焼いたり、煮たり、揚げたり、いろんな食べ方で楽しめる「きのこ」。スーパーの野菜売り場にずらりと並んでいるけれど、実は野菜の仲間じゃないって知っていましたか? 今回はきのこ栽培に欠かせない「菌床」を作っている「楽々(らら)」の駒場さんに、地球に優しい循環型きのこ農業について聞いてきました。
楽々
駒場 裕美 Hiromi Komaba
1969年新潟市生まれ。新潟中央高校卒業後、プロゴルファーを目指して岐阜にある日本女子ゴルフ学校へ。その後、ゴルフ場や住宅関連企業、コンサルタント会社等で働き、2019年に「株式会社楽々」を設立。
――今日はよろしくお願いします。「楽々」って、きのこを栽培している農家さんなんですか?
駒場さん:きのこの栽培もちょっとしていますけど、正確にはきのこの菌床と栽培技術の販売をしている農業企業ですね。
――……きのこの菌床?
駒場さん:菌床というのは、きのこの素というか、きのこが生えてくるベースのことです。オガクズに米糠とかの栄養素を混ぜて固めたものが一般的で、そこに種菌を接種して培養が終わると、きのこがニョキニョキ生えてくるんですよ。
――きのこが生えてくる土みたいなイメージですね?
駒場さん:ですね。菌床を作る過程で、灯油を燃やして高圧で滅菌する作業があるんですけど、「楽々」では発酵の力を使って菌床を作る技術を開発したので、電気と水しか使わない、地球に優しい農業ができるんです。
――へ〜、今の時代にピッタリですね。灯油価格も上がっていますし。ちなみに、どんな種類のきのこが育つ菌床を取り扱っているんですか?
駒場さん:ヒラタケでしょ、タモギタケでしょ……エノキ、ナメコとか、いろいろあります(笑)。シイタケ、ブナシメジ、マイタケなどは作れますが、売ってはいません。
――菌床作りについていろいろ詳しく聞いていきたいんですけど……ちょっとその前に、基本的なことから教えてください。きのこって、野菜の仲間ですか?
駒場さん:野菜売り場で並んでいるから、きのこは野菜と思われがちなんですけど、「きのこ」というのは俗称でしかないんですよ。私たちが「きのこ」と呼んでいるのは、正確には子実体という菌糸(きんし)が胞子を作り出すための器官になります。だから、きのこは野菜でも植物でもなくて、菌の仲間なんですよね。野菜は光合成をするけれど、きのこはしないんです。
――今度は「楽々」について詳しく聞いていきたいと思います。大きな特徴はどんなところですか?
駒場さん:先ほども説明した通り、「楽々」は菌床を作る過程が他社とは違います。灯油を燃やして滅菌する作業をしないので、二酸化炭素の発生を抑えられて、原材料にはビートパルプ(てんさい糖の搾りかす)やコットンハル(綿実油の搾りかす)のみを使用しており、栄養剤や添加物、農薬などは一切使用していません。だから、そこから流れ出る水には窒素などの成分がほとんど含まれていないんです。とっても環境に良くて地球に優しいんですよ。
――ふむふむ。
駒場さん:あと、「楽々」の菌床は発酵の力が凄くて。きのこの収穫が終わったらそのまま集めて放置しておくと、微生物がたくさん活動するので発熱して有機堆肥になるんですよ。ミミズがいっぱい住んでいたり、カブトムシが卵を産みにきたり、とっても自然環境に近い堆肥になっています。
――なるほど。有機堆肥ってことは、田んぼや畑にも使えるってことですよね?
駒場さん:そうそう。きのこを育てて、収穫が終わったら菌床を放置して、しばらくしたら有機堆肥になるから、それで野菜や米を育てるという循環型の農業ができます。ちなみに堆肥が欲しくて「楽々」の菌床できのこを育てている農家さんもいるんですよ(笑)
――消費者として気になるのが、きのこの味なんですけど……。環境に優しかったり、身体に良かったりすると聞くと、あんまりうま味がないイメージがあって。
駒場さん:そんなイメージもありますよね。でもご安心ください。「楽々」の菌床で育ったきのこは、うま味成分のひとつであるグアニル酸だけでなく、様々なアミノ酸も多く含んでいるから、とっても味が濃くなっています。しかも食感がしっかりとしているから、食べ応えもあって好評です。
――そうなんですね。「楽々」の菌床を生かして、これからチャレンジしてみたいことってありますか?
駒場さん:きのこを育てて、有機堆肥を作って、野菜や米を育てる。この循環型農業を手軽に体感できる農業セットみたいなものを開発して、子どもたちにこれからの農業を伝えていきたいですね。彼らには未来の地球を背負っていってもらわないとですからね(笑)
株式会社楽々
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