心地よく音楽を楽しむ夜のひととき。お酒とコーヒーと音楽の店「楽屋」
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2019.06.15
ジャズの音色とお酒とコーヒー。村上の音楽好きが集うバー。
村上駅前の閑穏とした雰囲気に溶け込んだ、一見何の変哲も無いビル。雑然とした階段を2階へ上がり、突き当たりのドアを開くと、レコードの溝からムーディーなジャズの音色が響き渡る空間がある。城下町・村上では数少ない、音楽好きが集うバー「楽屋」だ。お店に入るまでは少々勇気が必要そうな外観だが、一旦ドアを開ければ店主の青山将之さん(48)が人懐っこい笑顔で出迎えてくれる。

楽屋
青山将之 Masayuki Aoyama
1970年村上市生まれ。卓球に熱中していた中高時代のヒーローは、当時の世界チャンピオン・郭躍華(中国)。卓球好きが高じて中国語にハマり、京都外大の中国語学科に進学。同地で名物ジャズバー『JAZZ IN ろくでなし』と運命の出合いを果たす。

落ち着いて音楽を楽しむことのできる、貴重なお店。
カウンター向かい側にズラリと並ぶレコードは1,500枚以上。CDを含めると総音源数は2,500超にも及び、その全てが無料でリクエスト可能だ。特定の作品でなくとも、聴きたい曲の感じなどを伝えれば青山さんがそれに合わせてチョイスもしてくれる。チャージ(席代)も無料。音源を聴くだけでなくライブも月1回ほどの頻度で開催し、これまで峰厚介や地元出身の伴田裕、また三上寛ら、錚々たる面子が同店で生音を響かせている。
「お客さんに『落ち着く』と言ってもらえるのが一番嬉しいですね」と青山さん。音源のストックはだいたい7割がジャズで、お客からのリクエストもジャズが多いものの、青山さん曰く「決してジャズ専門というわけではないです。良いものなら何でも」。店名も正確には『お酒とコーヒーと“音楽”の店・楽屋』で、ジャズ以外にもブルースやソウル、フォーク、ロックなど、洋邦・年代問わず取り揃える。

パンクからはじまり、京都のジャズバーでカルチャーショック。
青山さんの音楽の原体験は、ジャズではなくパンクだ。地元・村上での中高生時代は「パンクと卓球が青春」だった。部活で卓球に明け暮れながら、クラッシュやラモーンズ、スターリン、あぶらだこなどを聴き込み、胸を焦がしていた。つい先日訃報が伝えられた元スターリンの遠藤ミチロウさんとは後年親交が生まれ、お店で何度かライブもしてもらった。
パンク少年だった青山さんがジャズに目覚めたのは、卓球に打ち込む中で関心を持った中国語をさらに学ぶべく進学した京都の街でのこと。大学の友人に連れられて何の気なしに入ったジャズバー『JAZZ IN ろくでなし』でカルチャーショックを受けた。時代は90年代初めの京都。今まで会ったことのない雰囲気をまとった人々がたむろする、ルードで雑然とした同店に響き渡るジャズはとんでもなく魅力的に聴こえた。とりわけ同店で聴いた浅川マキは大変な衝撃で、以来現在に至るまで青山さんにとってのベストアーティストだ。
以後たびたび同店へ足を運ぶようになった青山さんは、ぼんやりと「自分も将来こんな店がやれたらな」と考える一方、大学卒業後は専門的に学んだ中国語を生かそうと大阪の貿易商社に就職。ほどなく会社が東京に移転したため店には通えなくなったものの、サラリーマン生活を送りながら、東京でもライブに行ったりジャズ喫茶やレコードショップを訪ね歩いたりバンドを組んだり、自分なりの音楽生活を楽しんでいた。

村上には、思っていた以上に音楽好きが多い。
転機は20代後半にさしかかった98年。会社での仕事にストレスを抱えていたところ、追い打ちをかけるように実家で暮らす母親の体調が思わしくないことが分かり、退職して帰郷することに。そして翌年、母を看取った後、青山さんは「定年後にのんびりと」と考えていたバー開業のアイデアを前倒しで実現させようと決意する。影響を受けた『JAZZ IN ろくでなし』で数ヶ月働かせてもらって経営や接客のノウハウを学び、自身30歳となる節目の2000年夏、満を持して「楽屋」をオープンさせた。
開店して分かったのは、「地元・村上には思った以上に音楽好きが多い」こと。音楽を提供するだけでなく、お客さんから自分の知らなかった音楽を教えてもらうことも多く「それもお店をやっている醍醐味のひとつですね」と語る。リスナーとしての好奇心はまだまだ旺盛だ。かつてと比べて頻度は減ったものの、今も時間を見つけては県内外のレコード店に足を運び続け、新たな音楽を棚に加えていっている。

「気負わずのんびりと自分のペースで」それが、今の青山さんのスタンス。
2次会のお店選びでほぼ居酒屋かカラオケスナックしか選択肢がない村上において、落ち着いた雰囲気で音楽を楽しめる「楽屋」は貴重な存在だ。駅前という立地から、音楽目当てでなくとも、旅の途中でフラりと立ち寄ったり、電車の時間調整などに利用したりする「お一人さま」客が意外に多い。青山さんは「深夜にコーヒー1杯だけでも、気軽に立ち寄ってもらえれば」と歓迎する。
開店当初から目標として考えていた「30年続ける」まで、あと11年。自身の30代と重なる最初の10年は「がむしゃら」で、40代と重なる次の10年は前半が「暗中模索」。13年の冬に心臓病を患い、回復してからは「いい意味で開き直れた」という。以後は「気負わず、のんびりと自分のペースで」営業を続けることを決め、これからも村上の夜に音楽の灯りをともし続けていく。



お酒とコーヒーと音楽の店 楽屋
村上市田端町10-22瀬波タクシービル2階
0254-53-1078|gakuya@me.com
18:00-0:00 毎週火曜・水曜定休
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