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ヨガとご飯で心を満たす、岩室温泉の「cafe & yoga Ananda」。

岩室温泉街の裏手の「岩室神社」。そのお隣に、「cafe & yoga Ananda」というヨガスタジオとカフェが一緒になったお店があります。ヨガの先生の阿部さんが生徒さんに手料理を振る舞ったことがきっかけで、ランチやスイーツを提供するカフェもはじめることにしたんだとか。今回は阿部さんが「cafe & yoga Ananda(アナンダ)」をオープンするまでの経緯や、お店を続けるなかで感じた思いについて聞いてきました。

 

 

cafe & yoga Ananda

阿部 宏美 Hiromi Abe

群馬県出身。結婚を機に新潟へ移住。約14年前にヨガと出会い、約2年後に介護士として働く傍らヨガ講師としてのキャリアをスタート。県内のヨガサークルや介護施設、産婦人科や子育て支援施設などでヨガを教える。2019年に岩室温泉街で「cafe & yoga Ananda」をオープン。最近は「SixTONES」にハマっている。

 

ヨガ講師として活躍していた女性が、岩室温泉でカフェとヨガスタジオをはじめるまで。

——阿部さんはいつからヨガをはじめられたんでしょう?

阿部さん:14年くらい前ですかね。結婚して群馬から新潟に来たばかりで時間もあったので、気まぐれでスポーツクラブに行き出したんですけど、いろんなスポーツをやったなかでヨガがいちばんきつかったんです(笑)。「二度とやりたくない」くらいに思ったんですけど、なぜかすごく気になって。それでもう一度行ってみたら、クラスを担当している先生が素敵な方で、どっぷりハマることになってしまいました。

 

——ヨガのどんなところに魅力を感じたんでしょうか。

阿部さん:今思うと、心が静まっていくことで身体に与えるいい影響に気持ちよさを感じていたんだろうなって思います。当時は介護士の仕事をしていて、忙しく考えちゃうことが多かったんですけど、ヨガをはじめてからは心が静まったことで、仕事もしやすくなったんですよね。それで「ヨガってすごいな」と。

 

——それからヨガ講師になられたのは、「ヨガを教える側になりたい」と思ったから?

阿部さん:当時教わっていたヨガの先生が大好きだったので、私は講師になろうとも思っていなかったんですけど、好きだった先生が違う仕事をはじめるのでクラスを抜けることになってしまって。それで「どうしよう」と思ってレッスンが終わった後に初めて先生に声をかけて、自分が先生のヨガにどれだけ助けられたかをお話しました。そしたら先生から「自分が持っているクラスを教えてみないか」とお誘いいただいたんです。とても驚いたんですけど、こっそりヨガの勉強もしていたのでお話を受けることにしました。

 

 

——突然教える側になって、急成長しなければいけない環境になったわけですね。

阿部さん:その後しばらくはヨガサークルとか、いろいろな場所に出向いてヨガを教えていたんですけど、出向いた先で部屋の明るさとか温度とか、目に入るものとか、自分のコントロールのきかないものが気になり出したんです。それでもなんとか環境に合わせてやっていたんですけど、他のこともいろいろうまくいかなかった時期だったので、思い詰めてしまって……。

 

——あらら……。

阿部さん:そんなときに、この岩室温泉街の旅館でヨガをやらせていただいたんです。この街の雰囲気が好きだなと思って「もし自分のスタジオをはじめるなら、こういう静かな場所で、古い建物でやりたいな」ってイメージしながら散歩していたら、神社が目に入って。その隣にあったこの建物が、私が思い描いていた通りの古さと広さだったんです。運命の出会いを感じちゃいましたね(笑)。その日は帰ったんですけど、次の日もどうしても気になってもう一度来てみたら、昨日はなかった貼り紙がしてあって。「貸店舗」って書いてあったんですよ。それですぐに中を見せてもらったら「どうしてもここがいい」という気持ちになってしまって、すぐに契約しました。お店をはじめたのはちょうど4年前ですね。

 

美味しくご飯を食べられる環境を整えて、来てくれる人の心を満たす。

——ヨガスタジオと一緒にカフェもはじめられたのはどうしてですか?

阿部さん:スタジオをはじめる1年くらい前に、子連れのお母さんに向けたヨガのサークルをやっていたんです。だけど来てくれるお母さんたちって、来て早々疲れているんですよ。「せっかく来たから」って無理にヨガをやってもらうのは、お母さんたちを余計疲れさせているような気がしたんです。そこで、集まってみたけど今日はヨガができないっていう日は、みんなで美味しくご飯が食べられればいいかなと思って。私もその方が気楽だったんですよね。

 

——生徒さんに料理を振る舞っていたのがはじまりだったんですね。

阿部さん:みんなにおかずを一品持ってきてもらって、私はご飯とお味噌汁を用意したり、スタジオでうどんを茹でたりしましたね(笑)。それに、飲食店で働いたこともない私の料理でも「美味しい」と言って喜んでくださる方がいるっていうのは大発見だったんですよ。だからこの物件を見たときにも、ヨガの生徒さんに向けてだったら私でもカフェができるかなと思って。

 

 

——実際にカフェの営業をはじめてみてからはいかがでしたか?

阿部さん:はじめる前は「ゆっくり考えながらやればいいや」と思っていたんです。そんなに人も来ないだろうって呑気だったんですよね。だけどカフェにアンテナを張っている方って想像以上にたくさんいて、カフェに重点を置いてやらなければいけなくなってしまったんです。あと、カフェが目的に来る方はいっぱいいるんですけど、ヨガを目的に向かってくる方が見えなくて最初は苦労しましたね。

 

 

——ヨガにも力を入れたくても、どうしてもカフェを頑張らなきゃいけなくなってしまったんですね。

阿部さん:そんなときにコロナ禍になったんです。すごく頑張って走っていた電車が、つんのめるくらい急停止して。そこで初めて休む時間と考える時間が与えられて、自分がどうしたいのか考えたときに「やっぱりヨガをしたいな」と思ったんですよね。失敗してもいいから本気でヨガのクラスを組み立ててみようと思って「ここはヨガスタジオなんですよ」っていうことを、SNSとかで意識的に発信するようにしたんです。しばらくして「あのときしたことは合っていたんだな」「伝わっていたんだな」と思える人が同時多発的に現れてくれて。カフェとヨガとでいい感じに棲み分けができて、今は楽しくやれていますね。

 

 

——阿部さんが発信した思いを受け取った人が、ヨガに興味を持ってくれたんですね。

阿部さん:そうやって自分で考えて決めていかなきゃいけないんだなって分かってからは、怖くても自分の人生に責任を持った選択をするようになりました。お店も古くてずっと工事をしながらの4年間だったんですけど、この古い物件が自分の再生とつながるというか。空いている穴を塞ぐだけじゃだめで、根本から整えなければいけないんだなって。

 

——自分のことも根本から整えることが大切、と。

阿部さん:せかせかしていたり、言葉ではいいふうに言っていても身体の中ではそういう気持ちでなかったりすると、相手にも言葉が入っていかないんですよね。だから自分を整えることに時間を使って営業するようにしています。カフェで提供しているメニューに関しても、私は飲食の経験がないんですけど、美味しくご飯を食べられる環境づくりに力を入れているので、そういうところで来る方の心を満たせるようにしたいです。

 

岩室温泉街の人とのおまけみたいな素敵な時間が、自分の人生を豊かにする。

——この岩室温泉街で4年間「Ananda」を続けてみて、今思うことはありますか?

阿部さん:それまでも一生懸命ヨガをやってきましたけど、ここへ来てから初めて知ることがたくさんあって、「世界は広いんだな」と思ったんです。芸者さんがビールを飲みに来て私も一緒に飲んだり、仲良しの大家のおじいいちゃんとたまに喧嘩したり。昔の私からしたら信じられないような楽しい時間を過ごしているんです。そういう人との関わりで、自分はどんな在り方でもいいんだなと思えて。それは望んでできる経験でもなくて、おまけみたいにそういう素敵な時間を持てていることは、自分の人生をすごく豊かにするんだなって感じます。

 

 

 

cafe & yoga Ananda

新潟市西蒲区岩室温泉1530-1

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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