僕らの工場。#16 実用性を大切にする「有限会社椎谷建具店」
僕らの工場。
2020.07.31
「建具」って何のことか知ってた? 建具屋さんに聞いてみた!
夏になって、ハウスメーカーさんや建築会社さんのオープンハウス情報が増えてきました。そこでふと、素朴な疑問が。「大工さんと建具屋さんってどんな違いがあるんだろう?」「そもそも建具って、何のことを指すの?」そこで今回の工場見学は、建具屋さんに決定。創業130年以上の歴史がある「有限会社椎谷建具店」さんにいろいろお話を聞いてきました。

有限会社椎谷建具店
椎谷 俊浩 Shiiya Toshihiro
代表取締役。昭和47年生まれ。既成概念にとらわれずに新しい挑戦を大切にするチャレンジャー。130年以上の歴史ある建具店の技術を引き継ぎ、建具職人としてのあり方を大切にしながら日々ものづくりに取組んでいる。

建具とは、開閉機能を持つ仕切りのこと。大工さんとは使う道具が違います。
ーーいきなりで申し訳ないのですが…。建具屋さんってどんなお仕事をされてるんですか?
椎谷さん:(笑)。一般的には、建具とは開閉機能を持つ仕切りのことをいいます。例えば、玄関だったり、引き戸だったり、間仕切り、障子やふすまなどのことですね。
ーーあ、そうなんですね。大工さんとの違いが分からずモヤモヤしていて…。
椎谷さん:結構分からないって方多いと思いますよ(笑)。大工さんとの違いは、単純に使う道具が違うってことなんですけどね。建具は開けたり閉めたりと毎日稼働するものなので、納まりだったり、機能面であったり、細かな作業だったりと特に丁寧に作らないといけないもので、それが建具職人としての仕事の大事な部分になりますね。あと、うちでは造り付けの家具も仕事としてお作りしています。
ーー道具…なるほど、だからこんなに色々な道具がそろっているんですね。
椎谷さん:細かな作業が大切な仕事なので、道具はすごく大切です。


ーー椎谷建具店さんは創業130年の歴史があるとお聞きしましたが、創業当時について教えて下さい。
椎谷さん:私は婿として入ってきたので、創業当時というのは正確には分かりませんが、明治20年からそういうモノ作りを生業にしている、と聞いています。
ーー明治20年ですか…。ちなみに俊浩さんは以前からこのようなお仕事をされていたのですか?
椎谷さん:いえ、私は前職、飲食店で働いていて、結婚のタイミングでこの仕事に携わることになりました。それが26歳のときなので、今から22年前ですね。
――まったく分からない状態からスタートだったということですね。
椎谷さん:なので、最初はすぐに入社せず、他の建具工場や家具屋さんで修行をさせてもらいました。やるからには本気でやりたかったので、身内ではない環境できちんと経験を積みたかったんです。建具製造業は4年、家具製造業で1年修行をしました。
――自分に厳しいですね。しっかりと勉強をしてから入社されたわけですね。
椎谷さん:そうですね。修行している期間は技術的な習得はもちろんですけど、今後の経営のことも考えながらの視点を持って取組めた期間だったと思います。


デザインと使いやすさのバランス感覚を大切に。
ーー今、経営の視点とおっしゃいましたけど、具体的にはどういうことですか?
椎谷さん:「この会社を継ぐ」という自覚を持っていたので、建具屋の現状と時代を感じながら、と言えばいいのでしょうか。とにかく、私は異業種からの転身ですので、そこらへんを客観的に考えることができましたね。当時はまだ和風建築が多かったので、建具職人の腕の見せ所というのがけっこうありました。でもそのうち洋風の家作りが主流になって既製品でも対応できることが多くなるだろうと。そんな時代変化に対応していかないといけないと当時は考えていましたね。
ーーそのために何か対策を練ったりしたんですか?
椎谷さん:入社してからは、建築家さんやデザイナーさんとのつながりを大切にしました。仕事のほとんどは、デザイン性の高いものへのチャレンジで、既製外の製品が多いので、職人としての固定観念を頭の中からいったん取り除いて、デザインへの共感を大切にして取組みました。当時は、本当に尖ってるな、って思える製品もたくさん作りましたね(笑)。でも原則的に、デザイナーさんの考えは大切にしながらも、建具はやはり実用的でなければならない。と私は考えているので、打合せの段階で意見させていただいて、使いやすさを考慮しながら作らせてもらっています。
ーーきっとそのバランス感覚が、使う人にとってはすごくありがたいんですよね。
椎谷さん:建具は開いたり閉めたりと一番稼働が多いものなので、丈夫で長く使えるものでなければお客さんは喜びませんからね。家はその人にとって一生モノだと思うので、だからこそ使う方に喜んでいただけるものを作り続けたいと思っています。
ーーこれからやってみたいことって、ありますか?
椎谷さん:そうですね、今後も今と変わらず、このスタイルを大切にしたいと思います。それと、私は家具やデザインが好きな人間なので、オリジナルの家具や製品を世の中に出したいなと思っています。建具屋としての技術と、自分の好きなことをどちらも表現できたら面白いだろうな。そんなモノづくりへのチャレンジです。


ちなみに、上の写真は椎谷建具店さんオリジナルのフォトフレーム。チークの古木を使ったインパクトと存在感がすごいです。こちらの商品、今ならオーダーで依頼ができるとのこと。ご興味のある方は是非!!!
有限会社椎谷建具店
新潟市江南区亀田水道町1丁目2番50号
025-381-2833
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