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県北の老舗酒屋「やまさ」唎酒師が選ぶ!新潟地酒のおススメ新銘柄。

季節は冬真っ只中。雪や寒さはもうこれ以上ご勘弁願いたいところですが、酒どころ新潟では各蔵元から今期の新酒が続々とリリースされ、日本酒の特に美味しい時期でもあります。改めて考えてみると、温めても美味しいお酒というのは他になかなかなく、寒い冬に飲むお酒としてはうってつけともいえます。そこで今回は、県北・関川村にある昭和元年創業の酒販店「酒屋やまさ」の販売責任者で唎酒師(ききさけし)でもある佐藤さんに、県内の蔵元からここ数年内に発売された新銘柄を中心に、「推し」の日本酒を紹介してもらいました。

 

 

酒屋やまさ

佐藤 真智子 Machiko Sato

1980年生まれ。「酒屋やまさ」販売責任者で、唎酒師(日本酒サービス研究会・酒匠研究連合会認定)、新潟清酒達人検定・金の達人。大学卒業後、都内でアパレルブランドの店舗運営などに携わり、退職後は都内で友人のビジネスを手伝いながら、小売業のほか運送業や卸売業など多角的に手掛ける家業にも従事。近年は「酒屋やまさ」の運営をメインに取り組んでいる。アパレル販売員時代、個人売上成績は社内で常にトップだった。国内外への旅行が趣味だが、コロナで休止中。

 

自分好みのお酒を選ぶコツ。「ジャケ買い」も意外に……?

­――本日はよろしくお願いします。ひと口に新潟の地酒といっても、酒どころだけにやっぱりたくさん種類があって迷いますね……。やまささんには日本酒だけで何種類くらいあるんですか?

佐藤さん:うちで取り扱っている日本酒は当村上・岩船地域の2大蔵元、「〆張鶴」の宮尾酒造さんと「大洋盛」の大洋酒造さんをはじめ県内40蔵、計400種類くらいですかね。定番の1本から注目の新銘柄まで、幅広く取り揃えています。

 

――よく「自分好みの1本を」なんて言いますが、これだけあるとさすがに迷っちゃう方も多いと思うんですが、選び方のコツのようなものってあるんでしょうか?

佐藤さん:そうですね……ほとんどの製品で公開されている「日本酒度」や「酸度」は大きな基準になると思います。「日本酒度」は辛口・甘口の度合いを示すもので、プラスの数字が大きければ大きいほど辛口で、逆にマイナスになればなるほど甘口になります。「酸度」は酸味や旨味を示す数値で、1.5あたりを境に数値が高いほど濃厚、低いほど淡麗ということになります。平たく言えば「後味」「キレ」を表す、ということになるでしょうか。「淡麗辛口」と言われる新潟のお酒は、したがって日本酒度は高め、酸度は低めのお酒ということになります。例えば私個人でいえば、酸味が強く後を引くお酒が少し苦手なので、自分で飲む分には酸度の低いお酒を選んでいます。もちろんこの2つだけがすべてではありませんが、この2つを手がかりに、自分の好みに合うものを選んでもらえればと思います。

 

――「日本酒度」と「酸度」ですか……今後はラベルを注意して見てみます。

佐藤さん:でも個人的には、いわゆる「ジャケ買い」でもまったく問題ないとも思っているんですけどね。

 

――え、そうなんですか? 唎酒師なのに意外な。

佐藤さん:(笑)。でもあながち冗談でもなくて、外観から受けるイメージと中身の味ってやっぱり共通するものがあると思います。作り手がそのお酒に込めた思いって、お酒そのものにはもちろんのこと、潜在的にデザインの方にも反映されると思うんですよね。極端な例では、昔ながらの製法を大切にしたお酒はあまり突飛なデザインにはしないだろうし、華やかなお酒であればラベルも自然と華やかなイメージのものになるだろうし……。

 

――なるほど。ではジャケから受けるインスピレーションを大切にしつつ、数字も見つつ、ということですね。

 

白ワイン様の酸味から燗酒用大吟醸まで。新銘柄4選。

――ではいよいよ本題に。近年リリースされた新潟の地酒で、ぜひおススメを教えてください!

佐藤さん:承りました。新銘柄も良いお酒がたくさんありすぎて迷いに迷いますが、個人的に特におススメしたいものを選ばせてもらいますね。

 

①「N-888 純米酒」新潟銘醸(小千谷市)

――あまり見たことのないジャケ。ワインみたいなデザインですね。

佐藤さん:そうですね。デザインだけでなく味もワインのような、フルーツ系の香りや味を豊かに楽しめる1本です。とはいえ、日本酒以外のなにものでもない美味しさがしっかり宿っています。なんでも、現代の食に合った日本酒をつくろうと1200回も試醸し、そのうち888回目のものが理想のお酒に近く、この名前がついたそうです。私は先ほど述べた通り酸味が少し苦手で、このお酒も酸味がある方なのですが、その酸味さえも豊潤で、このお酒に限っていえばその酸味をむしろ楽しんじゃってます。

 

――どんな料理と相性が良さそうですか?

佐藤さん:このお酒に限らず日本酒全体に言えることなのですが、日本酒って他のお酒に比べてキャパシティが広いというか、どんな味も受け止めてくれる懐の深いお酒だと思うんですよ。そもそも何にでも合うお米が原料ですしね。似たもの同士の組み合わせで相乗効果を発揮することもできるし、料理に足りないものを補完することもできるし、口の中を一旦クリアにすることもできるし。そのことを踏まえた上であえて選ぶとすれば、洋食が良いんじゃないかと思います。酒器もワイングラスで、白ワインのように飲んでいただくのがおススメかもしれませんね。

 

②「菱湖」(りょうこ)峰乃白梅酒造(新潟市西蒲区)

――これもオシャレなデザイン! たくさんラインナップがありますね。

佐藤さん:この銘柄、私は本当にファンで、どれもとても美味しいです! 蔵元は越乃寒梅、雪中梅とともに「越乃三梅」とも称される峰乃白梅の峰乃白梅酒造さんで、「ザ・新潟」といえる蔵元さんのひとつですが、実はこちらの銘柄については、他県の良さも導入されているんです。

 

――と­­いうと?

佐藤さん:福島の地酒で全国的にも人気の高い「寫樂」を醸していた杜氏さんが杜氏を務め、酒米には山形県産の山酒4号や出羽燦々などが種類によって使い分けられているんです。中には日本酒度が‐10を下回るようなすごく甘口のものもあるのですが、後味は新潟らしく総じてスッキリ淡麗で、甘口の日本酒にありがちな「口に残る感じ」がしません。なので種類によっては甘味とも相性がよく、お酒自体をデザートとして楽しんでもよいのではないでしょうか。

 

③「麒麟山 火鉢」麒麟山酒造(阿賀町)

――火鉢?……もしかして燗酒にすると美味しいとか?

佐藤さん:当たりです(笑)。麒麟山も以前からすごく好きな銘柄の一つなのですが、これはなんと燗酒として愉しむために造られた大吟醸酒なんです。吟醸酒や大吟醸酒って普通は燗にしないんですよ、吟醸系の良さといえる清廉さやキレの良さが失われてしまうので。でもこのお酒は、燗にすることでその上品な味わいが際立ち、豊かな余韻と程よい抜け感を愉しむことができます。濃い目の味付けのお料理もしっかりと受け止めてくれる包容力がありますね。

 

――なるほど……合わせる料理としては、やっぱり鍋料理でしょうか。

佐藤さん:まさにうってつけですね。温かさが沁み渡り、身も心もホカホカになります。今晩しようかな(笑)。

 

④「3SAKE村上」宮尾酒造・大洋酒造、村上地酒プロジェクト実行委員会(村上市、関川村)

――2本セット! 企画商品でしょうか。

佐藤さん:はい、今般の長引くコロナ禍によるダメージからの回復を期した地酒消費喚起・地域経済再興プロジェクトの一環で、県北の2大酒蔵が初めてコラボした商品になります。私も一応、実行委員会の副委員長なんです。宮尾さんも大洋さんもこの企画のためにかなり高品質なお酒を出してくれて、価格の面でもこれで税込5,500円は正直、かなりお得だと思います。味の面でも、県北らしいキリリとした美味しさで、それぞれの良さが楽しめるバランスの良い組み合わせになっています。いうなれば「ごちそう酒」でしょうか。1200セット限定で、残念ながらもうほとんど在庫がないんですが……。

 

――飲み比べも面白そうですね。これはやはり地元の海の幸や山の幸と?

佐藤さん:そうですね。こちらも辛いものから甘いものまで、濃い目のものから淡白なものまで、あらゆる料理を受け止めてくれると思います。個人的にはこのお正月に、おせちとともにいただいたのですが、どの料理にも合ってくれましたね。

 

日本酒でコロナ予防? 味や香りだけでなく健康についても。

――ところで、佐藤さんは以前から日本酒がお好きだったんですか?

佐藤さん:いえ、実はまったく(苦笑)。お酒は好きでしたが、都内でアパレル店に勤めていた若いときは飲み会といえばもっぱらビールやワインで、日本酒は視野の外でした。メニューにあっても完全にスルーしてましたね。

 

――それが唎酒師や金の達人になるまで究めるようになったのは?

佐藤さん:家の仕事を手伝うようになって、元々アパレルが好きだったこともあり一時は古着の着物の販売にかなり力を入れていたんですけど、着物を勉強したり販売したりしているうちに、同じ日本の伝統文化の日本酒にも興味が沸いてきたんです。で、そういえばうち酒屋だったな、と(笑)。仕事にもなるので一から勉強すると、知れば知るほどどんどん面白くなっていって、気がつけばそういう資格を取得するまでになっていた、という感じですね。

 

――そうなんですね。

佐藤さん:最近の成果でいうと、日本酒ってともすれば「身体に悪い」っていうイメージも持たれがちですが、それどころか目下健康の最大の敵になっている新型コロナの感染を予防する効果もあることが分かってきているんですよ。予防効果があるのは「5Ala-アミノレブリン酸」という成分で、発酵食品に含まれているアミノ酸なのですが、並行複醗酵を経て造られる日本酒には特に多く含まれているそうなんです。なので新潟のコロナ感染者が他県に比べて少ないのは日本酒をよく飲んでいるからなんじゃないか、とも、ちょっと思ったり。いずれにせよ、健康志向が高まっている昨今、味や香りだけでなくそういった健康面のことも日本酒の魅力として伝えていければと思っていますね。

 

――日本酒を飲む口実がまたひとつ増えました(笑)。本日はいろいろとありがとうございました!

 

 

■今回紹介したお酒

N-888 純米酒 プレミアム生原酒 720ml 1,760yen

菱湖 各種 1,562yen~

麒麟山 火鉢 720ml 2,090yen

3SAKE村上 720ml×2 5,500yen

 

 

酒屋やまさ

〒959-3241 関川村大島1071

TEL0254-64-1328

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