可能性を大切にする就労支援事業所「合同会社マザーアース」。
その他
2021.04.04
新発田市で障がい福祉サービスを行っている「合同会社マザーアース」は、主に就労支援事業所としての活動をしています。その中のひとつには、企業やブランド、メーカーとのコラボ商品づくりもあります。面白い取り組みをしていると聞き、打合せの現場にお邪魔してきました。

合同会社マザーアース
秦 徹 Hata Toru
新発田市生まれ。建築会社で16年営業を勤めたバリバリの元営業マン。福祉は未経験ながら、企業の立場で考える視点で就労支援を行なっている。趣味はカメラ。
個人の能力や特性を大切に。そこから生まれる可能性も大切に。
――まずは、「合同会社マザーアース」さんの会社の活動について教えてください。
秦さん:就労継続支援A型事業所と就労移行支援事業所の認可を受けて、障がい福祉サービスとして活動しています。就労継続支援A型というのは、障がいを持っているために普通の企業での仕事の継続に課題がある人や、障がいが原因で仕事をしたけど続けられなくてやめてしまった人たちを雇用して、仕事を継続できるよう支援をすることですね。就労移行の方は、障がいを持った方や、からだに若干障がいが残った方、指定難病の人達に一般の企業に就いてもらうために、仕事をするために必要なことを2年間学んでもらう、「働くための専門学校」と思ってもらったら分かりやすいかもですね。
――実際、どのようなことをやられるんですか?
秦さん:メインとしては、アパート・マンションの供用部や倉庫なんかの清掃になりますね。清掃の仕事もいろいろあるんですが、その日のメンタルや体調の変化もあるので、「月1回やればいい」「2週に1回入ればいい」というように、ペースを保ちながら調整しやすい仕事をさせてもらっています。
――利用者さんの状態を考慮しながら進められる、ということですね。
秦さん:あとは、つまみ細工という伝統的な工芸品を作ることですね。新発田で活動しているので、金魚台輪や新発田のアスパラやアヤメをモチーフにしたストラップとかも作って売っています。これ、すべて手作業なんですよ。


――素敵ですね。ちなみに、これは誰が考えているんですか?
秦さん:すべて利用者さん達が自分で考えているんですよ。パッケージやデザインも打合せを重ねたりして、すべて。それから手作業でひとつひとつ作るっていう。
――すごい。作業も丁寧ですけど、発想力もすごいと思います。
秦さん:発想力で言えば、コスプレイヤーさん用のお面も作っていて、これなんですけど。

――おお、これはもう作家さんの域ですよね。
秦さん:そうなんですよね。本当に、世界観を持っているというか、発想が降りてくるんだと思います。こちらからはテーマとかは出さずに、彼らだけで仕上げちゃう。完全なプロダクトアウトですよね。売るのは僕の仕事という感じで。
――これだけのクオリティであれば、欲しがる人もけっこういそうですよね。
秦さん:なので、これを作ったときに、「織華 oribana」というブランドでインスタを立ち上げて、つまみ細工などは「@oribana1」、お面や創作コスプレグッズは「@oribana2」で発信をはじめました。写真は私が撮ってますけど、運営は彼らの表現のなかで好きにやってもらっている感じですね。

――うわ~、クオリティが本当に高いな~。
秦さん:正直、どうやって売ろうとかと思っちゃいますけど(笑)。でも、集中するとすごい集中力が発揮されたり、その発想力とか、他の人たちより彼らの特性としてアーティスト気質が高いんだろうなって感じます。なので、彼らのやってみたい、作りたいというところから、それをうまく製品化して世の中の人達に受け入れられるという成功体験があれば、たとえプロとしてその仕事で生きていけなかったとしても、人生の出発点としては、ありなんじゃないかなって思ってやってます。そして、それを実益化するために私が動く、という感じですね。
――なるほど。これはやり甲斐のあるお仕事ですよね。就労支援と呼ばれる活動へのイメージが少し変わりました。
秦さん:そうですね。普通の受託作業といえば、箱折といわれる、箱をひたすら組み立てるみたいな仕事が多いなかで、ちょっと特殊な動きといえばそうなのかもしれません。でも、その人の特性を見る観点から考えれば、こういうのはとても大切なことだと思っていて。例えば、発達障がいの方の場合は、学力はあるんだけれども、コミニケーション能力や言語理解能力に課題が多かったりするんです。そういったときに個性を発見したり、ジョブマッチングを見るときに、やっぱりいろんな仕事をやってみて個人の特徴や能力をしっかり見てあげることってすごく大事なんですね。

異業種からのスタート、だからこそ見える新しい福祉の視点。
――お話を聞いていると、他の事業所さんとは少し違う視点やチャレンジを感じますが、秦さんの経歴が気になります。
秦さん:そういった意味では、確かにそうかもしれませんね。というのが、私自身がまったくの異業種からの立ち上げでしたので。もともとは、建築会社でバリバリの営業を16年やってきたんです。だから福祉の知識はゼロからでした。でも最終的な目的が企業とのマッチングだと考えたときに、必ず企業側の考え方や理解は必要なことだと思ったんです。
――営業マンならではの視点、考え方が必要だったと。
秦さん:そうですね。だからベースはそこにあるんです。福祉事業所といっても、考え方は普通の企業と一緒で、採算がとれるかどうかなんです。現実的な話で考えれば、箱折を受注したりとか、そういった仕事がメインになるのは仕方のないことなんですけど。それでも、人それぞれの可能性や個性を大切にしたいし、彼らがやりたいことにチャレンジしてもらって、あとは、最悪、自分が100件営業で回れば、何とかなるだろうと(笑)
――心強いですね(笑)。さすがバリバリの営業マン。でも、秦さんがそこまで一生懸命になれる、そのモチベーションは何なんですか?
秦さん:原動力の大きな部分としては、やっぱり「普通に仕事できるのにもったいないな」ってことなんですよね。特性として能力のデコヒコってことはありますけど、発想を少し変えれば、十分にうまく仕事としてまわしていけると思うんですね。でも、福祉の勉強会とかに参加しても、企業側の立場の人間がひとりもいなんですよ。そこでただ「頑張ろうね」って言っても、何も変わらないし、もっと企業を巻込んで行く必要があると感じたんです。それで、「私が16年間営業としてやってきて、その役割を活かせる意味、生きる意味はここにあるんじゃないか」って思って、それで頑張ってみようと。

――企業側の視点で考えられる、就労支援ということなんですね。
秦さん:そうです。だから、この企業側の立場から見ると、「福祉施設ってそんなことできるの?」ってびっくりすることが多いと思うんです。一般的には知的障がいの方が多いイメージがあるかと思うんですけど、今は大学を卒業して社会にあまり適応できなかった方や、普通に仕事はしていたけれどもメンタルに不調が出てしまって仕事が継続できないって方が増えてきているので、身体知的障害がほとんどであった一昔と比べると利用者層が全然変わってきているんですね。ただ、それは適正に問題があったりとか、うまくマッチできなかったとかそういうことなので、そこをこちら側が企業とうまくマッチできるような発信をしてあげる必要があると思っています。

商品を共同で作るブランド側の想い。
――そして、今日は以前Thingsでも取材させていただいた、バックやカバンのメーカーでもある「スパンギャルド」の残間さんとの商品の打合せに同席させていただいているのですが、メーカーさんとしてのお話もお聞かせください。
残間さん:まず秦さんに聞かせてもらって驚いたのが、このお面ですね。これを見たときに、やっぱり突き抜けてるなって思いましたよね。
――クオリティの高さに驚きますよね。
残間さん:そうなんですよね。僕らがメーカーとして、この先、モノの価値として何に目を向けて行こうかって考えたとき、ひとつは雇用の問題を改善することだと考えているんです。今、世界的にはフェアトレードを大切にっていわれていますけど、なかなか実現できない日本企業やブランドもたくさんあります。それなら、もっとそこのところを考えた商品を作りたいと思って、それで声をかけさせてもらったんです。
――ものづくりの雇用問題を以前から考えていらしたんですね。
残間さん:普通、こういうのって、学生さんにやらせたりするんですよ、コンペとかやって、タダでとか。そういう賃金の問題って不透明で、なんだか隠されていたりして、いいイメージってないと思うんですよね。そういう閉塞的な感じじゃなくって、もっとそのやり取りや仕組みをオープンにした上で、価値のあるモノが生まれて、そしてちゃんと雇用が整うっていう、そういう仕組みが作りたくて。そう考えたときにA型事業所さんだったんですね。


――どのような商品を考えられているんですか?
残間さん:これは、うちで既に商品化しているパッチワークの商品なんですけど。これを社内では本格的に売り出していこうと考えたときに、そういうコンセプトを取り入れて、背景がしっかりした価値のある商品にしようと考えたんです。最初はこのパッチワーク部分の生地を切ってもらうってところから始めてもらって、慣れてきたら段階的に縫製、デザインのところまでやってもらえたら面白いんじゃないかなって。
――それは面白そうですね。
残間さん:その生産の流れをオープンにして、お客さんに知ってもらえれば、社会的な価値の高い仕組みを作れるんじゃないかって思うんですよ。それにパッチワークの柄合わせは自由にやってもらっていいと思っているので、作っている人もデザインの楽しみを感じてもらえれば嬉しいな、と。それがバック屋として自分たちにできることだと思ったんですね。
――秦さん、こういう取組みを考えてくれる企業さんってけっこういらっしゃるんですか?
秦さん:なかなかいないですよね(笑)。でも、本当にこうやって、一緒にやることでの付加価値としてとらえていただけることは、ありがたいことです。
残間さん:でも、これからは変わってくると思うんですよ。今、SDGsが掲げられているなかで、企業もそういうところに目を向けていかなければいけないと思いますし。それでもっと世の中にやさしい環境を作っていければいいんじゃないかな、って思うんですよね。
――秦さん、残間さん、貴重なお話ありがとうございました。最後になりますが、今後の目標はありますか?
秦さん:まだまだ福祉側としての発信というところが足りていないと思っていますので。こうやって、企業さんから相談をもらえることは素直に嬉しいですし、先ほどお話したように、利用者さんのなかでもできる仕事の幅っていうのが広がってきていることを知っていただきたいですね。同時に、人材不足といわれている世の中での、そのギャップを埋められればと思いますし。単純に企業さんから「こんなことできる?」って相談をもらえれば、それは嬉しいことですよね。
合同会社マザーアース
新潟県新発田市西園町一丁目8-6
0254-24-7171
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