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「ありがとう」があふれる「共生提案型保護猫カフェ らっくら家」。

北三条駅近くにある「共生提案型保護猫カフェ らっくら家(らっくらや)」。飼い主のいない猫と里親をつなぐ場所として2021年にオープンしました。店内には、外で暮らしていたところを保護された12匹の猫が暮らしています。今回は店主の相田さんに、保護猫カフェをはじめたきっかけや活動を通じて感じた思いなど、いろいろとお話を聞いてきました。

 

共生提案型保護猫カフェ らっくら家

相田 真祐 Aida Shinsuke

1980年三条市生まれ。高校を卒業後いくつかの職を経験し、三条市のメーカーに17年勤務。2021年11月に「らっくら家」をオープン。

 

猫カフェとはちょっと違う、保護猫と里親さんをつなぐ場所。

——まずは、「らっくら家」さんがどんな場所なのか教えてください。

相田さん:飼い主のいない猫とその猫の里親さんを見つけてあげるための場所です。ここに今いる猫は12匹、私の自宅や預かりボランティアをしてくださっている方の元にいる猫も合わせると全部で20匹ほどをお世話しています。

 

——保護猫と里親さんをつなぐ場所なんですね。

相田さん:きれいごとに聞こえるかもしれませんが、猫カフェをしたかったのではなくて、外で暮らしている猫を助けるためのひとつの手段として「らっくら家」をはじめました。外にいる猫は暑さや寒さ、雨風に耐えなければならない辛い環境にいます。外敵も多いし、ロードキルと呼ばれる交通事故に巻き込まれる危険もあって、長く生きることができません。そういった猫を少しでも助けてあげたいという思いではじめた場所です。

 

——お店には、里親になりたいと思っている方がいらっしゃるのでしょうか?

相田さん:里親になろうと猫を探しに来る方もいますけど、猫カフェに遊びに来る感覚でいらっしゃる方も多いです。警戒心の強い猫たちは、お客さまと触れ合いだんだんと人に馴れていきます。そうすると里親さんが迎え入れやすくなるので、「猫に癒されたい」という気持ちで来店くださる方も大歓迎です。

 

——最初から「猫を飼う」前提でなくてもいいわけですね。

相田さん:もちろんです。こちらに通っているうちに「里親になりたいです」と申し出てくれる方もいらっしゃいますしね。猫たちが人と接することが大切だと思っています。

 

 

——保護猫ボランティアの活動は、テレビでもよく目にします。実際は保護された猫はどんなふうに人への警戒心をなくしていくんでしょう?

相田さん:大人の猫は警戒心が強いので、人が近づくと「シャー」と叫んだり引っ掻いたりします。先日ボランティアさんに預かってもらった猫は、エアコンの上に籠城してしまってしばらく下に降りてこなかったそうです。預かりボランティアさんが根気強く声をかけて、おやつを食べるくらいにはなったそうですが、それでも人の気配があるとご飯を食べにもトイレにも来ない。それが警戒心の弱い子猫を同じ部屋に入れてみたら、子猫を真似るように下に降りて来るようになって、抱っこもできるようになったと。もしかしたら仲間が欲しかったのかもしれませんね。

 

これまで30匹の保護猫が卒業。幸せになってもらうために、譲渡の際には厳しく審査。

——今まで里親さんへ渡った猫はどれくらいいますか?

相田さん:30匹くらいですね。三条市だけでなく、長岡市、新潟市で暮らしている猫もたくさんいますよ。

 

——30匹ですか! 想像していたよりも多いです。

相田さん:ずっとお世話をしているので、私たちにとっては子どもみたいな存在です。なので里親さんに譲渡するときは「子どもを養子に出す」気持ちでいます。里親希望者さんには譲渡前に面談をさせてもらいますし、条件についてもご説明します。虐待目的や軽い気持ちで猫が欲しいという方が少なからずいるので、審査はあえて厳しめに。そして譲渡の際には費用をいただきます。

 

——きちんと精査されるわけですね。

相田さん:ここで暮らす猫が卒業するとまた別の猫を迎えられるので、譲渡時のルールを厳しくすることは理想と矛盾しているとも思います。でもどなたにでも譲渡できるわけじゃないですから。

 

1匹でも多くの命を助けたい。保護猫ボランティアで経験した悔しさが「らっくら家」のはじまり。

——ところで、相田さんが「らっくら家」の活動をはじめようと思ったのはどうして?

相田さん:4年ほど前に自宅で保護猫を飼いはじめました。するといつの間にか知らない猫が何匹も家に寄り付くようになったんです。野良猫って、猫がいる家が分かるんですね。近隣の方々も猫の多さに困っていたようなので、愛護団体さんに相談したんです。愛護団体さんはすべての猫に適切に手術を施し、子猫を引き取ってくれました。でも、成猫は地域猫として面倒を見ることになって。

 

 

——地域猫という言葉も最近聞くようになりましたね。そういった経緯なのですね。

相田さん:ところが、あるとき1匹の猫がガレージで亡くなっていました。その頃、自宅で2匹の猫の預かりボランティアをしていて、我が家ではそれ以上面倒を見られなくて。預かっている猫の里親が見つかれば、その猫を自宅に迎えて世話をするつもりでいたんです。

 

——そうでしたか……。

相田さん:「うちにもっと猫を預かれる余裕があれば、あの猫を助けられたよね」って、誰でも思うんでしょうけど、そう思って。それで、1匹でも多くの命を救うために「らっくら家」のような施設を作ろうと準備をはじめました。

 

 

——同じように思っても、誰もが相田さんのように行動できるわけではないですよね。

相田さん:猫に引っ張られて何かをはじめる運命だったのかな(笑)。どんな仕事も必ず何かの役には立っているのだから、意味があると思っています。でも「らっくら家」は「ありがとう」があふれるいい仕事だなってつくづく思うんです。里親さんには譲渡費用をいただくので、売っているわけではないけれど費用が発生します。普通の商売だったら一方通行の流れになってもいいところ、里親さんからは「いいご縁をありがとうございます」と言ってもらえる。そして保護主さんからも「つないでくれてありがとう」という言葉をいただく。保護主さん、里親さん同士も「里親になってくれてありがとう」「保護してくれてありがとう」って「ありがとう」を伝え合う。いろいろな人に「ありがとう」という気持ちが生まれるってすごいことだなって思います。

 

——これからも「ありがとう」をつないでくださいね。さて、最後にこれからチャレンジしたいことを教えてください。

相田さん:お店を構えて1年ちょっと経ち、だんだんと認知されてきたのか「猫を保護したいんだけどどうしたらいい?」という相談が増えてきました。保護はできてもアパート暮らしだとか、すでに猫を飼っているとかで預かれない場合や、他にもいろいろなケースがあるんですが、とにかく猫を助けたいと思っている方がたくさんいます。今はうちで猫を預かれるキャパシティがないので、お話だけ聞かせてもらうことになっても「スッキリした」という声が多いんです。きっと誰かに話すと楽になるんですね。それで、これからは猫を保護したいという方たちのコミュニティを作りたいと考えています。その中で情報交換をしてもらって「保護したいけどする場所がない」「保護はできるけど、周りに猫がいない」という方をマッチングしたり、預かり先を見つけたりする試みをしたいと考えています。悶々としている猫好きの皆さんが悩みを吐き出し、解決策を見つける力になりたいです。

 

 

 

共生提案型保護猫カフェ らっくら家

三条市居島4-19

0256-47-0972

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