花火の玉が開く瞬間、直滑降しているヘリコプターなど、なかなか見られない貴重なシーンを撮影するカメラマン、佐々木譲さん。どうしてカメラマンを目指したのか、どうして誰も撮影しない瞬間を撮ろうと思ったのか、これまでのキャリアから撮りたい写真の話まで、カメラマンとしての本音をお聞きしてきました。
Sasaki Image Create
佐々木 譲 Yuzuru Sasaki
1973年新潟市生まれ。2017年「Sasaki Image Create」設立。商業撮影やブライダル撮影を生業とする中で、ライフワークとして花火や軍事物の撮影を行い、軍事フォトジャーナリストとしても活躍。
――佐々木さんは、どんなキカッケでカメラ持つようになったんですか?
佐々木さん:元々、軍物に興味があって駐屯地などのイベントに行っていたんです。そこで颯爽と歩いている自衛隊のカメラマンを見かけて憧れて、それがキッカケとなって自分でも撮影をするようになりました。
――実際にカメラを仕事にしたのは、どんなタイミングで?
佐々木さん:カメラはあくまで趣味の範疇でやっていたんだけど、結婚式で撮影してもらったカメラマンと仲良くなって、自分の撮影した写真を見てもらったら思った以上に好評でね。仕事をしながら休みの日に、カメラマンとしてブライダルの撮影もするようになったんです。それで商業用の撮影もやりはじめたら、先輩カメラマンがいろんなスキルを教えてくれて、2017年から本格的にカメラマンとしての活動をスタートしました。
――そういったお仕事の写真とは別に、ライフワークとなっている撮影もあるんですよね?
佐々木さん:仕事につながっている部分もあるけれど、他にライフワークとして、花火や軍物の撮影をしています。どちらも、誰も見られない瞬間や構図で撮っているから面白いと思いますよ。
――それではまずは、花火の写真についてお聞きしたいと思います。やっぱり花火というと、空に花火が咲いた瞬間ですか?
佐々木さん:それが違うんですよ(笑)。僕が撮影しているのは、花火の玉が破裂している瞬間でね。7㎏もある大砲みたいなカメラを持って、土手とかから花火が打ちあがった瞬間に玉をファインダーに入れて追いかけて撮っています。これが難しくて。重いし、広い大空から探さないといけないし……、ちょっとカメラ持ってみます?
――え? いいんですか? では失礼して……よっこらしょっと。うわ、めちゃくちゃ重い……これは無理ですね(笑)
佐々木さん:でしょ(笑)。止まっている物を撮るのですら難しいのに、大空で動いている小さな玉を追いかけて、破裂した直後の瞬間を撮るんですから、まぁ普通の人はやらないですよね。ちなみに写真はこんな感じです。
――え、これ花火ですか? なんだか宇宙で起きた爆発みたいですね。
佐々木さん:そうそう。だから宇宙や星が好きな人たちには好評なんです。
――どうしてこの瞬間を撮ろうと思ったんですか?
佐々木さん:花火の玉が弾ける瞬間って、見たことないじゃないですか。だから、それを撮りたかったんですよ。で、チャレンジしてみたら……まぁ無理な話でね。でも、その副産物として破裂したガスの光が撮れたんです。これは誰も撮っていないと思って、その瞬間を狙うようになりました。
――それでは軍物の撮影についても教えてください。当り前かもしれませんが、軍事的な……戦車とかを撮っているんですか?
佐々木さん:まぁ撮りますね(笑)。ただ、駐屯地の一般開放などで誰でも撮れるような写真は撮っていなくて、基本的に訓練を被写体にして、誰も見られない部分を撮影しています。だから幕僚監部(陸海空と統合のそれぞれ4セクションあり、部隊運用の最上級部署)へ調整をお願いして、訓練を取材させてもらっているんです。ちなみに直近では北海道に行ってきました。
――幕僚監部……そんなところに(笑)。それで、訓練を被写体にするとなると、どんな画になるんですか?
佐々木さん:ん~いろんなシーンを撮っているけど……例えば「発射ーー!」の瞬間とか、戦車が走行している様子とかかな。ドローンで実弾ギリギリのラインで撮影したり、林道を後ろ向きに飛ばして撮影したり……こんな画を撮っています。
――おお! 映画みたいなアングルですね!
佐々木さん:あとはヘリコプターに乗って、ヘリコプターを撮ったこともありますね。
――え? これは真横から? 垂直落下している瞬間ですか?
佐々木さん:そうなんですよ。これは自分でヘリコプターをチャーターして、「訓練時にこういう写真を撮りたい」とお願いして実現しました。
――お、お願いって、そんなことできるものなんですか?
佐々木さん:普通は難しいと思います。でも、今まで実績や信頼を積み上げてきたからこそ、こういうお願いができたり、逆に依頼があったりして、いろんな撮影ができています。
――そういうことなんですね。ちなみに、佐々木さんみたいに訓練を撮影しているカメラマンってたくさんいるんですか?
佐々木さん:場所にもよるけど、北海道みたいに-20℃の豪雪という過酷な環境へわざわざ撮影しに行く人はそういないでしょうね。ある意味、苦行だからね(笑)。でも誰も見られなくて、撮れない瞬間を手にした達成感は、やめられないから僕は行くんですよね。
――これだけ貴重な瞬間を撮っていても、まだ撮りたい写真ってあったりしますか?
佐々木さん:カメラを持つようになってから、軍事カメラマンに憧れを抱きました。危ない場所で銃撃戦のシーンを撮るのが軍事カメラマンの仕事だと思っていたけれど、実際はそうではなくて。戦争が行われていた地域の民族が解放されるときの、人々の感情が動いた瞬間、そんな一枚を撮りたいと思っています。今までに撮ってきた花火や軍物の写真は、どれもみんな「誰も見られない瞬間」です。これからも写真や映像として残していきたいですね。
Sasaki Image Create
佐々木 譲