ふたりの作家がはじめたアトリエショップ&カフェ「sankaku × shikaku」。
カルチャー
2023.10.16
昨年10月、上越市にオープンしたアトリエショップ&カフェ「sankaku × shikaku(サンカクシカク)」。上越エリアで活動している作家さんの作品を中心に扱っていて、コーヒー片手に作品を眺めながらのんびり過ごすことができます。お店を営んでいるのはイラストレーターとして活動するスワさんと、キャンドル作家として活動する荻原さんのおふたり。一緒にお店をはじめることになったきっかけや、お店を運営する中で思うことについて聞いてきました。


sankaku × shikaku
スワ サカエ Sakae Suwa
1992年上越市生まれ。上越市を拠点に「qucecke(クセッケ)」の名前でイラストレーターとして活動。約2年前に小学生の頃から知り合いだった荻原さんと再会。昨年10月、荻原さんと一緒に「sankaku × shikaku」をオープン。

sankaku × shikaku
荻原 翔子 Shoko Ogihara
1992年上越市生まれ。約2年前に小学生の頃から知り合いだったスワさんと再会。同時期に「Hitsuji Candle」の名前でキャンドル作家としての活動をスタート。昨年10月にスワさんと「sankaku × shikaku」をオープン。
上越で活動するイラストレーターとキャンドル作家が営むお店。
――気になっていたのでさっそくお聞きしますが、どうして「sankaku × shikaku」という店名なんですか?
スワさん:おむすびとトーストを提供しているからっていうのと、四角がキャンバスのフレームと三角がキャンドルのかたちに見えるから「sankaku × shikaku」です。
――なるほど。じゃあメニューはおむすびとトーストがメインなわけですね。
荻原さん:私はトーストが好きで、いろいろのっけて食べていましたし、彼女はおむすび屋さんで働いていた経験があるんです。それぞれができることをやっている感じですね。
――おふたりはもともと作家友達だったんですか?
荻原さん:再会したのは一昨年なんですけど、もともと小学校のときに同じバレーボールのクラブに入っていたんです。学校も学年も違うんですけど、2年間一緒にバレーボールをしていました。中学も違ったけど大会とかでは会っていたし、高校は同じだったんですけど、別の部活に入って。でもお互い認識はしていました。
スワさん:卒業した後、私は東京の大学に行ったので、その後はぜんぜん関わりもなくなって。連絡も取っていませんでしたね。
――もともとはスポーツクラブの先輩後輩だったんですね。どんなきっかけで再会することになったんでしょう?
荻原さん:当時よく読んでいた上越市のフリーペーパーにエッセイとイラストが載っていて、そこに「スワサカエ」って名前が書いてあったんです。「スワサカエって、あのスワサカエじゃない?」と思って(笑)。それで彼女のインスタを見てみたら、私がよく行っているお店のことを載せていたんです。「話してみたい」と思ってそのお店のオーナーに話をしたらお互いの耳に入って、会うことになりました。
――再会されたときはどういうお話をされたんですか?
荻原さん:私は当時やっていた仕事を辞めて、キャンドル作りをはじめたいと思っていた時期で。スワさんはイラストレーターとして活動していたので、作家活動について話を聞きたいなと思ったんです。それで彼女にいろいろ相談してから実際に活動をはじめて、その間も作家の先輩として話を聞いてもらっていました。

――おふたりで「sankaku×shikaku」をはじめるまでに、どんな経緯があったんでしょうか。
荻原さん:自分でものづくりの仕事をしていくにあたって、作品を常に置いていくベースみたいな場所が欲しいなと思っていました。そこで作品作りもできたらいいなと。そしたらたまたま場所を提供してくれる人がいて「作家ベースのカフェをやってみない?」と言われたんです。でも私ひとりだと荷が重いなと思って、そのときいろいろ相談に乗ってもらっていたスワさんに話してみたら、タイミングが良かったようで。
――スワさんもいつか自分の場所が欲しいなと思っていたんですか?
スワさん:私は自分のお店というか、自分や仲間の作品を置ける、箱貸しみたいなことをやっているお店が上越にあったらいいのにって思っていました。だから話を聞いて「いいじゃん」と。

長居できる環境だからこそ、人やものが出会い、つながりが生まれる。
――お店にはおふたりの作品の他にも、いろんな作家さんの作品を置いていますよね。
スワさん:上越や糸魚川周辺で活動している、自分たちと同年代の作家さんの作品が多いです。私たちが「もっと知ってもらいたい」と思っている作家さんに声をかけて、作品を置かせてもらっています。
荻原さん:作家さんって店舗を持たずにイベントに出店して活動している方がほとんどなので、イベントによく行く人じゃないと知らない作家さんっていると思うんです。でもこういうところに常設で作品を置いておけば、お客さんに「こんな人が上越にいるんだ」と知ってもらうきっかけになるんじゃないかなって。

――アトリエショップだけではなくて、カフェとしての機能を設けたのはどうしてですか?
スワさん:間口を広げるためにも、アトリエショップだけよりはカフェがあった方が入りやすいかなと思いました。コーヒーを飲みながら「自分の趣味に合う作品があるな」と思ってもらえたり、ここで出会った作家さん同士で一緒に展示をしたり。「こういう人を探しているんだけど」って相談されれば、私たちが思い当たる人を紹介してつなぐこともあります。そうやっていろんな方面に広がりが生まれていて。このお店をきっかけに、いろんなところで少しずつ新しい動きが出てきていて、すごく面白いですね。
荻原さん:飲食の機能があるからこそだなって感じています。雑貨屋さんに長居して喋ることって、あんまりないじゃないですか。でもここはカウンターがあるから、来た人がいろいろ話しているうちに仲良くなって、何か生まれることがあるんです。長居してくれるからその人のことをよく知れて、私たちも人と人をつなぐことができるんだと思います。

友達を連れて上越に戻ってきたときに、紹介してもらえる場所のひとつになりたい。
――お店を貸してワークショップを開催したり、間借り出店を受け入れたりもしているそうですね。
荻原さん:今年の夏にコーヒー屋さんのイベントをやったんです。コーヒーが好きで、こだわってコーヒーを淹れているお客さんがいて。彼から「人にコーヒーを提供してみたいんですけど……」と相談されたので、ここを使ってもらいました。当日はたくさんのお客さんが来て、彼にとってすごくいい経験になったんじゃないかな。
――何かをはじめようとしている人たちの後押しもされているんですね。
荻原さん:何かやろうと思っても、ひとりだとどうしたらいいか分からないと思うんです。私もスワさんがいたから作家活動をはじめられましたし。そういう人たちの力になって、上越で何かはじめるきっかけになれたらいいですね。
――作家さんに会ってゆっくり相談できる場所ってないですもんね。スワさんはここがどんな場所になっていって欲しいですか?
スワさん:東京で大学生をしているときに、友達を地元に呼んで遊ぼうと思っても、長岡の花火を見て実家に泊まるくらいだったんです。でも5年前に上越に戻ってきたら、そのタイミングでいろんな人が動き出していて「上越って何もなくないじゃん」と思うようになって。学校を卒業したら上越の外に出ていく子が多いと思うんですけど、友達を連れて戻ってきたときに「地元にはいろんなものがあるんだよ」って紹介してもらえる場所のひとつになったら嬉しいです。

――今月21日でオープンから1周年を迎えるとのことで、イベントを企画しているそうですね。
スワさん:アーティストやDJを呼んで、ライブハウス「上越EARTH」で音楽イベントをやります。それも、このお店のコンセプトをもうちょっと広げたいっていうのと、上越って若い人たちが遊べる場所があんまりないよねっていう思いがあって。ライブハウスに行ったことがない人にも「ライブハウスってみんなで楽しく遊べる場所なんだよ」と知ってもらいたいですね。
荻原さん:上越でバンドをやる若い子がどんどん減ってきていると知って、私たちにできることはなんだろうって考えたんです。「上越EARTH」と私たちのお店に来てくれているお客さんの層って違うし、そういう層にライブハウスの面白さを伝えられたらいいなって思っています。

sankaku × shikaku
上越市東本町1丁目1-11
「maru fes 2023」
開催日時 2023年10月21日(土)13:00-21:00(出演者数に応じて変更の可能性あり)
会場 上越ライブハウスEARTH
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