Things

風光明媚の内側へ。笹川流れで満喫する「シーカヤック」体験ツアー。

ガイドは20代にして本州と北海道を一周した末に笹川流れを選んだカヤッカー。

県北の景勝地・笹川流れの澄み切った碧い海と荘厳な奇岩の数々を、シーカヤックによるツアーでさらに楽しめるようになったことをご存知でしょうか。同地に今春「笹川流れカヤックセンター」を立ち上げたのは、神奈川県出身のカヤックガイド・飯山達哉さん。飯山さんはなんと、まだ20代の若さながらカヤックで本州と北海道をそれぞれ一周した末、各地の数ある海岸の中から笹川流れを独立開業の地に選んだそうです。文字通り全国の津々浦々を経験した上で笹川流れに腰を据えた飯山さんに、この場所を選んだ理由から開業までの経緯、カヤックの魅力、本州・北海道一周時の興味深いエピソードまで、さまざま伺ってきました。

 

 

笹川流れカヤックセンター

飯山 達哉 Tatsuya Iiyama

1991年神奈川県小田原市生まれ。18歳のときに北海道・知床で初めてカヤックを体験し、その虜に。神奈川県・葉山の専門スクールで技術や知識を学び北海道・小樽でツアーガイドとして修業したのち、単独でカヤックによる本州一周を敢行し11ヶ月かけて達成。その後は北海道一周にも成功し、「モンベル」のカヤック販売員兼インストラクターを経て、村上市の笹川流れでガイドとして独立開業した。電気工学の高専出身で車やオーディオにも造詣が深く、修理・改造もお手のもの。

 

未経験者大歓迎。天候や要望、技能に応じて目的地・楽しみ方を柔軟に設定

――本日はよろしくお願いします。さっそくですが、こちらではどんなことができるんですか?

飯山さん:笹川流れの美しい景観の中を、カヤックに乗って楽しむことができます。今のところ午前と午後に各1回、3時間半ほどの半日ツアーのみですが、今後は1日ツアーやサンセットツアーもできたらいいなと考えています。

 

――カヤック未経験でもOKなのでしょうか?

飯山さん:大丈夫ですよ。むしろ大歓迎です。まず初めに浜で漕ぎ方などの講習をやって、手前の浅いところで実際に乗ってみてから沖の方へ出発します。2人乗りで私と一緒に乗っていただいても十分に楽しめますし、1人乗りでも個々に合わせた艇を選び、道中も私が常にサポートします。参加者の技能や要望、また当日の天候、海の状態などに応じて、目的の場所や楽しみ方を随時柔軟に変えていけます。それがガイドとしての腕の見せ所ですし。

 

――カヤックだからこそ感じられる、他にはない笹川流れの魅力ってどのへんにあるんですか?

飯山さん:まず何といっても、この美しい海や浜、岩場・洞窟の織り成す景観を海側から全身で体験できることでしょうか。これだけ岩がそこかしこにそり立ちながら、カヤックを着けられる浜もあちこちにあるのは、全国でもなかなかないと思います。陸からは降りられない、カヤックでしか行けない浜もありますし。また、初心者が安全に楽しめる且つ経験者が技能を高められるフィールドであるという点も大きいですね。これは、私がこの笹川流れを開業の地に選んだ理由のひとつでもあります。

 

単独で本州と北海道をぐるり。気に入った場所を見つけ移住・開業するつもりで。

――飯山さんはこちらに移住して開業する前に、カヤックで本州と北海道をそれぞれ一周したとか…本当ですか?

飯山さん:しましたよ(笑)。カヤッカーとしていつかやりたいと思っていたことがもちろん一番の動機ですが、ガイドとして独立しようと考えていたので、気に入った場所があったらそこに移住して開業するつもりもあって。

 

――すごいですね…どのくらいかかったんですか?

飯山さん:本州は2017年の5月、25歳のときに地元の小田原から出発して、本州を反時計回りに進み、翌2018年の3月に無事小田原に帰還しました。約11ヶ月ですね。北海道一周はそのすぐ後、6~9月の4ヶ月間の旅でした。

 

 

――道中はどんな感じなんですか?

飯山さん:基本的には海岸に沿って漕ぎ進み、ちょうどいい場所があったらそこにテントを張って野営する感じです。1日で進めるのはだいたい30~60kmくらいです。もちろん行き当たりばったりというわけでもなく、出発前に1年位かけて入念に計画を立て準備しました。地図は200枚くらい作っていって、毎日それを膝の上に貼って見ながら漕いでいました。食事は基本自炊で、米、味噌、卵を常備し、切らしたら海岸から近いコンビニやスーパー、ドラッグストアで買って補充する、という感じです。ビタミン補給で、近くに生えている草を食べたりもしましたね。地元の人に美味しい草が生えているところを訊いたりして。北海道で食べたオイスターリーフは絶品でした(笑)。その名の通りカキの味がするんです。イタリアンでは高級食材のひとつみたいです。

 

――豪勢な食事ですね(笑)。冒険の醍醐味。

飯山さん:とはいえ、スマホも持っていって、普通に家族や友人と連絡とったり、ネットでニュースを見たりしていたので、情報面では日常生活とあまり変わらないというか、社会と隔絶している感じはなかったですね。帰還しても浦島太郎のようにはなりませんでした(笑)。今は妻になりましたが、彼女とも連絡を取り合って、到着予定の浜に来てもらって合流したりしていたし。

 

 

――それはそれは(笑)。危険な目に遭ったりは?

飯山さん:もちろんありました。例えば…出発してすぐ、千葉の外房を漕いでいる時、8時間くらい3m級の波に揺られ続けたことがありましたね。ひっくり返るリスクはもちろんですが、何時間もエレベーターに乗り続けているような気持悪さが…。また岩手沖では濃霧に遭遇し、カヤックの先端さえかすんで見えないほどでした。あの時はコンパスと、かすかに聞こえる岸に打ち付ける波の音だけを頼りに、なんとか岸に辿り着き事なきを得ました。また冬は愛知、三重、静岡あたりを漕いでいましたが、とにかく寒かったです。北風もあってあまり進めず、ゴール目前でいつになったら着けるのか不安になりました。でもピンチの時こそ、五感をフル活用するカヤックの醍醐味が味わえるので、正直面白くてしょうがなかったですね。

 

――さすがですね…。ところで北海道一周時、クマに遭遇したりは?

飯山さん:ありましたよ。ヒグマと5mくらいの距離まで近づいたこともありました。

 

――ヒエッ…大丈夫でした? 大丈夫だったから今ここにいらっしゃるんでしょうけど。

飯山さん:(笑)。こちらが何もしなければクマも何もしてきません。遠ざかるのをじっと待っていました。北海道はクマの管理がすごく進んでいるらしくて、人間や人間の食事の味を覚えたクマはすぐに駆除され、残っているのは人間の味を知らない、襲ってこないクマがほとんどだそうです。

 

――それにしてもですね…無事でよかったです。

 

初体験で世界が一変。会社を辞めて修業、そして本州一周へ

――それほどまでにのめり込んだカヤックを始めたそもそものきっかけは何ですか?

飯山さん:冒険は小さいときから好きで、もともとは自転車のツーリングが趣味だったんです。中学を卒業して高専に進学する前の春休みを利用して、小田原から祖母の家がある広島まで自転車で旅をしたのが初体験です。親を説得するため、綿密な計画を作成してプレゼンして(笑)、ロードレーサーを買ってもらって。もちろんうまくいかないこともありましたが、逆にそのままならなさを乗り越えていく快感に目覚めて。高専に入った後も、寿司屋でアルバイトしながらお金を貯めて、長期の休みになる度に日本各地へツーリングに出掛けていました。カヤックと出合ったのも3年生の夏休み、自転車で北海道を一周している時です。知床で泊まったユースホステルにカヤック体験ツアーの案内があって。面白そうだったので、5,000円という当時の私にはかなり痛い出費でしたが、参加してみることにしたんです。そしたら、それまでの世界が一変するくらいの感覚があって。

 

――どんなところが?

飯山さん:自転車と違って道も標識もない水上を、自分の感覚だけを頼りに進んでいく自由さ、ですかね。一発でハマりました。ずっとやっていたい、って。とはいえ、本格的に始めるには先立つものが学生の自分には心許なかったので、一定の収入を得られるようになってからにしよう、と。それで卒業後は一般企業に就職したんですけど、それからいつの間にかキャンプにハマっちゃいまして。就職後の2年は、週末は車にキャンプ道具を積んだまま出勤して、退勤後そのままキャンプ場に行ってキャンプして、月曜はキャンプ場からそのまま出勤するような生活をしていました(笑)。

 

――なかなかですね。そこからまたカヤックに戻れたんですか?

飯山さん:本栖湖畔でキャンプをしていた時、目の前の湖をカヤックがスーッと通っていったんです。それで、自分はこんなことしている場合じゃなかったな、と。それで翌週にはもうカヤックを買いに行って、さっそく海に出てみたんですが、もちろん何の知識も技術もないので「あ、これ死ぬな」って(苦笑)。ちゃんと教わらなきゃと思って、葉山にある専門のスクールに通い、技術や知識を学びました。学んでいくうちに、知床での初体験の時から心の底に芽生えていた「これを仕事にしたい」という思いが強まっていって、通って1年が経ったころには会社を退職し、ツアーガイドの見習いとして北海道の小樽へ修業に行きました。

 

――急展開。そこから本州・北海道一周までの経緯は?

飯山さん:長旅に出るなら、修業と独立の間しかチャンスがありません。開業したら長く空けられませんし。修業1年目を経て「やれそうだな」という手応えは得られたので、2年目は働きながら、先に述べた準備期間に充てました。また冬期はカヤックの仕事がないので、地元に戻って自動車製造工場で働いてお金も貯めて。

 

条件の揃った笹川流れで、自分が味わったような感動を多くの人へ。

――本州と北海道の津々浦々を実際にカヤックで訪れた上で、笹川流れを独立開業の地に選んだ理由を詳しく教えてください。

飯山さん:端的に言えば、様々な条件のバランスが最も良かったことです。景観の美しさはもちろんですが、最初に話したように、このフィールドには初心者も経験者も楽しめる懐の深さがあります。また観光地のため人が来やすいというか、アクセスが比較的容易な割には自然を満喫できる場所でもあります。もともと開業するなら、自分が18歳のときに知床で体験したような、世界がひっくり返るような感覚をぜひ一人でも多くの方に味わってもらえるようなツアーをしたいと考えていたので、笹川流れはそれにぴったりの場所でした。また、ビジネス的な観点というほどでもないですが、山形沖からこっちの方まではカヤックツアーの空白地帯であったこともここを選んだ理由のひとつです。

 

――本州一周で実際にここにも訪れているわけですもんね。

飯山さん:そうですね。ここらへんにはちょうど夏あたりに着いたんですが、すぐに気に入って1週間くらい滞在しちゃいました。もう物件探したりなんかして(笑)。以後は北海道も含め、行く先々を笹川流れと比較検討するような旅になりました。結果、ここに勝るところはなく、戻ってからはモンベルでカヤックのインストラクター兼販売員として働きながら、本格的に移住と開業の準備を進めました。

 

――こちらのカヤックセンターは場所も設備も初めからそうだったとしか思えないような感じがしますが、どうやって見つけたのですか?

飯山さん:最初はグーグルマップのストリートビューで不動産屋さんの張り紙を見たりして探していたのですが(笑)、こちらに足を運んで調べたりしているうちに仲良くなった村上市役所の職員の方に紹介してもらって。もともとは酒造会社の保養施設だったとのことです。現在の所有者の方は笹川流れで遊覧船をやられている方で、そちらで働かせてもらいながら借りられることになったので、2019年の春に設備を整えるため半移住してきました。

 

 

――もしかして…この施設も自分で改修したんですか?

飯山さん:エントランスやカウンター、シャワー設備の一部、ストーブの下床部などはそうですね。自由にいじっても構わないとのことだったので。今後は庭ももっと整えたいと思っています。テントを張ったりBBQができたりするようなスペースにしたいです。

 

――すごい…何でもやっちゃうんですね。ゆくゆくは宿泊施設としても活用したり?

飯山さん:いえ、それは考えていません。笹川流れにはすでに民宿がたくさんあるので。あくまでカヤックを中心としたサービスを提供していくつもりです。今後は体験ツアーの充実はもちろん、カヤックの販売や所有者向けの保管サービスなども手掛けていければと思っています。またそれだけでなく、水上レジャーに携わる者として、地元の海の安全意識の向上にも貢献していければと考えています。

 

――以前からアウトドアブームですが、今般の新型コロナ感染拡大の影響で更に屋外アクティビティの人気に拍車がかかっている面もありますね。

飯山さん:この機会に自然へ目を向ける動きは確かにありますね。キャンプを入り口に、様々なアクテビティへと乗り出そうという人も増えていると思います。ぜひカヤックにも関心を向けてもらい、一人でも多くの方にその楽しさを味わってもらいたいと思っています。

 

 

取材時、実際に半日ツアーを体験させてもらいました。当日は少し風がありましたが、 写真にある通り快晴で、海も穏やか。飯山さんの優しいリードもあって、未経験でも存分にカヤックの楽しさと笹川流れの魅力を満喫することができました。帰着時は正直、カヤックから降りたくなかったくらいです。飯山さんの言う通り、車でも電車でもある程度アクセスしやすい場所(センターは桑川駅から徒歩数分)にこれほど本格的に自然を楽しめるレジャーがあるのは貴重かもしれません。みなさんもぜひ、風光明媚な自然の中をカヤックで泳ぐ心地よさ、恍惚感を味わってみてはいかがでしょうか。

 

 

半日ツアー(午前の部8:30-12:00 午後の部13:00→16:30)

大人6,000yen 子ども3,000yen

犬連れ参加可(犬用ライフジャケット貸出500yen)

無料レンタル:ライフジャケット、シューズ、帽子

有料レンタル:Tシャツ、短パン、タイツ、パドリングウェア

営業期間 :4-10月

 

笹川流れカヤックセンター

〒959-3665

村上市桑川936-1

予約TEL080-8097-9035

  • She
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード


TOP