新潟で活動するミュージシャンを紹介する[Things Music]。今回は、自身が感じた日常と過去を曲にしている、学生シンガーソングライター「山田土筆(やまだつくし)」の登場です。どんな歌を歌い、どんな表現をしているのか、お話を聞いてきました。
山田 土筆 Tsukushi Yamada
2000年新潟市生まれ。白根高校卒業後、国際音楽・ダンス・エンターテイメント専門学校へ入学。現在は研究科へと進み、在籍3年。2020年より本格的に活動をスタートさせ、楽曲をリリース。藤井風、Vaundyなど同世代アーティストからの影響を強く受けている。
――やっぱり、昔から歌うことが好きだったんですか?
土筆さん:中学から高校までは、友達と遊ぶといえばカラオケで。当時はONE OK ROCK(ワンオクロック)や玉置浩二が得意でした。歌うことより、カラオケで遊ぶことの方が好きでしたね。
――でも、土筆さんは今、音楽の専門学校に在籍されていますよね。
土筆さん:僕の父は西区で「関屋 福来亭」というラーメン屋を営んでいます。だから、ずっと店を継ぐことしか頭になかったんですけど、高校3年生になって進路を考えるときに、ふと「自分は音楽が好きなんだよな」って思ったんです。それで、父と夕食を食べているときに何気なく「音楽の専門学校に行きたいかも……」って話してみたら、「いいんじゃないか」って。自分のやりたいことを伝えたら素直に受け入れてくれた父がいたからこそ、音楽の道に進むことができました。
――素敵なお父さんですね。実際に専門学校に進んで、音楽を学びはじめてからはどうでしたか?
土筆さん:いつでも歌える環境で、とても楽しかったです。でも、1年経ったくらいから楽しくなくなってしまって……。
――え? 何かあったんですか?
土筆さん:何かあったというよりは、壁にぶち当たったんですよね。きっと、作曲をしないで人の曲を歌ってばかりいたからだと思います。
――ほう。
土筆さん:歌うことしかしていなかったから、そもそも作曲ができなくて。その姿を見ていた友人が「お前は楽器をやれ、そして曲を作れ」と言ってくれたんです。で、ピアノをはじめてみたら、自分が知らない音楽の世界が広がっていって、また楽しいと思えるようになったんです。
――土筆さんは、いつ頃からシンガーソングライターとして活動をスタートしたんですか?
土筆さん:2020年2月に「山田土筆」として活動をスタートさせました。7月には「紫陽花」という曲をリリースしてAppleMusicなどで配信しています。だから、まだまだ新米なんですよね。
――ふむふむ。「紫陽花」はどんな曲なんですか?
土筆さん:この曲にはポジティブなこと、恋愛のこと、そういう、よく曲にされるような題材はいっさい登場しなくて、ただ「ワタシ」と「ボク」がいて、日々の悶々としている気持ちを歌いました。
――ってことは、ネガティブ要素ばかり?
土筆さん:大きくはそうなりますね。「人生をやめてしまおうか」とか、自分や周りの人たちが感じている心の声を歌いながら、でも最後には救いがあるようにしています。僕自身、過去にいろいろあって、楽しい曲が好きになれないんですよね。だから人生のちょっと深い部分を書きたいし、それで自分にしか歌えない曲を作りたいんです。
――日々感じていること、過去のことを織り交ぜて「山田土筆」の曲はできているってことなんですね。
――過去の経験って……聞いても大丈夫ですか?
土筆さん:何に対しても興味関心が持てなかったこともそうだし、あとは、小学2年生のときに病気で母を亡くしているんです。正直、当時は何が起きたのかをちゃんと理解できていなかったけれど、成長するにつれて、やっぱり母のいない環境はいろいろと辛いものがあって……。
――小学2年生ですか。それは辛い経験をされましたね。
土筆さん:人生の楽しくない部分を経験してきたからこそ、同じような経験や気持ちを持っている人たちに何かを感じてもらえるような曲を作りたいと思えるようになったんです。ただ、自分が経験した母のことは直接的に言葉にしないで、感情だけを違った視点から表現しています。
――実は……このインタビューの前に「紫陽花」を聞いてきました。今のお話を聞いて振り返ってみると……うん、なんだかストンと胸に落ちる部分がたくさんあります。
土筆さん:表現したかったことを感じてもらえているのであれば、嬉しい限りです。聴いてくれて、ありがとうございます。
――それでは最後に、これからの活動について教えてください。
土筆さん:直近だと、6月23日(水)に「CLUB RIVERST(クラブリバースト)」で開催されるライブに出演する予定です。その後はいくつかのライブに出演しますが、来年の3月で卒業になるので、音楽を続ける努力をしていくことが、まずはこの世界へ送り出してくれた父への恩返しだと思っています。それに、ずっと会えていない母にも、「山田土筆」の音楽を届けられるように頑張っていきたいです。……届くといいな。
山田土筆