで自信はついたかもしれませんね。
——趣味でやってきたわけですね。ショウガをカレーに入れたのは何か狙いがあったんですか?
花田さん:もともとインドカレーにはショウガが入ってるんですよ。まあ、私がショウガ好きだってこともあるんですけどね。名前をショウガカレーにしたのは、場所柄、生姜醤油ラーメンを意識したってところもあります(笑)
——メニューをショウガカレー1本にしたのは、どんな理由があったんですか?
花田さん:最初は何種類かのカレーを提供する予定だったんですよ。まずはショウガカレーを提供して、そのうち増やしていけばいいかなって思ってたんです。でも、今ではこのままショウガカレー1本でいいかなって思ってます。
——店にはどんなお客さんが多く訪れますか?
花田さん:平日は作業着を来たおじさんとか、おじいさん、おばあさんが多いですね。たぶん、メニューがショウガカレーだけなので、わかりやすいし頼みやすいんじゃないでしょうか。あと時間がかからず提供できるので、ランチに時間をかけたくないサラリーマンにも利用しやすいんだと思います。常連のおじさんなんかは、店に入って来るなり注文して席につき、食べて出て行くまで10分かからない人もいます(笑)。土日には近所の高校の学生も食べにきますね。
——今後、メニューを増やしたり、新しい事をする予定はありますか?
花田さん:うーん。今のままやっていきたいですね。特別に新しく何かしたいということもないです。あ、でも、どこかの企業からショウガカレーをレトルトカレーにして販売するような依頼が来たらうれしいです(笑)
特別な材料をいっさい使っていないと、さらっと語る花田さんの言葉で、普通のカレーなのかなと思いながらショウガカレーを口に入れて驚きました。とても奥深い味わいのある、美味しいカレーなんです。メニューをショウガカレー1本で勝負しているのは、花田さんの自信のあらわれなんだと感じました。長岡名物の生姜醤油ラーメンもいいですが、ショウガカレーも食べてみてはいかがでしょうか。
ミヤウチショウガカレー研究所
〒950-1106 新潟県長岡市宮内3-1-16
0258-77-9810
11:00-20:00
木曜日・第2第4水曜日休