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新潟の四季を切り取るフォトグラファー「ウスキサトシ」。

  • カルチャー | 2023.07.25

花畑や田んぼ、滝や雪景色など、新潟の自然が見せる四季折々の表情を切り取るフォトグラファー「ウスキサトシ」さん。今年5月に発売した『Things Magazine』では、ウスキさんが撮影した花火や工場夜景の写真を掲載させていただきました。迫力のある美しい写真に「どうやって撮影したんだろう……」と気になった方も多いのではないでしょうか。今回はウスキさんが写真を撮るようになったきっかけや、写真の面白さについて聞いてきました。

 

 

フォトグラファー

ウスキ サトシ Satoshi Usuki

1982年新潟市江南区(旧亀田町)生まれ。高校時代にインスタントカメラを手にして、社会人で一眼レフデビュー。主に風景を撮り、休日は早朝から撮影に出かける三女のパパ。変わったドリンクを探すのが隠れた趣味。

 

肉眼では見えない、花火と花火が重なって生まれる一枚。

——『Things Magazine』には素敵な花火の写真を掲載させていただきました。あの写真はいつ頃撮ったものなんですか?

ウスキさん: このスタイルで花火を撮影するようになったのは30歳前後くらいで、そこから今まで撮影したものを選別しました。2010年頃から5、6年の間、花火に限らずいろんなテーマで写真展を開いていたんですけど、ただ写真だけを展示するのではなくて、写真と文字を組み合わせていたんですよ。「カメラで瞬間を切り取って、鉛筆で行間を旅していたい」というのが僕の活動のスタイルです。

 

 

——ふむふむ。

ウスキさん:花火にまつわる施設で写真を展示しないかと誘ってもらったこともあります。花火の写真が上手な人ってたくさんいるので、ちょっと他とは違う撮り方をしようと思って、マガジンに掲載したような、肉眼では見えない花火の写真を展示しようと考えました。

 

——言える範囲で大丈夫なんですけど……どうやって撮影しているんですか?

ウスキさん:実際に写真を見てもらうと分かるんですけど、花火がくっきりとした線になっているところはピントが合っていて、滲んでいるところはピンボケしているんですよ。ピントが合うものと合わないものを組み合わせたりなど、その場で試行錯誤して作っています。

 

——1発じゃなくて何発かの花火を重ねて撮って1枚の写真にしているんですね。

ウスキさん:マガジンに掲載した写真はほとんどがそうですね。だけど1発上がった後にどんな花火が上がるかは分からないから、写真の仕上がりはほとんど運です。めちゃくちゃ明るい花火が上がると色がとんじゃうし、基本的には何発かの花火を重ねて写しているから、あんまり欲張ってもうまくいかないし。子供を連れて毎週のように花火大会に行っていた時期もありました(笑)

 

はじめて触れたカメラは、使い捨てのインスタントカメラ。

——そもそもウスキさんはいつから写真を撮るようになったんでしょう?

ウスキさん:僕が高校生の頃は、みんな体育祭とかの行事にインスタントカメラを持っていって撮影していたんです。でも結局、フィルムが数枚余っちゃうんですよね。みんなは余ったまま現像に持っていっていましたけど、僕はそれがもったいないなと思って、高校の行き帰りに見つけた町の面白オブジェとかを撮っていて。それを続けていたら行事に合わせてカメラを持つんじゃなくて、常に持つようになりました。よく撮れたら友達に見せたりして。

 

——残ったフィルムでなんとなく撮りはじめたのがきっかけだったんですね。

ウスキさん:だけど高校を卒業すると、友達と散り散りになっちゃうじゃないですか。それで、僕は手紙を書くのも好きだったので、手紙と一緒に撮った写真を入れて送るようになって。それが「写真に文字を入れる」っていうスタイルにもつながったんだと思います。

 

——なるほど。

ウスキさん:大学に入ってからも、しばらくはインスタントカメラを使っていました。大学生の頃になると世にデジカメが出てきたんですけど、今度はインスタントではないフィルムカメラを買って撮るようになりましたね。でもそのカメラが壊れてしまって……。

 

 

——あらら……。じゃあまた新しいカメラを買うことになるわけですね。

ウスキさん:大学を出て入社した会社の先輩が、カメラにめちゃくちゃ詳しくて。以前カメラを買うときに一眼レフと普通のカメラのどちらにするか迷ったので、その先輩に「一眼レフってどうなんですか?」って聞いてみたんです。そしたら手元にあったNikonのカメラを試しに使わせてくれて。それと一緒に36枚撮りのフィルムも渡されて、「土日で1本撮影してきなよ」と。

 

——それで、初めて一眼レフを使ってみていかがでしたか?

ウスキさん:「面白いな」と思いましたね。それがきっかけになって、インターネットでNikonの中古カメラを買いました。だけどフィルムを現像するのにもお金がかかるし、撮った写真を整理するのにも手間がかかるんですよね。そこで、デジカメだったらその手間もないし、躊躇せずに写真を撮れるのかなと思って、当時の彼女……今の奥さんと柏崎に出かけたときに、カメラ屋で衝動的にNikonのデジタル一眼レフを買ったんです。入門機といわれているカメラで、それが僕にとって初めてのデジタル一眼レフでした。今使っているカメラは4代目です。

 

自分が撮った写真を見た人が、行動を起こしてくれたら嬉しい。

——ウスキさん自身が「いいな」と思える写真を撮るために意識していることはありますか?

ウスキさん:「いい写真」の定義が僕には分からなくて。だけど、いい景色がいい写真につながるんだとすると、やっぱり「動くこと」ですよね。大事なのはとにかく現地に行くことなのかなと思います。

 

——写真を撮るために出かけることが多いですか? それともたまたま出かけた先で写真を撮る?

ウスキさん:両方ありますね。だけど僕はひとりで出かけるっていうことはあまりなくて、基本的には出かけるとしたら家族も一緒です。でも「どうしても撮りに出かけたいな」っていうときは、朝早く起きるんです。それで今年の2月には、絶対に晴れるっていう天気予報を信じて、朝3時半に家を出て新潟市から小千谷まで行って(笑)。そしたらぎりぎり日の出に間に合って、すごくいい写真が撮れました。

 

 

——ウスキさんの写真は季節感のあるものが多いですよね。これからの季節だと、どんな写真を撮りたいですか?

ウスキさん:ベタかもしれませんが、津南のひまわり畑とかいいですね。あとは家族と一緒に海にシーグラスを探しに行ってついでに写真を撮ったり、滝を撮ったり。それから、新潟ならやっぱり田んぼですかね。岩船のあたりにすごくいいスポットがあるんですよ。

 

 

——写真を撮る面白さや醍醐味って、どんなところですか?

ウスキさん: 写真って、思い通りの絵が撮れたら嬉しいかっていうと、そんなこともないんです。写真が上手いかそうでもないかって決めるのは自分だと思いますし。自分の撮った写真を自分が好きだったらそれでいいんですよね。例えめちゃくちゃブレていたとしても、そのときの盛り上がりが残せていればそれでいいと思うんです。でも後で見返して「綺麗だな」って思ったり、僕の写真を見た人が「実際にこの風景を見てみたいな」と思って行動してくれたりしたら嬉しいですね。それが僕の大事にしている「切り取る一瞬と紡ぎ出す言葉に意味を持たせる」ということにもつながるのかなと思います。

 

 

 

ウスキサトシ

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