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ときどきしか営業していない、その名も「時々カフェ」。

ひと月にわずか数日しか営業していない「時々カフェ」が、新潟市秋葉区の秋葉山近くにオープンしました。どうして、ときどきしか営業しないのでしょうか? 気になるその理由も含めて、オーナーの髙橋さんにいろいろとお話を聞いてきました。

 

時々カフェ

髙橋 浩子 Hiroko Takahashi

1959年新潟市秋葉区生まれ。東京の短大で幼児教育を学び、幼稚園教諭となる。結婚を機に幼稚園を退職し、子どもに英語を身につけさせたいという思いをきっかけに「Labo Party(ラボ パーティ)」の講師となる。2021年5月新潟市秋葉区の実家をリノベーションし「時々カフェ」をオープン。リンゴが大好きで、リンゴアイテムをコレクションしている。

 

どうして、ときどきしか営業していないの?

——「時々カフェ」は、ひと月に4日〜6日くらいしか営業していないんですよね?

髙橋さん:そうなんです。お客様から定休日のお問い合わせをいただくんですけど、むしろ営業日の方が少ないんですよね(笑)。隔週の日曜と月曜だけ営業しているんです。詳しい営業日は、Instagramや店頭の貼り紙で確認していただけるとありがたいです。

 

——本当に「時々カフェ」なんですね(笑)。どうして、そういう営業スタイルになったんですか?

髙橋さん:私は普段、埼玉で他の仕事をやりながら生活しているので、月2回くらいしか新潟に来てカフェが開けないんですよ。最初はそんな営業スタイルでもいいのかと迷っていたんですけど、ご協力くださった建築設計事務所の方が「時々カフェ」という店名を提案してくれたんです。この店名のおかげで気持ちが軽くなったんですよね。

 

 

——なるほど。それにしても埼玉から通うのは大変ですね。ちなみに埼玉ではどんなお仕事を?

髙橋さん:子ども達と一緒に、絵本や物語を通して英語を習得していく「Labo Party」という団体の講師をやっています。

 

——髙橋さんは昔から英語が得意だったんですか?

髙橋さん:特に何かやっていたわけではないんですけど、学校の授業では一番好きな科目でしたね。以前、幼稚園で先生をやっていたときに、子ども達と一緒に絵本を読んだりする機会が多かったんです。そのときの経験も英語講師の仕事に結びついていると思います。

 

雨上がりの輝く街を見て、カフェをやろうと決意。

——そもそもカフェをはじめようと思ったきっかけって、何だったんですか?

髙橋さん:ここは私が5歳から高校卒業まで暮らしていた実家なんです。その後も両親が住んでいたんですけど、ここ15年間はずっと空き家になっていました。ときどき掃除しに来るくらいでずっと放っておいたので、そろそろけじめをつけなきゃと思って県に相談したら、不動産業者さんを紹介してくれたんです。すぐに業者さんが見にきてくれたんですが、買い取りは難しいと言われてしまいました。

 

 

——えっ?どうしてなんですか?

髙橋さん:建っているのが山の上という立地の問題と、家に入るのに階段を何段か登らなければならないという建物の問題がネックになったんです。あまりにショックで3日間落ち込みました。ちょうど雨降りが続いていて、どんよりした天気も落ち込んだ気分に追い打ちをかけましたね(笑)

 

——たしかに、そういう状況になったら途方に暮れるかも……。

髙橋さん:そうなんですよ。でも4日目の朝に雨が上がって空が晴れたので、気分転換をしようと思って散歩に出かけたんです。そしたら雨に濡れた新緑が日差しにキラキラ輝いていて、とっても素敵な風景が目の前に広がっていたんですよ。それを見て私の心も春の青空みたいにすっきりと晴れ渡りました(笑)

 

——天気って心理状態に大きく影響するんですね(笑)。でも心が晴れてよかったです。

髙橋さん:自分のふるさとが、こんなにきれいな素敵な場所だったんだって気づいて、急に希望が湧いてきたんですよね。それで、「せっかく素敵な場所にあるんだから、実家の建物を使って自分でカフェをやってみよう」って思いはじめたんです。

 

カフェ実現への背中を押してくれた「妄想会議」。

——思いついてすぐにカフェの準備を始めたんですか?

髙橋さん:どうしたらいいのかわからなかったので、しばらくは悶々と妄想が膨らむ一方でした(笑)。あまりに妄想が膨らみ過ぎて、誰かに話さずにいられなくなってしまったので、お友達にカフェをやりたいという話を聞いてもらったんです。そしたら「妄想会議」というイベントを勧めてくれたんです。「妄想会議」というのは、秋葉区で町おこしをしている人が主催しているイベントで、自分のやってみたい妄想レベルの夢を参加者にプレゼンして、アドバイスをもらったりディスカッションしたりして実現に近づけるというものでした。

 

——へ〜、なんか面白そうですね。参加した成果はあったんですか?

髙橋さん:大ありでした(笑)。参加者のなかに私の妄想を後押ししてくれる人がいて、秋葉区で町おこし活動をしている「馬場工務所」と「神田陸建築設計事務所」を勧めてくれたんです。メールで相談してみたらすぐに返信があって、このあたりを下見に来てくれたんです。それで「面白そうだから一緒にやってみましょう」と協力していただけることになりました。「秋葉山周辺には飲食店が少ないので、カフェができたら遊びに来た人がたくさん寄ってくれるんじゃないか」と背中を押してくださったんです。

 

 

——おお! 妄想がかたちになってきたわけですね。

髙橋さん:私自身はのんびり考えていたので、ゆっくり進めていこうとしていたんですけど、周りの方々は積極的に動いてくださっていて、最初は背中を押してもらっていたのに最後はお尻を叩かれていました(笑)。でも、そのおかげで夢が実現したんです。

 

——建物のリノベーションでこだわったところはありますか。

髙橋さん:馬場さんと神田さんにおまかせでしたけど、店内が明るくなるように二階をぶち抜いて吹き抜けにしてほしいということと、できるだけベースの建物や建材は生かしてほしいということをお願いしました。この家に染み付いた思い出は残しながらも、明るくてお洒落なお店に生まれ変わったと満足しています。

 

さらっと食べられて身体にやさしいメニュー。

——「時々カフェ」ではどんなメニューが楽しめるんですか?

髙橋さん:お食事では「スープカレー」です。身体にやさしくって、さらっと食べられるお料理を提供したかったんですよ。旬の野菜を10種類以上使って、スパイスで煮込んだカレーで、ライスは玄米と白米を半々にブレンドしています。あんまり辛くはしていないので、本格的なカレー好きには物足りなく感じられるかもしれませんが、子どもからお年寄りまで誰にでも食べやすいメニューだと思います。

 

 

——本当にすごく食べやすいスパイスカレーですね。スイーツのおすすめも教えてください。

髙橋さん:私の大好きなリンゴが主役になっている「タルトタタン」です。カラメルソースでリンゴを煮込んで、型に入れてからオーブンで焼き上げます。子どもの頃、母が作ってくれていた焼きリンゴをイメージしたもので、リンゴの味がダイレクトに楽しめると思います。

 

 

——こちらも甘過ぎず、とっても食べやすいです。「時々カフェ」をはじめてみて、いかがですか?

髙橋さん:埼玉から新潟までの移動は大変ですけど、待っていてくださる方がいるので励みになります。お友達や地元の方々も応援してくれますし、本当にありがたいですね。お店のなかでお客様同士の出会いがあったり、つながりができたりするのもよく目にします。そんな場所になれることは素敵なことだって思いますね。ときどきお店の中に両親を感じることもあるんですよ。

 

——それって、どういうことですか?

髙橋さん:母の昔の知り合いがたまたま通りかかってお店を見つけてくれたり、両親と仲のよかった近所の方々が懐かしがって立ち寄ってくれたりするんです。そんなときは両親が知り合いを呼んでくれているのかな……なんて感じたりします。

 

——なるほど。この建物にご両親の思いがこもっているのかもしれませんね。

髙橋さん:周辺にも空家が増えてきているから、この「時々カフェ」をやることが、地域を盛り上げることに役立ったら嬉しいです。

 

 

 

時々カフェ

新潟市秋葉区秋葉3-2-14

11:00-17:00

隔週日月曜営業(公式Instagramをご確認ください)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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