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障がい者の社会への扉を開く「カレイドスクエアパーク」の思い。

少子化が叫ばれて久しい昨今ですが、子ども向けで需要が高まっている福祉サービスがあります。障がいのある児童や生徒を放課後や休日に預かる「放課後等デイサービス」は、近年、新潟県内で提供する施設の開所が目立っています。県北の胎内市と村上市にある「カレイドスクエアパーク」もそのひとつ。なんでもカレイドさんでは、ただ子どもたちを日々ケアするだけでなく、やがて社会に出る将来を見据え、就労のための支援や社会参画活動にも力を入れているとのこと。また近年は障がいのある人たちによるアート作品にも注目が集まっていますが、カレイドさんでも、利用する子どもたちが制作した作品の発信や商用化へ積極的に取り組んでいるようです。運営会社の代表・羽田さんに詳しくお話を伺ってきました。

 

 

カレイドスクエアパーク

羽田 健亮 Takeaki Hada

1985年胎内市生まれ。大学在学中から障がい者福祉の現場に携わり、卒業後も障がい者福祉分野の専門企業でITを活用した就労支援に取り組む。その後、福島県いわき市で障がい者の就労移行支援事業所を会社員時代の先輩と起業、帰郷後は地元で施設の立ち上げスタッフなどを経て2018年に「トラインスミス」を創業し独立。現在は障がいのある児童・生徒が対象の放課後等デイサービス施設「カレイドスクエアパーク」を胎内市と村上市で運営、胎内の同所では大人向けの就労移行支援事業も手掛けている。

 

子どものうちから地域参画やキャリア支援に注力。社会に出る喜びを知って。

­――本日はよろしくお願いします。まずは素朴な質問をさせてください。少子化で子どもの数自体は減っているにもかかわらず、カレイドさんのような放課後等デイサービス施設は増えている印象があるのですが、それはなぜなんでしょう?

羽田さん:そうですね、ここ胎内市や村上市でもここ数年のうちに弊社施設を含めいくつか開設されました。一番大きな要因はもちろん需要増なのですが、それには大きく2つの背景があると思っています。ひとつは核家族化と共働き化が進み、平日の放課後や休日に子どもを見られる家庭が実数として少なくなったことです。かつては同居する祖父母やご近所同士で子どもを見ていたのでしょうが、時代が変わりそういう環境も少なくなってきました。もうひとつは、医療の進歩や社会の複雑化により、特別なケアが必要と認められる子が多くなってきたこともあると思います。障がいは「ある」か「ない」かではなく、その間のグレーゾーンにある場合が多く、それぞれ個別にケアしていくことが必要ではないかという理解が社会的に進んできていていることの表れとも言えます。

 

­――なるほど。ちなみにカレイドさんは現在、何人くらいの子どもたちが利用しているのでしょう?

羽田さん:放課後等デイサービスは小学生から高校年代まで、胎内で17名、村上で18名の35名が利用しています。またこれとは別に、胎内では社会人の方の自立を支援する就労移行支援事業も行っていて、現在7名の方が通っています。この就労移行支援は近く、村上でも新たに事業所を開設する計画です。

 

­――そうなんですね。その放課後等デイサービスで子どもたちはどんな活動をしているのでしょう。

羽田さん:基本的には健常者の学童保育と変わらず、放課後にやってきて宿題をしたり遊んだり活動をしたりするのですが、うちでは特に学校を卒業した後の将来を見据えて、普段から地域社会に参画する活動や就労に向けた活動に力を入れています。健常者の場合もそうですが、いざ社会に出て働きたいと思っても、年齢を重ねた後だとその分だけしんどいんですよね。だからできるだけ早い段階で社会に慣れてもらうというか、社会に出ることを考えながら活動してほしいな、と。

 

ケースバイケースを突き詰め、うまくハマる仕事で双方にメリットを。

­――社会参画や就労を見据えた活動として、具体的にはどんなことを?

羽田さん:活動で制作した絵を地元の店舗に飾ってもらったり、作品を店頭で販売したり、そこからさらに一歩踏み込んで、作品を地元企業の商品ラベルに使用してもらったりもしています。これまで地元のお酒やお米、お茶のラベルの他、清掃車のラッピングにも利用してもらっています。地域で自分たちの作品が活用されるのは、やっぱり子どもの大きな励みになりますね。就労に向けた具体的な活動としては、協力してくれる事業所での職場実習、いわばインターンだったり、ビジネスマナーから自己分析、ストレスコントロール、働くことの意義などまで学ぶ本格的な就活講座だったりも採り入れています。実習から帰ってくると、みんな目の色が変わりますよ。また卒業後の就職についても、せっかく就職できてもすぐに辞めてしまっては就職者と雇用者の双方にとって良くないので、マッチングはかなり力を入れています。就職前の準備段階から就職後のサポートも含め、個別にケースバイケースで取り組んでいます

 

 

­――ケースバイケースとひとくちに言っても、本当に様々なケースがあるんでしょうね。

羽田さん:そうですね。健常者を含めてもそうでしょうが、本当に人の特性は千差万別ですから。例えば気持ちに極端なムラがあったり他の人が普通にできることがなかなかできなかったりしても、あるひとつのことは他の人が全く太刀打ちできないレベルで速く正確にできる子もいます。それはもう見た人だれもが驚くぐらいに。できるだけそういった特性にうまくハマる仕事に就き、長く続けるのが本人にとっても雇う側にとっても理想的だと思います。またケースバイケースというのは雇う側にとってもそうで、ともすれば負担やリスクばかりを高く見積もりがちですが、うまくハマって長く勤めてもらえば、障がい者の雇用は企業にとっても様々なメリットになります。

 

­――雇う側のメリットとは、具体的に?

羽田さん:直接的に事業規模の大きな企業にとっては障害者雇用促進法で定められた雇用率をクリアする必要がありますが、そもそも特定のスキルに秀でた有能な人材を確保できるということでもありますし、間接的にも、職場の環境や待遇、福利厚生を改善させるきっかけになったり、企業のイメージアップにつながったりなど、様々な効果が期待できます。そういった面について事業者の方に理解を広めるためにも、地域社会への参画活動は重要だと捉えています。

 

IT × 福祉で理想を実現。一人ひとりの個性として受け入れる素地を。

­――少し個人的なことも教えてください。若くして福祉分野で起業された羽田さんがそもそも障がい者福祉を志したのはなぜですか?

羽田さん:私はまだ小さいときに父を亡くし、それからは母が女手ひとつで育ててくれたのですが、その母が就いていたのが福祉の仕事だったんです。中学生の頃には、すでに将来は福祉の道に進もうと決めていました。母は高齢者介護の分野だったのですが、私がそちらでなく障がい者福祉の方に進んだのは、高校生のときに出合った一冊の本がきっかけでしたね。『神様からの贈り物』という、筋ジストロフィーの主人公がITなどを駆使して幸せをつかんでいく自伝的な小説です。それからは障がい者福祉おけるITの可能性について関心が強まり、大学でもそれについて専門的に勉強しました。4年時には障がい者就労支援の分野でテレワークを採り入れている企業にインターンで入り、卒業後もそのままその会社にお世話になりました。

 

­――障がい者がテレワークで働くのを支援するということですか?

羽田さん:そうですね。首都圏では先に挙げた雇用促進法の基準もあって、大手企業間では障がい者のIT人材の取り合いのような状況でしたね。テレワークはコロナもあって今やかなり周知が広まりましたが、ネットさえあれば出社せず在宅のままテレワークで仕事ができるというのは障がいを持つ人にとっては特にありがたい環境です。これを地方でも実現したいという思いは、自分が起業する原動力のひとつでもありました。実際に胎内ではテレワークによる実習まで実現でき、在宅での就労に向けがんばっている利用者の方もいます。

 

­――それは応援したい! 最後になりますが、今後の展望を教えてください。

羽田さん:いま取り組んでいることを着実に続けつつ、目下の目標としては先ほど述べた村上での就労移行支援事業所の開設のほか、特産品の開発にも取り組んでいきたいと考えています。活動を通じて究極的には、障がいに対する社会の捉え方、より具体的に言ってしまえば、障がいのある子の見られ方を変えることができれば。商品のパッケージに採用された子どもたちの作品を見てもらえれば分かると思いますが、ことさら「障がい」にクローズアップするのではなく、普通におしゃれなデザインのひとつとして受け入れてもらえるように。障がいを特別視したり下に見たりするのでなく、誰もがそうであるように、それぞれの個性として受け入れてもらえればなぁと考えています。

 

­――なるほど。そうなるといいですね。本日は詳しくありがとうございました。

 

 

 

カレイドスクエアパーク胎内

〒959-2805 胎内市下館1147

TEL 0254-28-9362

 

カレイドスクエアパーク村上

〒958-0034 村上市松山260-7

TEL 0254-62-7139

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