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南魚沼のお米農家がはじめたお菓子屋さん「おこめのケーキqute」。

昨年10月、南魚沼市にオープンした小さなお菓子屋さん「おこめのケーキqute(クテ)」。シフォンケーキをメインに、有機JAS認証米の米粉と無添加の食材を使った、やさしい美味しさのお菓子が人気のお店です。こちらをはじめたのが、お米のコンテストで日本一に輝いた経歴を持つお米農家の「こまがた農園」。今回は代表の駒形宏伸さんと「qute」を担当している奥さんの美穂さんにお話を聞いてきました。

 

 

こまがた農園

駒形 宏伸 Hironobu Komagata

1979年南魚沼市生まれ。「株式会社こまがた農園」代表取締役。20年前に就農し、10代目として家業に入る。サスティナブルな方法を取り入れた農業に取り組む。お米のコンテストで数々の受賞経験を持つ他、DJの世界大会では2度の優勝経験がある。

 

おこめのケーキqute

駒形 美穂 Miho Komagata

1989年南魚沼市生まれ。結婚を機に農業に従事。昨年10月「おこめのケーキqute」をオープンし、メニュー開発から販売までこなす。

 

「こまがた農園」のサスティナブルな循環型の農業。

――最初に「こまがた農園」さんのことを教えてください。何年くらい続いている農家さんなんですか?

宏伸さん:240年経ちます。僕は10代目です。

 

――昔からずっとお米づくりを?

宏伸さん:昔はタバコとかカイコ、野沢菜とかを作っていたんですけど、僕が生まれた年ぐらいに「八色スイカ」というブランドができて、米とスイカをメインに作るようになりました。

 

――「こまがた農園」さんでは環境に優しい方法で農業をされているそうですね。

宏伸さん:自分の代になってから、サスティナブル農業をしたいっていう思いがありました。例えば、精米するときに出る米ぬかを国産の有機物と混ぜて、1年かけて発酵させることで肥料ができるんです。その肥料を田んぼに入れて、採れたお米を米粉にしたり、肥料にしたり。とにかく循環できる農業を目指しています。

 

――できるだけ無駄を出さずに米づくりをされているわけですね。

宏伸さん:建物もそうなんですよ。自宅もケーキ屋も米の貯蔵庫も、地場産の越後杉を外壁に使っています。内装も全部自然素材でできているんです。近所の先輩で、サスティナブルな建築を作っている「米山工務店」さんに手掛けてもらっています。

 

 

――どうしてそこまでサスティナブルであることにこだわるようになったんですか?

宏伸さん:どうせ農業をやるならそこまでやりたいなと思って。最初は農業にぜんぜん興味がなかったんですよ。昔ちょっと遊んでいて(笑)

 

――農業より他のことに興味が?

宏伸さん:ずっとDJをやっていて、音楽が好きだったから頭の中は音楽が9、農業が1だったんですよ。それからだんだん農業にシフトしていったときに、お米界にコンテストがあることを知ったんです。「南魚沼産なんて誰が出しても金賞だろう」と軽い気持ちで出してみたら、箸にも棒にもかからないで。「なんだこれ」と思って、そこで一気に燃えました(笑)

 

――簡単じゃなかったからこそやる気になったと。今ではお米のいろんなコンテストで賞を取られていますし、農薬をほとんど使わずにお米を作られているそうですね。

宏伸さん:全量じゃないんですけど、有機JAS認証米と農薬8割減、農薬5割減の米をメインで作っています。めちゃくちゃ手間はかかるんですけど、そのぶん安心安全ですね。

 

――その安心安全な米粉を使ったお菓子屋さんをオープンされましたよね。米粉を使った商品の企画は以前から考えていたんでしょうか?

宏伸さん:精米するときに砕けたお米が出てくるんですけど、ロスになってしまうので、それをなくすために何かいい方法がないかなと思っていました。そこから「製粉して米粉にしたらどうだろう」と考えて、「その米粉を使って何かしたいよね」って妻とふたりで話をしていたんです。

 

有機JAS認証米の米粉と無添加の材料で作る、もっちりしっとりのシフォンケーキ。

――シフォンケーキをメインにされたのは、いろんな米粉のお菓子を作ってみて、シフォンケーキがいちばんしっくりきたから?

宏伸さん:そうですね。妻の実家がスキー場のペンションをやっていて昔から食に携わっていたので、お菓子作りも上手で。最初は大判焼きをやろうとしたり、いろいろ話をしたりしていたんですけど、本人がいまいち乗り気じゃなくて(笑)

 

――あらら(笑)

宏伸さん:最終的に、何気なくシフォンケーキを作って食べてみたら「あ、これうまいね」って。そこからは早かったよね。どうせやるなら有機米粉で、材料も添加物なしでやろうって、めちゃくちゃ試行錯誤しました。

 

美穂さん:私がけっこう飽きちゃう方なので、飽きないうちにはじめちゃおうって(笑)。シフォンケーキ専門店がこの辺りにあんまりないっていうのも理由になったかな。

 

――店舗がコンパクトでかわいらしいですね。

宏伸さん:前はかあちゃんの野菜ストック場になっていたんです(笑)。それを改築して店にしました。本当に売るためのスペースしかないんですよ。妻がひとりでやるので大きな面積じゃできないから、自宅を加工場にして、作ったケーキを店で販売するっていうところからはじめることにしたんです。

 

 

――シフォンケーキのことも教えてください。米粉を使うと、ケーキにどんな違いが現れるんでしょうか?

美穂さん:もっちりとしっとり。小麦にはない食感ですよね。グルテンがないから、喉に詰まる感じもしないんです。

 

――有機米粉を使ったシフォンケーキって、他のお店にはなかなか真似できないですよね。

宏伸さん:有機米粉を仕入れるとなるとすごくコストが高いので、そこは特権ですかね。それでいてかなり安い価格設定なので、この値段で販売できるのはうちぐらいかなと思っています。

 

 

――シフォンケーキの材料も、地元で採れたものを使っているんでしょうか。

美穂さん:そうですね。お義母さんは畑が大好きで、野菜だったらかぼちゃとかさつまいも。栗も自分で採ったものを使っています。これからの季節はイチゴとか、スイカとメロンも作っているので、それも使っていこうかなって。

 

――へ〜、スイカのシフォンケーキですか?

美穂さん:シフォンケーキではなくて、ジェラートをやろうと思っています。あとはカットスイカにして売りたいなって考えています。

 

宏伸さん:「金色羅皇」っていう黄色スイカがあって、めちゃくちゃ甘いんですよ。その糖度を競うコンテストがあるんですけど、そこでうちが日本一になったんです。スイカって12度あれば甘いっていわれているんですけど、20.6度っていう記録が出て。

 

――とんでもなく甘いじゃないですか!

宏伸さん:その中で「ハネダシ」といって、中が空洞で商品にならないようなスイカを、今までは人にあげたり低価格で出したりしていたんです。でもちょっともったいないので、そういうスイカをブロック状にカットして、カップに入れて販売しようと思っています。

 

美穂さん:見た目はちょっと悪いけど、本当はそういうスイカの方が甘くて美味しいんですよ。

 

 

――お店をはじめられてからの反響はいかがですか?

美穂さん:最初は全部ひとりでやろうと思っていたんですけど、思っていたよりもお客さんが来てくれて。新潟市とか、遠方から来てくれる人もいるんです。作る量も最初より増やして、人にも手伝ってもらっています。

 

宏伸さん:週2日しか営業していないんですけど、毎回並んでくださるのでありがたいですね。分かりにくい場所にあるので、何度も通り過ぎちゃう人もいますけど(笑)

 

――正直、私も迷いました(笑)。今後、「こういうこともやってみたいな」と思い描いていることってありますか?

美穂さん:先の話ですけど、カフェとかね。飲み物を提供できるようになったらいいですね。

 

宏伸さん:欲を言えば「こまがた農園ワールド」じゃないですけど(笑)、木造建築を建てて、自然の中で食せられるようなスペースを作れたらいいなって思っています。

 

 

 

おこめのケーキqute

南魚沼市大桑原771-1

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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