お医者さんのように植物の悩みを解決する「LL.K.植物診療SHOP」。
その他
2022.02.05
観葉植物や庭木を育てている方であれば、誰でもなにかしらの「植物の悩み」を持ったことがあるのではないでしょうか。「日に日に葉が枯れていく」「時期になっても花が咲かない」など、毎日きちんと世話をしていても植物には予期せぬ症状があらわれることがあります。そんなとき、植物の診断をしてくれるお医者さんのような人がいたらどんなに助かるでしょう。今回ご紹介する「LL.K.植物診療SHOP」は、まさに「お医者さんのよう」に植物のお悩みを解消に導いてくれるお店です。オーナーの小林さんに、いろいろとお話を聞いてきました。

LL.K.植物診療SHOP
小林 雄也 Yuya Kobayashi
1984年新潟市生まれ。巻農業高等学校 造園学科を卒業し、造園業や外構工事、花問屋、農業大学校職員を経験。2010年に独立し、「リトルリーフ小葉」を設立。造園や工事の仕事をする中で、植物についての悩みを解決して欲しいという要望を受け、2021年「LL.K.植物診療SHOP」をオープン。
植物のおもしろさを知り、高校生で起業を決意。
——小林さんは、これまでどんなお仕事をされてきたんでしょう?
小林さん:僕は巻農業高校の造園学科で植物のおもしろさを知って、高校卒業後はインターンシップ先だった造園会社に就職しました。そのときから「起業したい」という気持ちがあったんですね。なので、採用面接では「会社は5年を目処に辞めるつもりです」と言いました。今考えるとちょっと生意気ですよね(笑)。造園会社に4年間務めてから、次は外構工事の会社で2年ほど働いて、その後は花問屋さんで1年間働き、それから新潟県農業大学校の職員としても勤務しました。
——へえ〜、農業大学校にも。
小林さん:造園工事の仕事をしていると、「果樹」について聞かれることが多かったんです。でも、それについて的確に答えられる職人さんはほとんどいませんでした。それで「果樹の分野はぜひとも学んでおきたい」と思いまして。

——高校生のときから起業を目指されていたそうですが、実際に起業されたのは?
小林さん:26歳のときです。造園や外構工事の経験を生かして、軽トラック1台でお庭の手入れをするところからスタートしました。独立する前からいろいろな人脈があって、「うちの庭づくりをやってくれないか」とお声をかけてもらったり、ハウスメーカーさんのお仕事をするようになったり、たちまち忙しくなりました。
——頼もしい職人さんですね!
小林さん:ラッキーなことに、たくさんのことをやらせてもらえる環境にいたんです。庭仕事や外構工事だけでなくて、場合によっては水道や電気設備関係の工事もします。「LL.K.植物診療SHOP」をはじめた今でも、現場に行ったり、打ち合わせに行ったり、落ち着かない日々を過ごしています(笑)

植物の診断をしてくれる頼もしいお店「LL.K.植物診療SHOP」。
——10代のときから計画していた「起業」を、その通りに実現するなんてすごいですね。
小林さん:高校を卒業してから10年を目処に起業したい、と考えていたので、その点では目標を叶えることができました。でも起業したときは、次の目標を見失ってしまったような感じもあったんです。「この先どうしたらいいんだろう」「ただ仕事をこなしていくことが正解なのかな」と迷ってしまって。
——夢、叶っちゃったわけですもんね。
小林さん:それで今度は、起業から10年後を目安にした次の目標を掲げようと思ったんです。それが「植物関係の店舗を持つこと」でした。
——それで「LL.K.植物診療SHOP」が誕生したんですね。こちらは、どんなお店ですか?
小林さん:弱ってしまった植物の診断、観葉植物やグリーン雑貨などの販売、植物の回収をするお店です。対処が可能であれば、病気の植物の治療もしています。
——なぜ植物診断をはじめようと?
小林さん:農業大学校で学んでいたこともあり、一般のお客さまだけでなく、同業者さんからも「この植物がどんな状況なのか教えて」と依頼されることが度々ありました。それに応えていたら「植物の診断を仕事にしたらどうですか」と言われるようになって。そんな声に後押しされるかたちでお店をはじめました。

——なるほど。お店は去年オープンしたそうですね。反響はいかがですか?
小林さん:植物の困りごとを抱えている方が多いことを改めて実感しています。それと自分の中でハッとしたのは、プレゼントなどでもらった植物ほど、それが枯れてしまったとしても「いただきものだから」という理由でなかなか処分できないケースが多いことでした。持ち主の方はおそらく「植物が枯れている」と分かっているんでしょうけれど、人からもらったものは捨てにくいんですね。でも私たちプロから見て「残念ながら、もう枯れています」という判断があると気持ちの整理がつくものなんだな、と。
——実は私もいただいた雪椿の鉢植えについてお伺いしたいことがあるんです。「水をあげるだけで育つから簡単ですよ」と言われていたのですが、葉がすべて落ちてしまって……。
小林さん:それは残念ですね。でも、雪椿を育てたことのある方のほとんどが同じような経験をされていると思いますよ。雪椿は「山の木」なので、山で元気に生きるんです。なので、ご家庭の庭や鉢植えで育てることが難しいんですね。
——やっぱり自宅で育てることには限界があるんですね……。プロの方にそう言っていただいて気持ちの整理ができました。
小林さん:よく「図鑑の通りに草木が育たない」という相談を受けるんですが、図鑑には「基準木を目安にした育て方」が書いてあります。図鑑の通りにならないのは、植物を育てる環境によって、地質や気候が異なるからなんです。例えば、下越は砂が多い地質ですし、中越は砂質土というザラザラとした土が多い、上越は赤土という粘土層、という具合に県内でも場所によって環境が異なります。プロのアドバイスがしっくりくるのは、いろいろなことを判断した上で図鑑とは違う回答が得られるからかもしれませんね。
——ほかにも植物診断をした例を教えてもらいたいです。
小林さん:植物自体は元気でも、ところどころ葉っぱの調子が悪い、というケースがありました。おそらくすでに病気にかかっていた別の植物を切るために使ったハサミが原因なんです。ハサミを介して、植物から植物へ菌が移ってしまったんですね。もう病気は治りませんが、植物自体は元気なので、その植物からふたたび菌が感染しないように区別して管理することをおすすめしました。
——そんなことまでわかるんですか。
小林さん:お客さまが持ってこられた植物を見て、「これは窓辺においてありましたよね。そして、おそらくその窓は出窓なのでは」とお伝えしたら、とても驚かれました(笑)
——う〜ん、すごい。どうやってそんな診断力を得たんですか?
小林さん:この仕事をはじめた頃、先輩から「職人にとって大切なことはなんだと思う?」と聞かれたことがありました。そのときは「腕ですか?」と答えたんですが、そうではなく「耳を鍛えることだ」と教わったんです。植物が何を求めているのか、この土地はどんな環境なのかを察する力を養いなさい、という意味です。その言葉を忘れずに仕事をしてきたと思っています。それと、僕はいろいろなことに疑問を持って「これは何だろう」といつも思っている少年のままなんだと思います(笑)。知識欲というか、なんでも知りたいと思う気持ちが強いんですね。

店舗を持つことは、人と人とが触れ合える場所をつくること。
——ワークショップも開催されているそうですね。
小林さん:今の時代、いくらでもホームページを活用した商売ができますよね。なのでこのお店をはじめるとき、まわりの人からとても反対されました。でも、ネットが普及しているからこそ、人と人が関われる場所として店舗を構える意味があると思いました。ワークショップを開催することは、お店を持つ目的と同じで、参加者同士の関係をつくりたいからなんです。

——最後に、今後やろうと考えていることがあれば教えてください。
小林さん:お年を召したり、怪我をしてしまったりして、お庭を歩くことすら辛くなってしまった方にも植物を身近に感じて欲しいので、屋上緑化やベランダガーデンなどにも取り組みたいと思っています。テーマは「手に取れるような庭づくり」。ワークショップで取り組んでいる「苔テラリウムづくり」もそのテーマの一環です。ちなみに、店舗には販売用の植物を置いていますが、その半分以上は土がなくても生きる観葉植物です。土を使わないので、植え替えの労力が必要ないですし、虫や病気が発生することも少なくて管理がとても楽なんですよ。
——小林さんのような存在、植物を愛する者としてはとても頼もしく感じます。
小林さん:ありがとうございます(笑)。これからの園芸業界をサポートしたいとも思っていて、「日本園芸協会 新潟園芸友の会」を去年の春に発足しました。この教会の会員を増やして、年齢の差を超えて植物を通じたつながりを生みたいと思っています。

LL.K.植物診療SHOP
新潟市西区五十嵐中島5-23-47
TEL: 025-311-7790
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