「キャンプを楽しみたいけど、遠くまで足を運ぶのがおっくうで……」。そんなふうに考えている新潟市近郊にお住いの皆さん、「新潟市 海辺の森キャンプ場」をご存知でしょうか。 北区の島見浜にあるキャンプ場で、広い敷地には32区画ものテントサイトがあり設備も充実しているのですが、まだまだ知っている人は少ないのだとか。秋晴れの空の下で清々しい緑に囲まれながら、キャンプ場を管理している「NPO法人 森の会」の関本さんに、キャンプ場に寄せる思いを聞いてきました。
Rhea.company/NPO法人森の会
関本 圭佑 Keisuke Sekimoto
1981年新潟市中央区生まれ。サラリーマンとして製造業界で働いた後、WEBデザイン会社や一級建築士事務所「Rhea.company(レアカンパニー)」を起業。「NPO法人 森の会」の理事長就任を機に、2023年より「新潟市 海辺の森キャンプ場」の管理運営に携わる。趣味は流木アートと18歳から続けているサーフィン。
——「新潟市 海辺の森キャンプ場」は、どこが管理運営しているんですか?
関本さん:僕が理事長を務めている「NPO法人 森の会」が指定管理者として、管理運営を任されています。
——「NPO法人 森の会」というのは、どんな団体なんでしょうか?
関本さん:海辺の森の指定管理や、地元自然環境の整備や保護、子どもたちの自然体験学習を主に行なっている組織です。
——関本さんはもともと自然がお好きだったんですか?
関本さん:子どもの頃から自然のなかで遊ぶことが好きでしたね。その影響で18歳からサーフィンを続けてきました。でも本格的に自然に関心を持ちはじめたのは、サラリーマンとして製造業に携わっていたときだったかもしれません。
——何かきっかけがあったんでしょうか。
関本さん:製品の原料になる木を山や森から伐採していることが、環境破壊につながっているんじゃないかと感じたんですよ。あと「ありがとう」という言葉を人から聞くことがない職場だったので、もっと人と関われるような仕事をしたくて、独立を考えるようになりました。
——それで独立されたんですね。
関本さん:子どもの頃からものを作ることが好きだったので、WEBデザインの会社を立ち上げて、ホームページを作る仕事をはじめたんです。自社のECサイトも作って中国から輸入したアパレル製品を販売していたんですけど、しばらくしてコロナウイルスが蔓延しはじめたんです。しかも発生源といわれる武漢が商品の輸入元だったんですよ。
——うわー、まさに直撃ですね。
関本さん:もともと製品のクオリティに納得いかないところもあったので、それを機に他の事業をはじめてみようと思いました。そこで、貰ってきた建築廃材を使った小物作りをはじめてみたんです。ところがだんだんと手がけるものが大きくなっていって、あげくには知り合いの建築士と一緒に一級建築士事務所を立ち上げて、廃材や古材を使ったリフォームをはじめました。
——廃材を使った小物作りが一級建築士事務所の立ち上げにつながるのって、すごくないですか(笑)
関本さん:そうですね(笑)。建設業をはじめてみて思ったのは、まだ使える材料を廃棄するような効率重視の業界への疑問でした。そんなときに、サーフィンで楽しませてもらっている海への恩返しとして、海岸の一斉清掃をはじめたんです。その活動が認められて「新潟市 海辺の森キャンプ場」に関わっている「CB南浜カンパニー」に所属することになりました。
——「NPO法人 森の会」の理事長になったのは、どんないきさつがあったんでしょう?
関本さん:広大な敷地を持っていて、いろんなポテンシャルを秘めている「新潟市 海辺の森キャンプ場」なのに、利用者が少ないのはもったいないと思ったんです。そこで行政に乗り込んで「僕だったらこうする」という提案をさせてもらったんですよ。そしたら「それじゃあ、仲間に入れてやる」ということで紆余曲折あって「NPO法人 森の会」の理事長に就任することになり、それを機に「新潟市 海辺の森キャンプ場」の管理運営に携わることになりました。
——関本さんはキャンプ場のなかで、どんな仕事をされているんですか?
関本さん:キャンプ場内の維持管理がメインで、ゴミ拾いや草刈りをしています。120ヘクタールも敷地があって除草剤を使うことができないので、草刈りはマジできつい仕事なんですよ(笑)。今年は酷暑で雨不足だったので、毎日のように水撒きに専念していました。
——この広大な敷地を草刈りするのは気が遠くなりますね。他にはどんな仕事を?
関本さん:利用者から回答していただいたアンケートをチェックして、キャンプ場内の改善を行なっています。「日陰が少ない」「座る場所が少ない」というご意見に対応して、グリーンカーテンを作ったり、ベンチを作ったりしているんです。材料にはできるだけ流木や建築廃材を使うようにしていますね。
——どうして流木や建築廃材を使うようにしているんですか?
関本さん:SDGsやサステイナブルといった、人や環境にとって優しい取り組みをしていこうと思っているからです。日本語でいうところの「もったいない」という言葉が「海辺の森キャンプ場」のキーワードになっています。だから建築会社から古材や廃材を集めてきたり、自治体から電信柱をいただいてきたりして材料に使っているんです。
——捨てずに再利用することで、自然環境を守る取り組みをされているんですね。
関本さん:そういうことですね。地元の漁協や農家ともタイアップして、市場に卸さずに廃棄される未利用魚や、規格外品の野菜を使った料理を作ってイベントで振る舞う予定もあります。綺麗で豊かな自然環境を次世代の子どもたちに残してあげられるよう、自分たちのできることをやっていきたいんですよね。
——他にも環境保護の取り組みをされているんですか?
関本さん:キャンプ場の周りには保安林があるんですけど、よくゴミが捨てられているんですよ。地元の人たちが拾うんだけど、またすぐに捨てられるという繰り返しなんです。それではいつまで経ってもイタチごっこが続くと思うんですよ。それでゴミを捨てにくい環境を作ったらどうかと考えて、保安林に流木アートをディスプレイしてみたんです。こころなしかゴミは減って、訪れる人が増えたような気がします。
——こんなにいいところなのに「新潟市 海辺の森キャンプ場」って、あんまり知られていないような気がしますね。
関本さん:残念ながらその通りです。地元でも知らない人がいるくらいですから(笑)。ゴールデンウィークや夏休みシーズンには盛り上がりますけど、その他のシーズンはそれほどでもないんです。特に平日の利用者はほとんどいないといっても過言ではありません。
——じゃあ「Things」を読んでいる人たちにもアピールしておきましょう(笑)
関本さん:「新潟市 海辺の森キャンプ場」はベテランから初心者まで、幅広い方々にご利用いただけるキャンプ場です。特に初心者に優しいキャンプ場だと思います。例えば、手軽にバーベキューを楽しみたい方には「手ぶらでバーベキュー」をオススメしています。器材から食材までこちらでご用意させていただいて、新潟バーベキュー協会のスタッフさんにご協力いただいて調理も行いますので、プロの手によるバーベキューをお気軽に楽しむことができるんです。
——でもお金をかけずに、自分たちでバーベキューを楽しみたい人もいますよね。
関本さん:もちろん「持ち込みバーベキュー」にも対応しています。あと「ドラム缶風呂」を体験できるキャンプ場って少ないかもしれませんね。自分で薪をくべてお風呂を沸かすところから体験していただきます。意外なことに、男性よりも女性が多く体験しているんですよ。あ、もちろん水着は着ていますので(笑)
——やっぱり着てますよね(笑)。それはなかなかできない体験なんじゃないでしょうか。これから新しくはじめる企画はあるんですか?
関本さん:来年以降にはじめる予定の企画はたくさんあるんですよ。「手ぶらでバーベキュー」に続いて「手ぶらでキャンプ」もやってみようと思っています。テントをこちらでご用意して、スタッフの指導で設営していただくセットです。その他、マウンテンバイクやシーカヤックのレンタル、テントサウナも予定しています。
——いろいろな予定があって楽しみですね。
関本さん:イベントもどんどん開催していきたいんですよ。とりあえず今年の11月12日には「海辺の森アートフェスティバル」というイベントを開催します。流木や廃材を活用したアート作品の展示をはじめ、環境や地産地消を意識した出店者によるマルシェ、サステイナブルな素材を使ったワークショップ、キャンプファイヤーをバックに演奏するライブを集めたイベントです。
——へぇ〜、すごく盛り上がりそうなイベントじゃないですか。
関本さん:盛り上がるだけじゃなくて、環境保全活動の意義を知っていただく機会にもしたいので、「海辺の森」を育ててきた僕の師匠・落合誠さんによるシンポジウムも開催する予定なんです。
——楽しみながら学べるイベントになりそうですね。
関本さん:自然環境を守るためには、ひとりひとりが自分のできることをしていくしかないんですよね。特に将来を担う子どもたちには、自然の大切さを伝えていきたいと思っています。自然のなかに身を置くことで、いろいろなことを学んでほしいです。
新潟市 海辺の森キャンプ場
新潟市北区島見町1-135
025-255-3810
9:00-16:00