「ダンスダンスレボリューション」「beatmania(ビートマニア)」「太鼓の達人」といった音楽ゲーム……通称「音ゲー」にハマった人も多いのでは? うまくリズムに乗れたときは快感ですよね。そんな「音ゲー」の聖地が、実は新潟市西蒲区の田園地帯にあることをご存知でしょうか。昨年40周年を迎えた「プレイハウス エリナ」は、全国のマニアの間で「音ゲーの聖地」と呼ばれているゲームセンターなんです。なぜ「音ゲーの聖地」と呼ばれるようになったのか、オーナーの小川さんにお話を聞いてきました。
プレイハウス エリナ
小川 一郎 Ichiro Ogawa
1961年村上市(旧荒川町)生まれ。大学卒業後自動車修理の仕事を経て、1981年に「プレイハウス エリナ」をオープン。40年以上にわたって娯楽を提供し続けてきた。映画鑑賞が趣味で、アラン・ドロン全盛期のフランス映画が好き。
——昨年40周年を迎えたそうですね。おめでとうございます。こちらのゲームセンターは、音ゲーマニアの間で「聖地」と呼ばれているんですよね。
小川さん:音ゲーの台数も他のゲームセンターに負けていませんし、今では珍しい機種もいくつか置いています。私はのめり込むと、とことんやっちゃう性分なんですよね(笑)。以前は「バーチャファイターの聖地」とか「ドライブゲームの聖地」とか呼ばれていた時期もあったんですよ。
——そうなんですね(笑)。そもそも、小川さんはどうしてゲームセンターをはじめようと思ったんですか?
小川さん:僕は大学を卒業してから自動車修理工場で働いていたんですけど、会社勤めよりも自分で商売をやりたいと思っていたので、1981年に思い切って「プレイハウス エリナ」をオープンしました。僕が高校生の頃に登場したインベーダーゲームが瞬く間にブームになって、新しいアーケードゲームが次々とヒットしていた時代だったんです。
——へぇ〜、いきなりゲームセンターの営業をはじめたんですね。
小川さん:運がいいことに、その翌年からバブル景気がはじまりました。当時はテーブルゲームの人気も全盛だったので、どんなゲームを置いていてもお金が入ってくるような時代でしたね。ピーク時にはこの通り沿いに、いくつものゲームセンターが連なったこともありました。
——確かに一時期はゲームセンターブームがありましたよね。でも、いつの間にかゲームセンターの数も減っていったような……。
小川さん:「ファミリーコンピュータ」や「プレイステーション」といった家庭用ゲーム機の普及で、家庭でも手軽にゲームを楽しめるようになったんですよ。それに対抗して、ゲームセンターにはメダルゲーム、UFOキャッチャー、プリクラが次々に登場したんです。家庭では楽しめないアミューズメントを提供してきたんですね。新潟ではうちがいちばん早くプリクラを導入したので、当時はお客様の9割が若い女性だったんです。今からじゃ想像できないことですよね(笑)
——それにしても、今ではゲームセンターを見かけることが少なくなりましたね。
小川さん:スマホゲームが普及したことに加えて、新型コロナの外出自粛でとどめを刺されましたね。みんなが家庭でも楽しめるものを見つけちゃって、外に出ないようになっちゃったんですよ。ゲームメーカーも次々と倒産して、新しいタイトルがまったく出てこない状況になってしまいました。
——そんななかで「プレイハウス エリナ」さんが、音ゲーに力を入れたのはどうしてなんですか?
小川さん:爆音で楽しんだり、ダンスを踊ったりする音ゲーは、一般の家庭ではなかなかできないじゃないですか。人のプレイを見たり自分のプレイを見てもらうことも、家庭では体験できないゲームセンターならではの楽しみだと思ったので、音ゲーに力を入れることにしたんです。
——なるほど。ちなみに、音ゲーは何台くらい揃っているんでしょうか?
小川さん:だいたい40台くらい。お店にあるゲーム機の半分以上が音ゲーになります。なかでも13台ある「beatmania」は日本一の台数を誇っているんです(笑)。その他に、日本に1台しか残っていない機種もいくつかあるんですよ。それをプレイするために北海道や沖縄、海外からもマニアが足を運んでくれます。
——それはすごい。でも、どうして有名になったんでしょうか?
小川さん:「エリナ杯」っていう「ビートマニア」をメインにした音ゲーの大会を開いているんです。プロゲーマーを招いたり、全国トップクラスの選手が参加してくれたおかげで、知名度が広がっていったんです。ついには、こんな田んぼの真ん中にあるゲームセンターが、「音ゲーの聖地」とまで呼ばれるようになってしまいました(笑)
——ゲームセンターを営業する上で、小川さんはどんなことを大切にしているんでしょうか?
小川さん:お客様が安心して快く楽しめるように、ゲーム機のメンテナンスを大切にしています。プレイ中にボタンやレバーが効かなかったりしても、クレームをつけてくるお客様って意外と少ないんです。その代わりメンテナンスの悪い店には二度と来てくれなくなる……。だからお客様より先にチェックして、徹底的にメンテナンスしているんです。
——その成果は出ているんでしょうか?
小川さん:遠くから来てくださったお客様が「ここに来られてよかった」と言ってくれるのを聞くと嬉しいですね。お客様が喜んでくれる姿や笑顔を見ることは、私たちにとって何よりの喜びなんです。
——最後に、小川さんの思うゲームセンターの魅力を教えてください。
小川さん:家庭にはない楽しみを、ゲームセンターでぜひ体験してほしいですね。ひとりで楽しむのもいいんだけど、同じゲームが好きな仲間と腕を競い合ったり、技術を教え合ったりすることで、より楽しみの世界が広がると思いますよ。
——ありがとうございました。ところで「エリナ」っていう店名にはどんな意味があるんですか?
小川さん:「エリナ」っていうのは、私に女の子が生まれたらつけようと思っていた名前なんです。結局男の子しか生まれなかったんですけどね(笑)。マークの女の子がエリナなんですけど、昭和、平成、令和と時代ごとに変わってきて、現在は令和の三代目エリナなんですよ。
ゲームを通して、アミューズメントの移り変わりを見つめてきた小川さん。「プレイハウス エリナ」は、小川さんにとって「エリナ」という名の娘みたいなお店なんでしょうね。これからも多くのファンのため、田んぼのなかの「音ゲーの聖地」を守り続けていただきたいです。
プレイハウス エリナ
新潟市西蒲区津雲田640
0256-82-4541
11:00-24:00
無休