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和食処のかたわら錦鯉を育てている、新潟市南区の「新潟雪国家養鯉場」。

「泳ぐ宝石」と呼ばれ、海外でも人気がある「錦鯉」。その発祥の地が小千谷市と長岡市山古志だということを、皆さんはご存知でしょうか(2017年には新潟県の観賞魚に指定されました)。そんな錦鯉を新潟市南区で飼育販売しているのが、先日「Things」で紹介した和食処「瑞雪楼」の店主・青柳さんです。今回は青柳さんが経営している「新潟雪国家養鯉場(にいがたゆきぐにやようりじょう)」についてお話を聞いてきました。

 

 

有限会社 雪国家

青柳 佳皎 Yoshiaki Aoyagi

1951年新潟市西蒲区(旧潟東村)生まれ。東京の蕎麦店で修業した後、19歳で独立し横浜郊外で蕎麦店を開店。新潟市に戻り中央区で「雪国家」を開店し、南区や上越市新井にも店舗展開する。現在は「瑞雪楼」を営む傍ら「新潟雪国家養鯉場」も営んでいる。

 

15歳から修業をはじめ、19歳で蕎麦店を開業。

——青柳さんは先日紹介させていただいた「瑞雪楼」のご主人なんですよね。東京のお蕎麦屋さんで修業されたそうですが……。

青柳さん:中学校を卒業してすぐに15歳で上京して、蕎麦屋で4年間修業をしました。その後19歳で独立して、横浜の郊外にあるへんぴな場所で蕎麦屋を開店したんです。

 

——19歳で独立ですか。普通だったらまだ学生や新入社員の年齢ですよね。お店は繁盛したんでしょうか?

青柳さん:へんぴな場所にあったから、最初はほとんどお客様が来なかったんですよ。このままではダメだと考えて、当時はまだ少なかった手打ち蕎麦をやることにしたんです。そしたら「へんぴな場所で手打ち蕎麦を出す店がある」とテレビ番組で取り上げられて、翌日から電話が鳴り止まなくなりました。

 

 

——一躍、人気店になったわけですね。

青柳さん:いろんなお客様が食べに来てくれましたね。いつも運転手付きの外車で食べにくるお客様もいました(笑)。いったいどういう人だろうと思っていたら、大手企業の筆頭株主だったんです。気取らないありのままの接客が気に入られたのか、よく食べにきてくれていました。店内に貼ってあった蕎麦の能書きが私の書いた下手くそな字だったので、その人が上手に書き直して額装までしてくれたんですよ。

 

——へぇ〜、幅広い層のファンがいたわけですね。その後、新潟で「雪国家」を開店するんですよね。

青柳さん:運よくお店を開店するタイミングで新潟県庁が移転してきて、周辺エリアが脚光を浴びはじめたんです。横浜時代に常連だったお客様が、わざわざ足を運んでくれたのは嬉しかったですね。そのなかのひとりが大手運送会社のトップの人で、新潟営業所へ出張で来ていたときに、偶然うちの店を見つけて寄ってくれたんです。お供をしていた新潟営業所の人たちが驚いていましたね(笑)

 

——人気店らしいエピソードですね。先日取材させていただいた「瑞雪楼」は「雪国家」の姉妹店としてオープンされたんですよね。

青柳さん:本当はもっと小さいお店をやろうと考えていたんですけど、土地の都合で大きな店舗になってしまったので、蕎麦屋では難しいと思ったんですよ。そこで赤坂の料亭で修業中だった次男を呼び戻して、蕎麦の他に和食も楽しんでもらえるお店にしたんです。

 

 

ちょっと意外な、鯉を飼いはじめたきっかけ。

——「瑞雪楼」をやりながら養鯉場をはじめたのはどうしてなんですか?

青柳さん:ここはまわりに何もない場所だから、12月から2月の冬場にはお客様が減って売上げが落ちるんですよ。そこで売上げをカバーするために養鯉場をはじめたんです。

 

——えっと、どうして飲食業じゃなくて養鯉業だったんですか?

青柳さん:私が錦鯉を好きだったから(笑)

 

——そうなんですね(笑)。いつ頃から錦鯉に興味を持つようになったんですか?

青柳さん:「雪国家」をやっていた頃です。注文をいただいてから蕎麦を作りはじめるので、混み合っているときなんかはお客様をお待たせすることもあるんですよ。だからお待ちいただく間に退屈させないないよう、長男の飼っていた錦鯉を池に泳がせるようにしたんです。でもあるとき、鯉に詳しいお客様が「そんなにいい鯉じゃないな」って話しているのを聞いて。それで錦鯉の良し悪しについて勉強したことがきっかけになって、本格的に鯉を飼いはじめるようになりました

 

 

——そんないきさつだったとは(笑)。ところで錦鯉って、どんなふうに育てるんですか?

青柳さん:5〜6月に生まれたボウフラみたいな稚魚を泥池に入れて、選別しながら育てるんです。10月に池から上げて、よく洗浄してから水槽に移します。

 

——泥池も近所にあるんですか?

青柳さん:歩いてすぐのところにありますよ。耕作放棄地を利用して農業用水を使いながら鯉を育てています。「瑞雪楼」の別館を作る予定で購入した土地に廃工場があったので、そのなかに水槽を作って錦鯉の飼育をしているんです。

 

病気やトラブルに気をつけながら、錦鯉を飼う難しさ。

——錦鯉を育てる上でご苦労も多いんじゃないですか?

青柳さん:錦鯉を飼うための広い敷地が必要だし、設備にもお金がかかります。何よりも病気にならないよう対策することに気を使っていますね。

 

——どんなふうに対策するんでしょう?

青柳さん:病気に対する知識を身につけて、予防してやることが大切だと思います。生まれて1年目の錦鯉は人間でいうと6歳くらいで、病気やケガも多いんですよ。環境の変化によるストレスで病気になってしまうし、育った環境が違う錦鯉同士を一緒にするだけでもみんな病気になったりするんです。

 

 

——錦鯉の習性も勉強する必要があるんですね。

青柳さん:柏崎の西山にある屋外の池でも錦鯉を飼育しているんですけど、具合の悪くなった鯉は池の端に寄っていく習性があるんですよ。そこをタヌキやハクビシンに襲われてしまうことがあるんです。

 

——やっぱり生き物は管理するのも気を使いますよね。

青柳さん:毎朝水槽をチェックしているんですけど、朝に来てみたら水が少なくなった水槽の底で、錦鯉たちが口をパクパクさせていたんです。調べてみると水中ポンプが何かの拍子に外れていました。幸いみんな無事でしたが、そういう予測できないようなトラブルも起こるんですよね。

 

成長を楽しむことができる、錦鯉の魅力。

——錦鯉の魅力を教えてください。

青柳さん:「泳ぐ宝石」と言われるように、錦鯉は見た目が綺麗ですよね。こんな色や模様が自然に作られることが不思議なくらいです。ダイヤモンドや真珠なんかの宝石は綺麗だし永遠に楽しめるけど、変化を楽しむことはできないんです。その点、錦鯉は成長を楽しむことができます。人間と同じように子どもの頃は可愛くて、成長するにつれて美しくなり、歳を取ると風格が出てくるんですよ。

 

——なるほど。育てる楽しみがあるわけですね。

青柳さん:親のような気持ちで成長を楽しめます。

 

 

——でも庭に池がある家庭って、減ってきているような気がします。

青柳さん:そうなんです。昔は池のある家庭が多かったんだけど、「子どもが落ちると危ないから」とか「錦鯉の価格が高すぎるから」とかの理由で池がなくなっていったんですよ。でも非常用水源としての利用もできるので、家庭に池を作ることをおすすめしたいんです。地震のような災害があって水道が使えなくなっても、池の水を使って生活することができますからね。

 

——池にはそんな利用方法もあるんですね。

青柳さん:錦鯉を泳がせておけば楽しめるし、一石二鳥だと思うんです。うちの錦鯉は安いものは3千円からご用意していますから、気軽に飼いはじめることができますよ。

 

——ただ、池を作るスペースがない家庭もありますよね。

青柳さん:そういう方には水槽でも飼える金魚をおすすめします。錦鯉に比べて成長を楽しむことはできませんが、大きくならない分、飼いやすいですよね。

 

——錦鯉だけじゃなくて金魚も扱っているんですね。それにしても、新潟市内で錦鯉が買えるところがあるのは驚きました。

青柳さん:新潟県内で「錦鯉」というと小千谷を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、この機会に新潟市にも養鯉場があることを知っていただけると嬉しいですね。

 

 

 

新潟雪国家養鯉場

新潟市南区保坂293-1

090-1433-8906

15:00-17:00(要予約)

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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