健康的で美味しいおむすびを握り続けて10年の専門店「むすびや百」。
食べる
2020.04.01
アトリエか工房のような雰囲気、だけどここはおむすび専門店。
スケッチブックや本、そしてハンドメイド作品や陶芸作品が並ぶこの空間は、まるで工房かアトリエといった雰囲気。でも実はここ「むすびや百(もも)」という名のおむすび専門店なんです。オーナーの百都(ももつ)さんに、おむすびのこだわりや、ご自身のアート活動についてのお話を聞いてきました。


むすびや百
百都 真希子 Makiko Momotsu
1976年福島県生まれ。新潟市の調理師専門学校で料理を学んだ後、パン屋でアルバイトをし製造を担当する。その後東京のおむすび店で2年間修行し、2009年新潟市中央区の上古町に「むすびや百」をオープン。絵を描くことも好きで、今年4月30日から5月12日までギャラリー蔵織において初の個展「てんとせん」を開催する。
パン屋さんになるつもりが、おむすび屋さんに?
——今日はよろしくお願いします。おむすび専門店を始めたいきさつを教えてください。
百都さん:料理人になりたいと思っていたので、まずは新潟市内にある調理師専門学校で勉強して調理師免許を取りました。その頃からパン屋さんでアルバイトをしていて、パン作りを担当していたんです。そのうち、だんだんパン屋さんをやりたいと思うようになっていきました。
——最初はおむすび屋さんじゃなくてパン屋さんを目指していたんですね。
百都さん:そうなんです。でも、知り合いから「自然食カフェレストランをやってみないか」という話があって、私も自然食に興味があったので引き受けることにしたんです。ところが、パン屋さんを辞めた後で、そのカフェレストランのオープンが延期になってしまって。そのオープンまでの働き口として、東京のおむすび屋さんを紹介されたんです。それが、おむすびを作ることになったきっかけですね。
——東京のおむすび屋さんではどんな仕事をしてたんでしょうか?
百都さん:おむすび屋さんの社長は働くことが大好きな人だったので、スタッフにも同じように働くことを求めていたんです。だからとてもハードな職場で、長続きする人が少なくて常に人手不足でした。土日はお休みだったんですけど、ヘルプに行ったりしてました。休めるのは移動時間だけって感じでしたね。すごい数のおむすびを握っていた経験が、今のお店で生かせていると思います。
——うわー、それは大変な職場ですね。新潟に帰ってきたのはやはり疲れたとか…?
百都さん:東京のおむすび屋さんで働いていたときは社員寮を用意してもらっていたんですよ。でも、その寮っていうのは2年間っていう期限があったんです。2年間のうちに東京になじんで、自分で生活できるようになりなさいっていう理由だったんですね。その期限を迎えたのを機に新潟に帰ろうと思ったんです。

新潟でおむすび屋を商売として成り立たせることに挑戦。
——新潟に帰ってきてから自分でおむすび屋を始めたのはどうしてなんですか? ていうかカフェレストランは…。
百都さん:誘われていたカフェレストランの話が結局、立ち消えになってしまって。新潟に帰ったのはいいけど仕事がなかったんです。それでおむすび屋を始めたんですけど、東京のおむすび屋の社長に言われた言葉もきっかけになってます。「新潟でおむすびの店をやろうとは思わない」って。それは、米どころ新潟では家庭でいくらでも美味しいご飯が食べられるので、おむすび屋を開いても誰も買わないし商売として成り立たないということでした。それを聞いて、新潟でおむすび屋を商売として成り立たせることにチャレンジしてみようと思ったんです。
——その話を聞いて逆に挑戦するっていうのは、勇気があるというか…。
百都さん:もちろんそれだけじゃなくて、おむすびだったらスタッフを雇わずに一人でできるし、組み合わせを変えることで具のバリエーションがいくらでも作れるっていう理由もあったんですけどね(笑)
——なるほど。「むすびや百」はどんないきさつでオープンしたんですか?
百都さん:新潟に帰ってから、いろんな人に「自分でお店をやろうと思っている」っていう相談をしていたんです。相談した中の一人が上古町にあった雑貨店の中のフリースペースを紹介してくれたので、そこで1年半ほど営業して2010年に今の店舗に移転したんです。
——この店舗だけでも10年間やってるんですね。10年以上「むすびや百」をやってきて印象に残っている出来事ってありますか?
百都さん:2011年に起こった東日本大震災のときですね。東北電力の中では、どの地域にどのくらい送電するかという問題を仙台支店と新潟支店の2ヶ所だけで対応していたらしいんです。ところが仙台支店が被災してしまったので、新潟支店で全てをまかなうことになってしまったんですね。新潟支店ではしばらく泊まり込みが続いたので、私のところにおむすびのオーダーが入ったんです。そのときは一晩徹夜して400個くらいのおむすびを握り続けました。

とにかく自分が美味しいと思えるおむすびを食べてほしい。
——おむすびのこだわりをお聞きしていいでしょうか?
百都さん:とにかく自分が食べて美味しいと思えて、食べた人の健康が最低限守られる材料だけ使うようにしています。だから化学肥料を使わずに栽培された野菜や、自然食品を多く使うようにしています。ただ、それを売りにしたいとは思ってないんですよ。いくら体にいいからといっても、美味しくなければ食べたいと思わないじゃないですか。だから、安心して食べられるだけじゃなく、自分が美味しいと思えるものをお客様にも食べてもらいたいんです。握り方は力加減に気をつけています。空気が入っている方が美味しくて食感もいいので、ぎゅーっと握りすぎないようにしています。
——このおむすび、ご飯の色が少し茶色っぽい気がしますね?
百都さん:はい。私の好みで玄米を使っています。ただ、お客様の中には胃腸が弱い方や小さいお子様もいらっしゃいますので、玄米よりも消化されやすい三分づき米のご飯も用意しています。玄米と三分づき米のどちらでもお好みでお選びいただくことができます。

——なるほど。お米にこだわったおむすびなんですね。
百都さん:お米だけじゃなくて味噌、醤油、塩の調味料にもこだわってます。添加物を使って急いで作られたものじゃなく、昔ながらの製法でじっくり手間暇かけて作られたものの方が美味しいと思うんです。だから、そうして作られた調味料を使うようにしています。
——そんなこだわりのあるおむすびのオススメの具を教えてください。
百都さん:そうですねぇ…。まずは「豆味噌」ですかね。黒千石大豆、みじん切りした長ネギ、小さく切った油揚げ、豆麹味噌が入ったおむすびです。最初は普通の大豆で作ってたんですけど、ゴロゴロして食感が悪かったので大きさのちょうどいい黒千石大豆を使うようになりました。黒千石大豆の香ばしさと味噌のしょっぱさの相性がよくて人気があります。
——メニューにある「ふぐの子の混ぜご飯」が気になるんですけど。
百都さん:有毒なふぐの卵巣を塩漬けして毒抜きした「ふぐの子」を、酒粕に漬け込んだ後に焼いてほぐします。それと一緒にしょうが、青のり、ごま、松の実、レモン果汁、塩を合わせた混ぜご飯で握ったおむすびなんです。「ご飯」って書いてあるので勘違いされがちなんですけど、おむすびなんですよ(笑)
——おむすび以外にオススメのメニューはありますか?
百都さん:定食もやってますし、お汁粉や甘酒もご用意していますので、お持ち帰りだけじゃなく店内で召し上がっていただくこともできます。あと節分や年末には太巻、お彼岸にはぼた餅というように、季節に合わせて注文を受け付ける期間限定のメニューもあります。太巻は年間で100本注文がある人気商品です。

毎日描いていた絵で個展を初開催?
——ところで、ここに貼ってある個展のフライヤーに百都さんの名前がありますね。
百都さん:はい。4月30日から5月12日まで西堀通のギャラリー蔵織で「てんとせん」っていう個展を初めて開催させていただきます。私は絵を描くのが好きで、毎日描いてはSNSに投稿してたんです。それを見た蔵織のオーナーから個展を勧めてもらったんですよ。発表することなんて考えてもなかったんですけど、せっかくいただいた機会なので思い切って個展を開いてみることにしたんです。
——すごいじゃないですか、おめでとうございます。絵はどこかで習ったりしてたんですか?
百都さん:20代前半までは教室に行ったりしながらスケッチをしたりしてたんですが、だんだん時間に余裕がなくなってきて辞めてたんです。でも一昨年くらいから知り合いの画家の元に月一くらいで絵を描きに通うようになって、昨年からは毎日描くようになったんです。
——今後はおむすび屋さんと作家業を両立していくんでしょうか?
百都さん:はい。これからも絵は描き続けていきたいですね。絵を描くことが仕事になるのかどうかは、これからの様子を見て決めたいと思ってます。でも、最近は絵を描くことに重心が片寄ってしまってるので、今後はおむすび屋さんと絵を描くことのバランスを取りながらやっていきたいと思います。

最初はパン屋を目指していたものの東京でおむすびの技術を身につけ、おむすび屋を新潟で商売として成り立たせることにチャレンジしてみようと「むすびや百」をオープンした百都さん。趣味で描いていた絵がギャラリーのオーナーの目に止まり、来月末から初の個展を開催する予定です。これからはおむすびとアートを両立させていきたいと語る百都さん。今後もその活動から目が離せません。
むすびや百
〒951-8063 新潟県新潟市中央区古町通556
070-5567-7870
12:00-17:00
月曜火曜休
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