新潟市北区には県内最大の「潟」である「福島潟」があります。雄大な五頭連峰を映した湖面には、ところどころにヨシ原(よしはら)が点在し、たくさんの水鳥が遊ぶパノラマが広がっています。夏の水面に大きな葉を広げる「オニバス」、冬に渡ってくる国の天然記念物「オオヒシクイ」といった貴重な動植物も多く生息していて、渡ってくる「オオヒシクイ」の数では日本一を誇っているんだとか。そんな「福島潟」の魅力を伝える情報発信施設水の駅「ビュー福島潟」に「レンジャー」と呼ばれる方々がいます。今回は「レンジャー」の赤井さんに、福島潟の魅力やオススメスポットを聞いてきました。
水の駅「ビュー福島潟」
赤井 麻奈美 Manami Akai
1992年新潟市江南区生まれ。新潟青陵短期大学卒業後、飲食業を経て2019年に水の駅「ビュー福島潟」に就職。「レンジャー」として園地管理やガイドを担当している。夏はソフトテニス、冬はスノーボードを毎週楽しむアクティブな女性。
——今日はよろしくお願いします。いきなりですけど、赤井さんがやっている「レンジャー」って、どんなお仕事なんですか?
赤井さん:「自然指導員」とも呼ばれていて、福島潟周辺の園地管理や来館者へのガイドを担当しています。よく団体見学に来た小学生からテレビの戦隊ヒーローと間違えられて「お姉さんは何レンジャーなの?」って聞かれることがあるんですけど、「名前が赤井だからアカレンジャーかな」なんて答えているんです(笑)
——リーダーじゃないですか(笑)
赤井さん:「アカレンジャー」なんですけど、まだまだペーペー(新米)なんです。4年前に水の駅「ビュー福島潟」に「自然指導員」として入社して、最初の頃は福島潟どころか自然に対する知識がまったくなかったんですよ。「鳥は鳥、虫は虫、草は……雑草」みたいな感じで(笑)
——めっちゃアバウト(笑)。じゃあ相当勉強されたんじゃないですか?
赤井さん:そうですね。最初は園地管理だけ担当していたので、トラクターに乗って土を耕したり、草刈りや木の枝の剪定作業に従事していました。そうした作業のなかで自然と触れ合い、野鳥や植物の名前を学んでいったんですよ。知らない草花や生き物を見つけたら写真を撮っておいて、あとで調べたりしていました。
——こんなに広い福島潟の管理をするのって、めちゃめちゃ大変そうですよね。
赤井さん:草刈りがいちばんキツいですね。でも、きれいになった福島潟を見ると達成感があるし、訪れた方から「ありがとう」って感謝されると疲れも吹っ飛びます。
——レンジャーの方々の努力で福島潟の美しい環境が保たれているんですね。
赤井さん:私たちも頑張っていますけど、地元の方々との連携で美しい環境が保たれているんです。福島潟に長く親しんできた地元の方々の愛を感じますね。もっと園地の管理を徹底したいという思いはありますが、レンジャーの人数も限られているので作業できない日もあるんです。安全で、訪れた方々が過ごしやすい環境を保てるよう努めていきたいですね。
——レンジャーとして館内や福島潟のガイドもやっているんですよね。案内をする上で気をつけていることってあるんですか?
赤井さん:小学生を案内する際は、相手に合わせたわかりやすい伝え方を心掛けています。同じ小学生でも、低学年と高学年では知識に大きな差があるんですよ。先日も小学4年生を相手に案内したんですけど、「再利用」という言葉を使ってしまったら伝わらなかったんです。
——そういう場合はどうするんですか?
赤井さん:例えば「生態系」という言葉を使うときは「生き物がお互いに関わりあって暮らしている環境」というように、言葉の選び方や伝え方をわかりやすく変えるように気をつけています。ときどきどんな言葉に変換したらいいのか思いつかないことがあって、気まずい沈黙が訪れてしまうこともあります(笑)
——そういう意味では、大人を相手にするよりも手ごわいですね。
赤井さん:大人とは違った目線の意表をついた質問をしてくることもあるし、納得いくまで質問の手を緩めませんので、最後には答えられなくなることもあるんですよ。そのたびに私も改めて勉強させてもらっています。
——本当に手ごわい(笑)
赤井さん:でも案内したことが相手にしっかり伝わって、「今まで知らなかったけど、面白いことを知ることができた」と喜んでいただけたら嬉しいですね。逆に「結局なんだったの?」っていう反応だと凹みます(笑)
——水の駅「ビュー福島潟」の展示で、赤井さんイチ推しのものがあったら教えてください。
赤井さん:4階にある「映像展示室」では、福島潟に設置された「潟カメラ」をレンジャーが操作して、カメラに映し出された映像を解説する案内が、11時30分と14時30分の2回実施されるんです。日によって会える野鳥が違いますし、レンジャーによっても案内に個性がありますから、興味のある方は立ち寄ってみていただきたいですね。
——面白そうですね。他にもオススメはありますか?
赤井さん:展示とは違うんですけど、屋上からの景色はオススメです。越後平野を丸ごと眺めることができますし、四季によって眺めが変わるのも魅力なんですよ。なんなら月ごとで眺めが変わるので、当館にお越しの際は眺めてみていただきたいですね。
——9月に開催される「福島潟自然文化祭」では、LEDライトで描かれた大ヒシクイの地上絵「雁迎灯(かんげいび)」を眺めることもできるんですよね。
赤井さん:以前はキャンドルだったので当日しか見ることができなかったんですけど、LEDライトに変更されたことで5日間お楽しみいただけるようになったんです。
——それはありがたいですね。福島潟の穴場スポットも教えていただきたいんですが……。
赤井さん:少し奥に入っていただくと「自然学習園の池」があるんです。そこでは四季折々の花を見ることができるんですよ。春には準絶滅危惧種に指定されている「サワオグルマ」の黄色い花が満開になりますし、夏はハス、秋はタデ科の植物、冬はハクチョウを見ることができます。
——なかなかそこまで足を踏み入れることは少ないかもしれませんね。あと福島潟といえば水鳥の宝庫ですけど、やっぱりオススメは「オオヒシクイ」でしょうか。
赤井さん:そうですね。実は今日「オオヒシクイ」が今年初めて福島潟に飛来してきたのを観測したそうです。本格的な見頃を迎えるのは11月に入ってからになりますね。日の出前に「雁晴れ舎(がんばれしゃ)」から福島潟を眺めると会うことができますよ。
——へぇ〜、ぜひ一度会ってみたいですね。赤井さんが個人的にオススメしたい野鳥はいるんですか?
赤井さん:私の推し鳥は「ヨシゴイ」です。「ヨシ原の忍者」とも呼ばれていて、首を伸ばしてヨシに擬態する鳥なんですよ。擬態しているつもりなんだけど、周りから見るとバレバレなのが間抜けで可愛いんです(笑)
——最後に赤井さんが思う福島潟の魅力を教えてください。
赤井さん:野鳥が220種類以上、植物が440種類以上、虫にいたっては900種類以上が生息していて、ここまで葦が生えている潟は全国的にも珍しいと思います。数多くの生き物が暮らしている、豊かな自然が福島潟の魅力だと思いますね。
——ずっと気になっていたんですけど、赤井さんが抱いている鳥は「オオヒシクイ」ですか?
赤井さん:これは「オオヒシクイ」をモチーフにした水の駅「ビュー福島潟」のマスコットキャラクター「クイクイ」です(笑)。どこかで会ったら仲良くしてあげてくださいね。
水の駅「ビュー福島潟」
新潟市北区前新田乙493
025-387-1491
9:00-17:00
月曜休