親から娘へ受け継がれる三条の人気生花店「大華フラワー」。
その他
2023.12.12
最近は若い女の子の間でも、卒業式や成人式などのお祝いに花を贈ることが増えているようです。お祝いやお悔やみなどの気持ちを伝えるツールとして、昔から変わることなく花は贈られ続けてきました。今回は世代交代の狭間にある三条の「大華フラワー」さんにお邪魔して、2代目の人士さん、その娘で3代目の真咲代さんに、生花店としてのこれまでとこれからについて聞いてきました。


有限会社 大華フラワー
堀 人士 Hitoshi Hori
1962年三条市生まれ。高校卒業とともに家業の「花勝(はなかつ)生花店」を手伝いはじめ、パリの生花店やベルギーのフラワーアーティストの元で、フラワーデザインや生花を学ぶ。1989年に2代目を継ぐとともに「大華フラワー」としてリニューアルし、2000年に現在の場所で移転オープン。車と絵画が好きで、好きな画家は印象派のモネやルノワール。
有限会社 大華フラワー
堀 真咲代 Masayo Hori
1993年三条市生まれ。東京の大学を卒業した後、新潟でインテリア関係の仕事を3年経験。実家の「大華フラワー」を継ぐ決意をし、フラワースクールで学んだ後に東京の生花店で修業。新潟へ戻り「大華フラワー」に就業。犬が好きで、実家にいるトイプードルの他にもゴールデンドゥードルを飼っている。
ディスプレイしたフラワーアートを、毎週写真に撮り続けてくれたファン。
——広くて綺麗なお店ですね。色とりどりのお花のせいか、店内が明るく感じます。
真咲代さん:ありがとうございます。お花の生命力を感じていただきたいので、「大華フラワー」では生きているお花にこだわっているんですよ。
人士さん:ここへは2000年に移転してきたんです。その前はもっと小さなお店で冠婚葬祭業の下請け仕事をメインに営業していたんですけど、お客様に直接お花をお渡しするお店へと生まれ変わるために広い店舗へ移りました。

——ちなみにお店の歴史は古いんですか?
人士さん:私の父は寿司職人をしていて、三条でも人気のあった「栄寿司」というお店をやっていたんです。その後に大型トラックを使った運送業を経て、1976年に「花勝生花店」を創業しました。
——なんだか振り幅の大きな職歴ですね(笑)
人士さん:父は何でも思いつきで行動に移しちゃうんですよ。そのおかげで、家族は振り回されて大変だったんです(笑)。経営もどんぶり勘定だったので、私が2代目を継いだ機会にきちんと整理し、店名を「大華フラワー」と改めて再スタートしました。
——人士さんはいつからお店の手伝いをされていたんですか?
人士さん:高校卒業時に父から「店を手伝うんだったら好きな車を買ってやる」と持ちかけられたんです。僕は車が大好きだったので、考えていた大学進学を諦めてスカイラインGTRを選んでしまったんです。それが苦労のはじまりだったのかもしれません(笑)
——(笑)。お店を手伝いはじめて、かなり苦労されたみたいですね。
人士さん:最初は自分が考えていることとお客様の求めているものが噛み合わず、空回りしてばかりだったんですよ。もうお店を続けられないかなと思うようなときもたくさんありましたね。
——空回りというと?
人士さん:ベルギーやパリで勉強をしてきたことが、地元の方々には受け入れてもらえなくて、もやもやした日々を過ごしましたね。商売ではなく趣味になっちゃっていたのかもしれません。
真咲代さん:父の作るお花はとてもアーティスティックなんだけど、風変わりなものばかりだったんです(笑)

——一般受けしにくいものということでしょうか。ちなみに、海外ではどんな勉強をしてきたのか教えてください。
人士さん:「花の建築家」と呼ばれるベルギーのフラワーアーティスト、ダニエル・オストさんの下で勉強させていただきました。先生は朝から晩まで食事もしないで作品を作り続けるんですけど、少しでも物音を立てるとすごい剣幕で怒り出すんですよ。だからトイレへも行けずに、作品製作をじっと見ていなければならなかったんです。
——それはけっこう大変ですね(笑)
人士さん:それから夫婦でパリに行って花屋で修業してきましたが、最初は日本人ということで下に見られていたんです。でも頑張りを認めてもらえたのか、ベルサイユ宮殿で催された「ジバンシィ」のパーティーでは装飾に参加させていただいたり、マリー・アントワネットが住んでいた高級ホテルの部屋をお花で装飾させていただいて、パーティーを開催させていただいたりしました。どれも日本人でははじめての経験ばかりだったので、とても光栄に感じましたね。
——すごいじゃないですか! でも、それも地元の三条では受け入れられなかったんですね。
人士さん:そうなんです(笑)。でも、理解はされなくても頑張っている姿だけは地元の皆さまに伝わっていたようで、少しずつ応援してくれる方が増えていったんです。そのおかげでなんとか商売になっていきましたね。
——熱意って伝わるものなんですね。
人士さん:まだ移転前の店舗だった頃、お洒落な生花店に憧れてショーウィンドウを自分がデザインしたフラワーアートで、毎週ディスプレイしていたんです。そしたらいつの間にか僕の作品のファンができて、知らないうちにその方が毎週写真を撮ってくれていたんですよ。お店を移転オープンした際に、何年分かの写真をまとめたアルバムをお祝いに贈ってくれて感動しました。
——何年も写真を撮ってくれていたんですか。それはもう大ファンですね。
人士さん:その方は毎週1万円分ものお花を買っていってくれるんですけど、30年経った今でもお店に通い続けてくれるんですよ。そういうお客様たちに支えられて、今までお店をやってくることができたと思っています。

お花を贈られた方から届いた、喜びの声。
——真咲代さんはいつからお店を継ごうと考えていたんですか?
真咲代さん:インテリア関係の会社で営業をやっていたんですけど、自分の手で作ったものを直接お客様にお渡しできる仕事がしたかったので、「大華フラワー」を継ごうと決心しました。でもお花についての知識がなかったので、フラワースクールで勉強してから東京の生花店で修業をはじめたんです。
——そこでの修業はいかがでした?
真咲代さん:働きはじめてすぐに、コロナ禍がはじまってしまったんです。ウエディングもなくなり生花店の仕事が減ってしまったので、新潟に戻って「大華フラワー」で働くことにしました。

——生花店のお仕事をはじめてみて感じたことってありますか?
真咲代さん:お花って見た目は華やかですけど、お祝いに贈るハッピーなものだけじゃないんですよね。亡くなった人やペットの霊前にお供えする、人の心を慰める花もあると知りました。お花にはそれぞれにドラマがあって、人生に寄り添っているものなんだと思いますね。
——そんなお花を売るときにこだわっていることってあるんですか?
真咲代さん:美しいものを売るお店ですので、常に店内を綺麗にするよう心がけているんです。お花を入れておくバケツや花瓶の水が汚れないよう、まめに取り替えるようにしていますね。
——確かに綺麗なお店ですよね。
真咲代さん:ありがとうござざいます。あと、綺麗なお花をできるだけ長く楽しんでいただきたいので、お渡しするときは一輪一輪の鮮度をしっかりと確認しているんです。

——買ってからも長持ちしそうですね。生花店をやっていて、難しいと思うことはあるんですか?
真咲代さん:お客様の求めるイメージを掴んで、お花にまとめるのが難しいですね。特にお花を買い慣れていらっしゃらないお客様から、求めているイメージを引き出すのは大変なときもあります。毎回お渡しの際には、お客様の反応が気になって緊張しています(笑)
——では反対に嬉しいと思う瞬間ってありますか?
真咲代さん:たくさん買っていただく必要はないので、一輪ずつでもしょっちゅう買いに来ていただけると嬉しいですね。お花が変わると場の雰囲気も変わりますので、季節ごとのお花を楽しんでいただきたいです。
人士さん:生花店は嬉しい瞬間が多いんですよ。というのも、お客様から「ありがとう」といって喜んでいただける商売だからです。うちで買ったお花を贈られた方から「こんな綺麗なお花を贈られたのははじめてで嬉しかった」とお礼の電話をいただくこともあります。
——今後はどんなふうにお店をやっていこうと思っていますか?
人士さん:3代目店主の娘にバトンを渡しはじめているんですけど、今まで支えてくださったお客様への感謝を忘れず大切にしていってほしいですね。その上で新しいことに挑戦する際は、しっかりと勉強してからはじめてほしいと思っています。
真咲代さん:今まで支えてくださったお客様も大切にしながら、若い方にもお花の楽しみ方を伝えていきたいですね。お客様がゆっくりできるようなカフェを併設したり、ワンちゃん用のグッズを扱ったりして、いろいろな方々に来ていただけるお店にしていきたいです。

大華フラワー
三条市西裏館2-5-24
0256-32-3353
9:00-18:00
不定休
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