JR津川駅近くの丘の上にある「清川高原」。ここには日帰り温泉施設の他、学生寮やブックカフェがあり、老若男女いろいろな人たちが集まるエリアになっています。そのなかに「風舟(かざふね)」という、コワーキングスペースとブックカフェが一緒になった場所があります。鮮やかに紅葉した樹々に囲まれた「風舟」を訪ね、優しい笑顔のスタッフ・小川さんからお話を聞いてきました。
しごと・まなび場 with ブックカフェ「風舟」
小川 愛媛 Ehime Ogawa
1996年神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部生涯教育学専修卒業。IT系のベンチャー企業で働いた後、2021年に地域おこし協力隊として阿賀町に移住。2022年にオープンした「風舟」のスタッフになる。最近の趣味は人物写真を撮ること。
——阿賀野川の向こう側にはよく行くんですけど、こちら側にはなかなか来る機会がなかったので、ここらへんを「清川高原」と呼ぶことを初めて知りました。しかも温泉まであるとは。
小川さん:「津川温泉」っていうんです。その温泉を利用した「清川高原保養センター」という日帰り温泉もあるんですよ。他にも県外から津川に来ている高校生のための学生寮や、ここ「風舟」があります。すべて「NPO法人 かわみなと」が阿賀町から委託されて管理運営しているんです。
——小川さんは神奈川県のご出身ということですけど、どうして阿賀町にある「風舟」で働くことになったんですか?
小川さん:先輩が関わっていた古本屋さんを訪ねたときに、並んでいる本を見て「自分と趣味が近い」と感じたんです。その本屋さんの空間づくりを担当していた方が、後に「風舟」を立ち上げる西田さんだったんですよ。それ以来親しくなった西田さんから「NPO法人 かわみなと」として「風舟」を立ち上げるという計画を伺ったので、2021年9月に地域おこし協力隊として阿賀町に移住して、2022年1月のオープンに向けての準備やその後の運営に参加させていただくことになりました。
——「風舟」のどんなところに惹かれて、参加を決心したんでしょうか。
小川さん:私はずっと「社会教育」に興味を持っていたので、学生寮の高校生や日帰り温泉を利用する人たちとも幅広く交流できるこの環境だったら、自分のやりたかった「社会教育」に関わることができるかもしれないと感じたんです。
——なるほど。阿賀町に来てみて、どんな印象を持たれました?
小川さん:よそ者に対して閉鎖的な人たちなのかもしれない……と思っていましたが、まったくそんなことはなくて、あたたかい人ばかりでしたね。自然や季節を楽しみながら暮らしている方が多くて、よく野菜や果物のお裾分けをいただいています。私自身、都会で暮らしていたときに比べて自分のペースを守りながら生活できるようになりました。
——改めて「風舟」がどんな場所なのか教えてください。
小川さん:コワーキングスペースとブックカフェが一緒になったスペースです。ブックカフェでは私たちがご用意している本の他に、「緒(いとぐち)」という名の本棚オーナー制度を設けているんですよ。
——「本棚オーナー制度」ってなんですか?
小川さん:本棚の一角を貸し出していて、オーナーさんの好きな本を好きなように並べていただくことができるんです。「風舟」に来た人たちに読んでもらうこともできますし、販売していただくこともできます。
——へ〜、委託販売もしてもらえるんですね。
小川さん:とはいっても売上げの半分はいただきますので、委託販売というほど儲かるものじゃないと思います(笑)。自分の本棚を使って読んでくれる人に向けて自己表現や発信をされて、本を通してコミュニケーションをとっているオーナーさんが多いですね。
——なかには阿賀町にあるお店の本棚もあるようですが……。
小川さん:今後はここの本棚を利用して、阿賀町のお店や企業の紹介もしていこうと思っているんです。ここで知ったお店に足を運んでいただけるように、キックボードの貸し出しも行う予定ですよ。
——町おこしにもひと役買っていくわけですね。それにしても、いろいろなタイプの席があるんですね。
小川さん:そうですね。プライベートな空間を確保するために席同士の距離感やしきりを工夫しています。カップルで来られた方は窓際の席、おひとりの方は静かな2階の席、お子様連れの方はこたつ席というように、お客様のタイプによって選ぶ席も様々です。
——いろいろな席でいろいろな楽しみ方ができるんですね。
小川さん:「ブックカフェ」というと静かに本を読んでいなければならないイメージがあると思うんですけど、お話している人もいるし、お子様が遊んでいたりもするので、そんなに静かな場所というわけではないんです。席が空いていればボードゲーム大会の会場になったりもしますので(笑)
——ボードゲーム大会まで開催されるんですか(笑)
小川さん:今までも古本市や交流会といったイベントを開催していますが、今後はもっと「風舟」の認知度を高めていって多くの人から足を運んでもらいたいので、いろいろなイベントを積極的に開催していきたいと思っています。地元のお店や企業とコラボしたワークショップや地元製品を使ったメニューも増やしていきたいですね。
——「風舟」には、いろいろな可能性が秘められているように感じますね。
小川さん:学校や職場だけでは息が詰まってしまう人が一日中過ごしたり、いろんな話をしてくれたりするんです。そんな子たちを含めて、いろいろな人たちが「その人らしく息ができる場所」になれたらいいなと思っています。
しごと・まなび場 with ブックカフェ「風舟」
東蒲原郡阿賀町京ノ瀬4851 探求の森交流館
090-5534-1127
13:00-18:00(土日祝日は10:00-19:00、12月-3月は11:00-18:00)
火水曜休