地元をダンスで盛り上げたい。新潟市西蒲区の「Yallow Dance Studio」
カルチャー
2019.10.31
世界的なコンテストでの受賞歴を持つ夫婦ダンサーが、なぜ新潟で?
新潟市西蒲区のとあるダンススタジオ。そこは国内外のダンスコンテストで数々の受賞歴を持つ、夫婦のダンサーが運営するスタジオです。世界的なコンテストでも受賞歴のあるダンサーが、なぜ西蒲区でダンスを教えているんでしょうか? 今回は「Yallow Dance Studio(ヤロウダンススタジオ)」のTAKASHIさんに、お子さんが生まれたばかりの慌ただしい中、ダンスや地元への思いを聞いてきました。

Yallow Dance Studio
TAKASHI
1977年新潟市西蒲区生まれ。「Yallow Dance Studio」オーナー兼講師。東京を中心に「ZOMBIE KIDS」「YALLOW YELLOW」などのダンスユニットで活動後、新潟に帰郷し2015年に「Yallow Dance Studio」をオープン。メンズレゲエダンサーのソロダンスバトル「DANCEHALL KING 2008」優勝、ジャマイカで開催された「WORLD REGGAE DANCE CHAMPIONSHIP 2013」の世界大会で第2位の成績を残す。その他、SPEED、Hilcrhyme、湘南乃風など多くのアーティストのMV出演、バックダンス、振り付けも経験している。
ダンスは文化として地域に根づいたもの。
——お子さんが生まれたそうで、おめでとうございます。そんな忙しい中、取材にご対応いただきありがとうございます。
TAKASHIさん:ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。
——きれいなスタジオですね。「Yallow Dance Studio」はどんな目的でやっているんですか?
TAKASHIさん:「Yallow Dance Studio」のテーマは「笑顔と健康」です。私が今までやってきたダンスを、人々に広めたいという気持ちがありました。もっと人口の多い中央区でやることも考えましたけど、どうせやるなら自分の地元の西蒲区を盛り上げたいと思ったんですよね。私はこれまでレゲエやヒップホップのダンスをやってきて、それぞれのダンスが文化として地域に根づいているものだってことを学びました。それで地域を大切にしたいという気持ちが強くなり、自分の地元をダンスで活性化したいと思うようになったんです。
——スタジオにはどんなダンスレッスンがあるんですか?
TAKASHIさん:ヒップホップとダンスホールレゲエを中心に、リトミック、オールジャンル、ワック、ライトフィーっていうコースがあります。あと、私の妻が教えるマタニティーヨガ、産後ヨガ、シニアヨガなどもあります。
——ちなみにダンスレッスンはどのような流れで進むんでしょうか?
TAKASHIさん:子どもたちにはレッスンを通して人間的にも成長してほしいと思っているので、最初はみんなで輪になって挨拶するところから始めます。ダンスイベントに参加した後のレッスンでは、そのときの感想や反省などを一人一人発表してもらいます。で、その後レッスンに入ります。全員で基礎的なレッスンをやってからクラス別のレッスン。最後は発表会などに向けて、振り付けを教えて30分間レッスンします。
——発表会もあるんですね。
TAKASHIさん:はい。多目的ホールとかで年1回開催しています。そのほかにも、間瀬海岸で毎年やっている「Sunsetダンスフェスティバルin間瀬」というイベント、「巻まつり」などの地元のイベントにも多く参加しています。イベントでダンスを発表するっていう目標があると、レッスンにも熱が入りますからね。
——なるほど。子どもにダンスを教えるときに気をつけていることってありますか?
TAKASHIさん:基礎トレーニングは単調になりやすいので、子どもたちを飽きさせないように遊び要素を入れています。例えば音楽に合わせてアップダウンしながら鬼ごっこしたり、ゲーム感覚でトレーニングできるよう工夫してるんですよ。それから子どもの目線に立って教えるようにしています。そのために、子どもたちはどんなことが好きなのかいつも意識して考えるようにしています。

きっかけはストリート系だぼだぼファッション?
——TAKASHIさんがダンスを始めたきっかけって何だったんですか?
TAKASHIさん:高校3年生のとき、ストリート系のダボダボしたファッションが流行ってて、私もそんな格好してたんですよ。それを見ていた仲間から「ダンスやってみれば?」って勧められて。ダンスをやってる年下の子にヒップホップダンスの基礎を教わったのが最初です。
——その後、本格的にダンスの道に進むんですか?
TAKASHIさん:そうです。大学進学をきっかけに上京して、大学の仲間とダンスレッスンに通ってみたんです。千葉にある有名ダンサーの教室なんですけど、あまりにレベルが高くてとてもついていけなかったんですよ。一緒に行った仲間は挫折してしまって、私だけはなんとか続けたんです。そしたらだんだん、その教室で知り合った早稲田大学のダンスサークルメンバーとか、クラブ通いをしていたときに知り合った連中とか、ダンスの仲間も増えていって、ダンスについて色々なことを教わりました。
——大学時代にダンスにのめり込んでいった感じなんですね。大学卒業後はどうしたんですか?
TAKASHIさん:フリーターをやりながらダンスを続けていました。そのときに自分たちで立ち上げたヒップホップ中心のダンスチーム「BALDE WIN」が、東京でどかーんとブレイクして有名になっていったんです。その後は「SPEED」「湘南乃風」「lecca」とかのバックダンサーをやらせてもらいました。

ジャマイカのレゲエダンス世界大会で第2位獲得。
——ところでレゲエダンスの世界コンテストに出場した経歴があるそうですね。
TAKASHIさん:東京の代々木公園でおこなわれている「One Love Jamaica Festival」というイベントの中で、2013年にジャマイカで開催された「WORLD REGGAE DANCE CHAMPIONSHIP 2013」の日本予選をやることになったんです。どうしても出場したかったので、一緒にダンスをやりたい人たちに声をかけ、「YALLOW YELLOW」というダンスチームを結成して日本予選に挑んだんです。日本全国から集まった15組の中で優勝することができて、「WORLD REGGAE DANCE CHAMPIONSHIP 2013」の世界大会に進むことになったんですよ。
——すごいじゃないですか!世界大会はいかがでしたか?
TAKASHIさん:世界大会には、フランス、フィンランド、ジャマイカ、日本から15組のダンスチームが集まりました。大会までの間、2週間ほどジャマイカに滞在して、アスリートのような生活を送っていました。大会で私たちが踊るのは夜だと聞いていたので、夜に全力で踊ることができるよう、踊る時間に合わせて生活を調整して過ごしたんです。その甲斐あって第2位に選ばれました。ちなみに優勝したのは日本予選で第2位だったチームで、日本チームがワンツーフィニッシュを飾ったんです。
——ますますすごいですね!大会の盛り上がりはどうでしたか?
TAKASHIさん:世界大会のステージは、今まで踊ったどのステージよりも盛り上がりましたね。何千人もの観客の盛り上がりが段階的に、波のように押し寄せてくるといった感じ。現地のテレビとかから取材されたりして、タクシーに乗ったら運転手さんから「お前らテレビで見たよ」っていわれました(笑)

新潟に帰ってきた理由と現在の活動。
——東京で活躍して世界でも賞を取ったTAKASHIさんは、なぜ新潟に帰ってきたんでしょうか?
TAKASHIさん:35歳を超えたあたりから、都会暮らしに疲れてきたんですよね。とくに満員電車がイヤになってきてしまって…。そんなタイミングで父が病気になったこともあって、新潟に帰ることを決心しました。「住めば都」という感じで、新潟は自然も豊かでのびのびしていて、帰ってきてよかったと思いますね。埼玉出身の妻も新潟に来てよかったと言ってます(笑)
——現在はダンスを教えることだけじゃなく、個人的な活動もしているんでしょうか?
TAKASHIさん:「ZOMBIE KIDS」という2人組のダンスユニットで活動を続けています。YO-SINというパートナーと組んで、お互いが好きなことをやろうというユニットなんですけど、お互い好きなことが全くちがうんです(笑)。だから私がやりたいレゲエダンス、 YO-SINがやりたいポップダンスをミックスしたダンスユニットになってます。あと「LOCAL SQUAD」というレーベルに所属してアーティストとして歌も歌ってます。
——ダンスだけじゃなくて歌ってもいるんですね。
TAKASHIさん:あと「MaDope(マドゥープ)」というダンスチームもやってます。「マッドでドープなチーム」っていう意味のチーム名で、私と妻、それからレッスン生の中から抜擢したメンバーで結成しました。とにかく自分の好きな人たちとダンスをやりたくて組んだチームになってます。

ポストに投函された匿名の手紙に励まされる。
——今後はどのようにスタジオを展開をしていこうと思っていますか?
TAKASHIさん:じつは年内にスタジオを岩室へ新築移転して、来年早々にレッスンをスタートする予定なんです。地元のシニアの方々にも、ヨガやストレッチといった健康づくりのお手伝いになるようなレッスンを、ワンコインでおこないたいと思ってます。あと、「Yallow Dance Studio」レッスン生のプロデュースも手掛けてみたいと思ってます。
——これからも地元の西蒲区で活動していくんでしょうか?
TAKASHIさん:そのつもりです。ある日、スタジオのポストに直接投函された手紙があったんです。差出人は巻地区に住んでいる足の不自由なお年寄りでした。イベントで「Yallow Dance Studio」の子どもたちのダンスを見て、勇気づけられたということがA4の用紙2枚にわたって書いてありました。それを読んでとっても感激するのと同時に、西蒲区で活動してきたことは、まちがってなかったと強く思ったんです。ですから、これからも西蒲区からダンスで盛り上げていきたいと思っています。

東京のダンスシーンで活躍し、「WORLD REGGAE DANCE CHAMPIONSHIP 2013」の世界大会で第2位に輝く実績を持つダンサーのTAKASHIさん。同じくダンサーやモデルとして活躍してきた奥さんのNACHIさんと共に新潟市の西蒲区に帰郷し、「Yallow Dance Studio」で地元の子どもたちなどにダンスレッスンをおこなっています。その活動がさらに盛り上がり、多くの人たちに元気や感動を与えてくれるのを楽しみにしています。
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