王道の担々麺にこだわり続ける専門店「担々麺SUN」。
食べる
2022.08.11
暑い季節に辛いものを食べたくなることってありますよね。汗をかくことが体温の上昇を防いだり、辛み成分が食欲を増進したりするそうで、暑くなると身体が自然と辛いものを求めるのだそうです。カレー、麻婆豆腐、タコスなど辛い料理はいろいろありますが、「担々麺」もそのひとつ。今回ご紹介するのは、担々麺ひと筋にこだわる「担々麺SUN」の店主・渡部さんです。


担々麺SUN
渡部 利貴 Toshiki Watanabe
1988年福島県生まれ。地元の自動車部品工場で働いた後、上京して担々麺専門店で働く。ワーキングホリデーを利用してオーストラリアに渡って2年ほど生活し、2019年、新潟市江南区で「担々麺SUN」をオープン。趣味はアウトドアで釣りやバーベキューを楽しみ、動画をYouTubeにアップしている。
はじめて食べた担々麺の美味しさに衝撃を受ける。
——渡部さんと担々麺の出会いについて教えてください。
渡部さん:僕は地元にある自動車部品の工場で働いていたんですが、もっと広い世界を見てみたいと思って21歳のときに上京したんです。とりあえず仕事を探さなければと思って街をぶらぶら歩いていたら、担々麺専門店でスタッフ募集の貼紙を見つけました。それまで飲食業は経験したことがなかったけど、新しいことに挑戦してみようという気持ちで応募したんです。
——そのときから担々麺を作りはじめるわけですね。
渡部さん:そうなんです。実をいうと、当時は担々麺どころかラーメンすらあまり食べなかったんですよ。でも、その店で担々麺を食べてみて、いろんな種類のスパイスが絶妙に絡み合った複雑な味わいに衝撃を受けました(笑)。このお店で担々麺の基礎を学びながら、すっかり担々麺にハマっていきましたね。

——じゃあ、その後に「担々麺SUN」をオープンしたんですか?
渡部さん:ところが、奥さんと一緒に2年ほどオーストラリアで生活してきたんです(笑)
——ちょ、いきなりオーストラリアって……(笑)
渡部さん:ですよね(笑)。もともと海外で生活してみたいという夢があったんです。でも、お店をはじめたら、なかなか自由な時間はなくなってしまうじゃないですか。だから、その前にワーキングホリデービザを使ってオーストラリアで暮らしてきたんです。
——なるほど。それで、オーストラリアでの生活はいかがでした?
渡部さん:言葉の通じない国で働いたり、生活したりするのは大変でしたね。そのかわり、いろいろな国の友人ができたのは収穫だったと思っています。一緒に料理を作ったりして、台湾の人からはスパイス、イタリアの人からはハーブの使い方を学びました。あとオーストラリアで暮らしたときに釣りを覚えたんです(笑)
——いろいろ学ぶことも多かったんですね。印象に残っているエピソードってありますか?
渡部さん:広大な土地を何キロも車で走っていたら、暑さで車のラジエーターがオーバーヒートしてエンストしてしまったんです。でも周囲にはガソリンスタンドどころかお店も民家もありません。しかたなくエンジンをしばらく休ませ、回復したら走るということを繰り返してようやく街にたどり着きました。

新潟で担々麺専門店をはじめた理由。
——どうして新潟でお店をはじめようと思ったんでしょうか?
渡部さん:僕も奥さんも釣りをするので、日本海側に住みたかったんです。だから日本海側にあるラーメン需要の多い都市ということで新潟市を選びました。あと、僕の母方のおじいさんが江南区に住んでいたので、少しだけ馴染みもあったんです。
——なるほど。とはいえ、はじめて住む土地でお店をオープンするのって大変だったんじゃないですか?
渡部さん:お店をはじめるにあたって、奥さんと条件を決めていたんです。ひとつは「借金をしない」というものでしたので、2年ほど工場で働きながら独立資金を貯めました。改築費用もなかったので、居抜きで使える物件を探して現在の店舗に決めたんです。
——借金無しでお店をオープンするのってすごいですね。ちなみに店名の「SUN」にはどんな意味が?
渡部さん:担々麺のHOTなイメージや赤い色からの連想もあるし、あたたかい雰囲気のお店にしたいという思いもありましたね。

——オープンしてみていかがでしたか?
渡部さん:まったく宣伝をしていないのに、お客様がたくさん来てくださって嬉しかったですね。オープンしてすぐコロナ禍がはじまってしまいましたが、常連のお客様たちに支えられながら続けてくることができて、新潟の人たちの温かさを知りました。新潟でお店をはじめて本当によかったと思っています。新潟以外の土地だったら、今まで続けられなかったかもしれないですね。

ストレート1本で勝負するピッチャー。
——担々麺一本で勝負するのって、不安はありませんでしたか?
渡部さん:僕の性分なんでしょうね。ひとつのことに手間をかけるので、いろいろな種類のラーメンを作ることができないんですよ。野球のピッチャーに例えるなら、ストレート1本だけで勝負するタイプですね。
——いろいろな変化球を覚えるよりも、コントロールやスピードを磨いてストレートの精度を上げるタイプなんですね。
渡部さん:とはいっても、いろいろなお客様がいらっしゃるので、辛さは7段階で選べるようにしています。それ以上の辛さも対応させていただいているので、自分にあった辛さで楽しんでいただきたいですね。あと、つけめん、冷やし担々麺、カレー担々麺などの季節限定メニューもご用意して、お客様に飽きられない工夫もしています。

——「担々麺SUN」の担々麺にはどんな特徴があるんでしょうか?
渡部さん:王道の担々麺がベースになっているっていうことでしょうか。担々麺は中国四川地方発祥の料理なんですけど、当初は日本人の舌に合わなかったので、日本人向けにアレンジされているんです。芝麻醬(チーマージャン)を鶏ガラベースの清湯スープで伸ばした醤油ベースのスープというのが、日本で食べられている担々麺のルーツなんですね。今はいろんな担々麺が派生していますけど、僕はルーツの担々麺をベースにして、オリジナリティを加えています。
——他にこだわりはありますか?
渡部さん:スープのダシをとる鶏や、肉味噌に使う豚肉には、新潟県産の食材を使うようにしています。麺にはライ麦を使っているので、風味や食感がひと味違うんです。製麺所にはかなりわがままを言って、スープと合うような理想通りの麺を作ってもらいました。
——今後はどんなふうにお店を続けていこうと思っていますか?
渡部さん:お店をはじめる際に決めた条件のもうひとつが「3年間やってみて結果が見えなかったら諦める」というものだったんです。でも、おかげさまで来月で3周年を迎えることができるので、これからもお店を続けていきたいと思います(笑)。それも、ただこのまま続けていくというわけではなく、担々麺をもっともっとレベルアップしていきたいですね。
——根っからのストレート投手なんですね(笑)
渡部さん:ありがとうございます(笑)。あと、コロナ禍で手の空く時間ができたことがきっかけで、YouTubeをはじめてみたんですよ。お店の限定メニューやおすすめの食べ方の紹介はもちろん、釣りに行ったりお酒飲んだりして、動画をアップしています(笑)。おかげさまで他県の方にもお店を知ってもらうきっかけになっているんです。興味のある方はチェックしてみてください(笑)

担々麺SUN
新潟市江南区鵜ノ子4-1-6
090-9243-1286
11:30-14:30/17:30-19:30(日曜は昼営業のみ)
月火曜休
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