県内最北のクラブ? 村上で音楽カルチャーを地道に育む「UNDER」。
カルチャー
2020.10.10
巨大な自作サウンドシステムがお店の看板。世代を超えて愛される空間に。
村上市のシンボルのひとつ・お城山のふもとの国道7号沿いに、県内最北のクラブかもしれない?「UNDER」(アンダー)というお店があります。店内には、巨大なスピーカーがドドンと鎮座。地元内外のDJやミュージシャンが心地良い音楽をフロアに鳴り響かせ、県北のロードサイドの夜を盛り上げています。若者の多い都市部と比べストリートカルチャーが盛んとはいえない県北の地で地道に営業を続け、このほどお店は8周年を迎えました。お店を切り盛りするUNDERクルーの方々に、お話を伺ってきました。


UNDER
久津美 卓 Suguru Kutsumi
1980年村上市生まれ。UNDER代表。地元で同世代の音楽好きたちと様々な場所で音楽イベントを企画・実行した後、現在の店舗に腰を落ち着けて開業。普段は鉄や木材、漆などを用いて家具やオブジェを制作する作家/職人で、何でも手作りする。お店のメニューにあるカレーの腕前も一級品。

UNDER
山本 剛さん Go Yamamoto
1982年村上市生まれ。10代後半から東京でラッパー、DJとして活動し、3年ほど前に帰郷して加入したUNDERではDJのほか広報・ウェブ周りを担当。DJプレイではヒップホップはもちろんレゲエ、J-POPまで幅広く守備範囲とする。普段はサラリーマン。
スピーカーから内装、インテリアまで、ほぼ全てDIYで誂え。
――さっそくですが、スゴい大きなスピーカーですね…!
山本さん:このスピーカー、サウンドシステムはウチの看板みたいなもので、これを目的に来店してくれる方もたくさんいます。遠くは、以前、イギリスやジンバブエから、はるばる来てくれた方もいました。
久津美さん:これ、自作なんですよ。

――え、マジですか?
久津美さん:マジです(笑)。ほぼ独学で作っていますが、おかげさまで音の評判はかなり良いです。ユニットなどをもうちょっといじりたいんですが、どんなジャンルの曲でも、キレイかつ迫力ある音が出るように作っています。ただ、このスピーカーのポテンシャルを10としたら、普段店内で使う分には0~1位しか出せていないんですよね、音量的に(苦笑)。野外の音楽フェスみたいなシチュエーションで使えば、かなり真価を発揮してくれると思います。レンタルおよび運搬、設置代行も始めますので、お気軽にお問い合わせいただければ。
――もしかして、DJブースとかも自作ですか?
久津美さん:もちろんそうです。あとはバーカウンターとかイス・テーブルの一部、小さい方のスピーカーとかも…当店は2012年9月に開店したんですが、物件自体は前年から借りていて、1年くらいかけて自分たちでDIYでお店を作ったんですよ。
――県内最北のクラブは、DIYで作られたんですね。
久津美さん:あ、ウチは厳密には「クラブ」じゃないんですよ。正確には、音楽を楽しめる飲食店というか、イベントスペースのあるカフェバーですね。
山本さん:実際、かなり本格的なカレーも提供したりしていますしね。生ビールがハートランドなのも、この辺ではかなり珍しいかもしれません。

理想的な環境に定住して開店。メンバーが入れ代わり立ち代わりで店を切り盛り。
――そうなんですね。了解しました。では改めて開店の経緯を教えて下さい。
久津美さん:もともとは地元の音楽好きで集まって、色んな場所を借りて音楽イベントをやっていたんですよ、転々と。ただ、やっぱり音楽がメインのイベントなので、どうしても周囲から騒音の苦情がきちゃうんですよね。それが本当に申し訳ないな、と。でも、今お店にしているこの物件を借りて一回やったとき、初めてといっていいくらい苦情が全くなかったんです。その理由は、まぁお店の周りを見てもらえればすぐ分かると思いますが、民家は一切なく、夜には閉まる小売店がいくつかあるだけで、裏は山。気兼ねなく音楽を鳴らせるので、ならばここに“定住”しちゃおう、ってことになったのがそもそもの開店のきっかけですね。おかげさまで開店以後も、騒音による苦情はありません。
――お店はグループで運営しているのですか?
山本さん:そうです。メンバーは村上市をはじめ下越地区の30~40代の10人なのですが、みんな普段は別の仕事をしていて、都合のつくメンバーが入れ代わり立ち代わりでお店を回している感じですね。音楽はもちろんお酒や料理、ウェブ周り、デザインなどそれぞれの得意分野を運営に活かしています。みんな好きな音楽もけっこう違っていますが、それが互いに良い刺激になっていたりもします。
――店名の由来はなんでしょう?
久津美さん:みんなジャンルはそれぞれ違えど基本的にアンダーグラウンドな音楽が好きなのと、お店がお城山の下にあることをかけて、この店名になりました。自分は本当は、和名というか日本語が良かったんですが、みんなに反対されて(苦笑)。この店名に落ち着きました。

他にクラブカルチャーのない地域で、長く続けてこられた秘訣は。
――失礼ながらクラブカルチャーがほとんどないような地方都市で、長年続けてこられた秘訣のようなものはあるんですか。
久津美さん:メンバーの仲の良さはひとつあるかもしれないですね。不思議なことにこれまで、仲間割れみたいなことは全くありません。それぞれが言いたいことを言い合いながら、それをお店の運営に反映できています。また、お店にかかる経費はしっかりお店の会計で賄っているのもポイントですかね。あとはやっぱり、やり続けることです。ウチもお客さんが増えて軌道に乗ってきたのは、開店後5年くらい経ってからようやくです。
山本さん:今はおかげさまで市外のみならず県外、あるいは国外のDJやバンドの方からも、ここでやりたい、と言ってもらえるようになってきました。以前は同世代、若者がお客さんのメインでしたが、メンバーも歳を重ねるにつれ結婚したり子どもができたりしたこともあって、子どもも連れて来やすいようなイベントをしたり、客層の幅を広げています。夏は、お店の外で縁日のようなデイイベントもやったりしています。
――新型コロナの影響はどうでした?
久津美さん:かなりありますね。春は丸々2カ月くらい休業しましたし。再開後もDJブースにアクリル板を設置したり、フロアにソーシャルディスタンスの目張りをしたり、それなりに対策していますが、来てくれる方々はみなさんこっちがわざわざ言わなくてもしっかり距離をとって楽しんでくれたりするので、日本ってスゴい国だなぁと改めて思っています(笑)
山本さん:コロナ以後は、物販にも力を入れています。オリジナルのTシャツやエコバッグ、バッジなど、ぜひチェックしてほしいですね。

――今後の展望はいかがですか。
久津美さん:本当に、今後はますます幅広い世代の方に来ていただけるような店にしていきたいですね。
山本さん:自分は、特に自分たちより下の世代、若い人にもっと使ってもらえたらいいなと思っています。都会に出ず地元に残った人、また自分のように一旦出て地元に戻ってきた人で、こういうストリートカルチャーが好きな人って決して少なくないと思います。そういう人たちが楽しみながら交流できる場所、音楽を含め地元でストリートカルチャーを発信する場所に、さらになっていけばいいなと思っています。
――例えば、DJをやってみたいけど何をどうすればいいのか分からない、って人にお店で教えたりも?
山本さん:もちろん大歓迎です。ぜひお待ちしております。
――なるほど。本日はありがとうございました。

現在は、好きな音楽などカルチャー関連の情報はインターネットでいくらでもすぐに手に入りますが、かつてはこういう現場に足を運ばないと得られないものでした。むしろサブスクで何でも気軽に聴けちゃうような時代だからこそ、現場でしか得られない交流や時間の価値は高まっているかもしれません。県北の地で音楽愛やクラブカルチャーの現場を守り、育てているUNDERは今後も要チェックです。


〒958-0823 村上市仲間町坂下522-10
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