厳選した各地の牡蠣を楽しめる「フィッシャーマンズ マーケット」。
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2021.07.11
国内のみならず、海外からも産地直送で牡蠣を仕入れている「フィッシャーマンズ マーケット オイスターバー」。牡蠣の奥深さや面白さを追求し続けるオーナーの井上さんに、牡蠣の魅力について話をお聞きしてきました。


フィッシャーマンズ マーケット オイスターバー
井上 倫昭 Tomoaki Inoue
1971年長岡市生まれ。高校卒業後、東京八王子にある調理師専門学校に入学。その後、ホテル、イタリアン、フレンチなど様々な飲食店で経験を積む。好奇心で入ったオイスターバーで牡蠣の奥深さを知り追求が始まる。
素晴らしい食材を追求して、シンプルに調理して提供する。
――オイスターバーをオープンしようと思ったきっかけは何ですか?
井上さん:日本で初めてオイスターバーを開いたお店が五反田にあるんですけど、そこで牡蠣の魅力とか奥深さを知ることになって、いろいろ学ばせてもらったんです。美味しくて栄養価の高い食べ物だから、新潟の人たちにももっと牡蠣の面白さをしってもらいたいって思うようになって、独立をしました。
――以前はどういったところで働かれていたんですか?
井上さん:ホテル、レストラン、イタリアン、フレンチなどいろいろな飲食店で経験を積みました。若い頃から独立願望はずっとあって、「自分で勝負できる分野ってどこなんだろう」ってことを探しながら働いていました。経験を積むにつれて、なにかひとつに特化している方が面白いんじゃないかって思うようになって。お客さんにも分かりやすくて、素晴らしい食材を追求してシンプルな調理で提供できるものを探して、それで最終的に行きついたのが五反田のオイスターバーでした。


――牡蠣に惹かれたのはどうして?
井上さん:最初は好奇心でしたが、一度行ってその奥深さにとりつかれました。オイスターバーは、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、北欧でも盛んなんです。五反田のお店もシーズンになると集客が半端じゃなくて。人々がこれほど取りつかれる「牡蠣」の秘密を知りたくなったんですよね。
――牡蠣の何がそんなに人を惹きつけるのか、と。
井上さん:僕もそうなんですけど、牡蠣が好きな人ってとことん好きじゃないんですか。カキフライを無性に何個も食べたくなることとかありませんか(笑)? なんでそこまで人々を虜にさせるのかって、不思議に思ったんです。
牡蠣が「奇跡の食べもの」と呼ばれる由縁。
――そこから探求が始まるんですね。
井上さん:そうですね。国内や海外の産地に実際に出向いて、生産者さんの声をダイレクトに聞きました。実際にどういう取り組みをしているのか、安全安心な牡蠣をどうやって配送しているのか、そういうところをしっかり見に行きました。そうやって牡蠣に関わっていくうちに、どんどんのめり込んでいくんです。

――井上さんが思う牡蠣の魅力ってどんなところですか?
井上さん:まず「奇跡の食べもの」って言われるくらい栄養素がすごく豊富なんです。亜鉛、鉄分、タウリンとかアンチエイジング、美肌効果、二日酔い防止、成人病予防、免疫力アップにつながるものがたくさん含まれています。
――身体にいい食べものでもあるわけですね。
井上さん:あと面白いなと思ったのが、最近は変わってきてますけど、欧米では昔から生魚ってあまり食べない文化だったんです。でも牡蠣だけは昔から生で食べられてきました。逆に日本のカキフライみたいに火を通して調理されたものの方が少ないんです。
――あ、カキフライは日本独自だったんですね。
井上さん:欧米と日本の牡蠣に対する捉え方も微妙に違っていて。ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、北欧とかでは、小さくて水っぽい牡蠣が出てくるんですよ。すする文化がないので、大きくて実入りのよい白い牡蠣は苦手らしいんですね。味わいとかよりものどごしが重視されているようなんです。鉄分、亜鉛の風味を感じながら喉にツルっと。食べるっていうより、飲むっていう感じですよね。

――日本では大きくて濃厚なのが好まれますよね。
井上さん:それも含めてやっぱり全世界で人々を虜にしている食材ですよね。国内は、北は北海道から南は九州までいろいろな産地を見て回っています。
自分の目で見て「間違いない」と思った生産者さんの牡蠣を仕入れる。
――産地へ出向いたときにどういうところを見るんですか?
井上さん:海の香りとか、出荷するまでの経路とか、生産者さんの情熱だとか、話してみたらこんな人だったとか、そういうところを実際に行って、見たり聞いたり感じたりしたいなって思っています。牡蠣に限りませんけど、生食は安全性が絶対です。実際に行かないとわからないことは山ほどありますね。
――自分の目で見て感じたところからのみ、仕入れているんですね。
井上さん:中間業者に頼んで仕入れを一本化すればラクですし実際にそういうやり方をしているお店もあると思います。その方が牡蠣を安く仕入れられますし、手軽に全国から仕入れられるメリットはあるので、お店を経営していく上ではよい戦略ではあります。でも、僕はあえて生産者さんから直で買いたいと思っています。

――そこまでこだわるのには理由がありますか?
井上さん:中間業者は、ろ過、無菌化された人工海水の水槽を持っていて、全国から仕入れた牡蠣を水槽にいれます。牡蠣は餌の植物プランクトンを摂取するために1日200ℓ以上の海水を出したり吐いたりするんです。そうなると人工海水に入った牡蠣っていうのはその水槽の味が多少ついてしまうんです。これがどういうことかというと、その牡蠣の産地の海の本来の味が薄れてしまうんですよ。
――味が変わっちゃうんですか。
井上さん:僕が産地の生産者さんと会うときは、海水を汲み上げて無菌状態にした水槽を使用しているかっていうところを重要なポイントとして見ています。そうすれば産地の味を損なうことなく送ってもらえるんです。
――味を落とさず、かつ安全に仕入れられるかが重要なんですね。
井上さん:生食用にするには海から上げてそのまま送ればいいってわけではないんですね。産地の海の味を、いかに安全に、信頼する生産者さんから仕入れられるかっていうところにこだわってやっています。それがオイスターバーを経営していく義務ではないかって思っています。

各産地の牡蠣が育った海域の特長で、味が変わる。
――お店では何種類くらいの牡蠣が食べられるんですか?
井上さん:多いときは10種類以上の牡蠣をお出ししています。繁忙期や閑散期があるので、常に10種類お出しできるわけではないですけど。繁忙期には食べ比べをしたいってお客様が多いので、それができるっていうところはひとつの売りになっていますね。
――味って、具体的にどういった違いがあるんですか?
井上さん:リアス式だったり、潮流が入り込んでいるとか海域の特徴とか、塩がぶつかってプランクトンがわきやすい海域なのかとか、そういうところから味が変わってきます。磯の香りが際立ってスッキリしてる味わいだとか、濃厚でぷりぷりしてクリーミーだとか、それぞれよさがあるんです。

――てことは、牡蠣の品種によるものじゃないんですね。
井上さん:牡蠣は大きく分けると「真牡蠣」と「岩牡蠣」があって、冬は真牡蠣で夏は岩牡蠣なんですけど、この違いは食べてわかってもらえると思います。その中でも産地や生産方法によって味は変わってきます。やっぱその海域ならではの美味しさっていうのがありますね。もっと厳密に言うと、同じ生産者さんから10月中旬に仕入れた牡蠣と、初夏に仕入れた牡蠣っていうのもまた味が違います。
――それはなぜなんですか?
井上さん:成長段階によって変わってくるんです。まだ出始めの牡蠣は海の味をダイレクトに受けています。白くてうまみ成分のグリコーゲンが豊富な牡蠣ですね。それがどんどん産卵に向けて成熟していき、その成熟度合で味が変わっていきます。
――牡蠣のシーズンていつなんですか?
井上さん:ゴールデンウィークくらいから種付けが始まって10月中旬くらいから出始めて、シーズン開始です。出始めの牡蠣はフレッシュさが残っていて産地の海の味をダイレクトに味わってもらえますが、逆にグリコーゲンはまだそんなに含まれていないです。
――出始めの魅力はフレッシュさが売りなんですね。
井上さん:12月後半くらいになってくると徐々にグリコーゲンが増えていって、1月~3月くらいになると濃厚さ、さっぱりさ、うまみ成分のバランスがとれてベストになります。4月~6月くらいになってくるともう産卵の準備になってきます。白い部分がだんだんピンクになって筋が入っていって、つつくとトロッと中のグリコーゲンが出てくるんです。それが口の中で噛んだ瞬間にでてくるのですごくクリーミーに感じられるんです。
――おおお、おいしそう。
井上さん:真牡蠣の場合は産卵で中身をすべて出してしまうので、すべて透明になってしまうんですね。そうなると食べてもただしょっぱいだけになってしまって、業界では「ガラス」っていう表現をしたりします。それでシーズンが終わります。
――今の時期はどんな楽しみ方ができますか?
井上さん:北海道は夏にシーズンが始まる真牡蠣もあります。それにかぶせて夏の岩牡蠣も仕入れるので多種多様な牡蠣を楽しんでもらえます。あと南半球っていうのは日本と季節が逆で、オーストラリアやニュージーランドからも仕入れているので、日本とは逆のシーズンのものも楽しんでいただけます。一皿の上に世界中の牡蠣、日本の真牡蠣と岩牡蠣を並べて、食べ比べができますよ。
牡蠣の面白さと魅力を知ってもらいたい。
――すっごく贅沢な食べ比べですね。
井上さん:オープンから2時間だけ、スペシャルプライスで提供しています。土日祝は15:00~17:00の間、火~金曜日は17:00~19:00の間は食べ比べセットがお得ですよ。

――牡蠣以外のメニューもあるんですか?
井上さん:牡蠣を中心とした料理やシーフード料理がメインになってきます。お腹に優しいクラムチャウダーなんかはうちの1番人気になっています。あとは豚肉をベースにして自家製で腸詰している牡蠣のソーセージとかもありますし。野菜は鎌倉や新潟の地場のものを使用しています。見たこともないような珍しい野菜も取り揃えています。健康的で身体に取り入れやすいものを意識してメニュー構成をしています。
――おすすめしたい商品はありますか?
井上さん:好みもあるので一概には言えない部分もありますが、まずは産地の食べ比べをしてみて、その中でお好みのものを見つけてもらえればと。皆さん牡蠣は「海のミルク」っていうのが耳に残っていて、濃厚であれば美味しいと思われている方が多いんです。だから「濃厚なのはこの中でどれですか?」って聞かれることがよくあるんですけど、濃厚なものだけではなくてあっさりとした中でも季節の味も美味しいですし、中からじんわりとでてくる海や磯の香りだとか、そういうそれぞれの特長をもっと感じてもらえたら嬉しいなと思っています。多種多様な牡蠣を揃えているので、牡蠣の魅力は十分にお伝えできるかと思います。


FISHERMAN’S MARKET OYSTER BAR(フィッシャーマンズ マーケット オイスターバー)
新潟市中央区米山1-7-8 1F
025-282-7791
営業時間 火~金/17:00-23:00 LO、土曜、祝日/15:00-23:00 LO、日曜/15:00-22:00 LO
休み 月曜日(祝日が絡む場合変動有り)
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