日本料理やお寿司のお店には、敷居が高そうで入りにくいところも多いですよね。でも、ほとんどのお店の方は、もっと気軽に立ち寄ってほしいと思っているものです。今回紹介する「鮨家むらさき」の店主・池田さんもそのひとり。お店を訪ねて、いろいろなお話を聞いてきました。
鮨家むらさき
池田 征史 Masashi Ikeda
1981年新潟市西区生まれ。新潟や東京の寿司店で修業を重ね、2016年に独立して「鮨家むらさき」を開業する。読書が趣味でハードボイルド小説をよく読む。
——敷居の高いお店かと思ったんですけど、中に入ってみたら意外とアットホームな雰囲気なんですね。
池田さん:「敷居が高くて入りにくい」と言われることが多いんですけど、気軽にお寿司を楽しんでほしいという思いで営業している店なんですよ。常連のお客様は居酒屋のような気軽さでお酒やお寿司を楽しんでくれています。
——池田さんが寿司職人になったのは、何がきっかけだったんですか?
池田さん:僕が就職活動をしていたのは「就職氷河期」といわれていていた頃だったので、なかなか就職先を見つけるのが難しかったんです。そんなときに父親が働いていた回転寿司グループの社長から誘われて、寿司職人として働くことになりました。
——お父さんも寿司職人だったんですね。修業はいかがでした?
池田さん:今では考えられないと思うんですけど、とても厳しい職場でしたね。仕事も優しく丁寧に教えてくれるわけじゃなく、先輩の仕事を見ながら覚えなければならなかったんです。同じことを何度も聞いたら叩かれますから必死に覚えました。辛くて辞めることばっかり考えていましたけど、おかげで寿司の基本はもちろん、根性が身についたんじゃないかな。
——それはキツいですね……。その環境でどれくらい働いていたんですか?
池田さん:ありがたいことに、半年くらいでグループ内の別の店へ異動になったんです。次の店では親ほど歳の離れた方々と一緒に働くことになったので、何でも好きなようにやらせていただきました。前の店と比べたら天国と地獄ほどの差を味わいましたね(笑)
——お店によってまったく雰囲気が変わってくるんですね。そのグループには長く勤めていたんでしょうか?
池田さん:5年くらい勤めていました。その後は東京で暮らしていましたが、30歳を前に新潟へ戻ってきたんです。その頃父親は以前とは違う回転寿司店で働いていたんですけど、「手が足りない」と誘われて僕も手伝うことになりました。ただ、独立したいという思いがあったので、独立に向けての勉強もさせてもらったんですよ。
——「鮨家むらさき」をはじめるにあたって、どんなお店にしようと思ったんでしょうか?
池田さん:東京から新潟に帰ってきて強く感じたのは、時間の流れがゆっくりしている心地よさだったので、ゆったりと食事が楽しめる店にしようと思いました。ですからカウンターはもちろん、テーブル、小上がり……すべての席を広めに作ってあるんですよ。
——そう言われてみると、ゆったりした席になっていますね。店名の「むらさき」って醤油のことですか?
池田さん:そうです。寿司屋っぽい店名候補を色々考えていたんですけど、時間切れになったので「鮨家むらさき」にしたんです(笑)。だからというわけじゃないけど、醤油にはこだわっているんですよ。
——どんなこだわりがあるんですか?
池田さん:ひと口めにしょっぱく感じる醤油が多いんですけど、僕はそれが苦手だったので、まろやかな口当たりのオリジナルだし醤油を使っています。この醤油は、うちのシャリに合うよう作っているんですよ。
——シャリにも特徴があるんでしょうか?
池田さん:僕は東京で修業をしてきたので、新潟産のコシヒカリは粘りが強過ぎて扱いにくさを感じたんです。でも旨みは残したかったので、上越産の寿司専用米とブレンドすることでいいとこ取りをしています。
——なるほど。そうしたこだわりで作られたお寿司やお料理で、イチ押しのものがあったら教えてください。
池田さん:まずは1日10食限定で提供している「むらさき丼」ですね。中トロ、ウニ、イクラをたっぷりと乗せた海鮮丼を、とってもリーズナブルに楽しむことができるんです。コロナ禍でお客様が減ったことから、目玉になるメニューを作りたくて考えたんですけど、このむらさき丼のおかげで以前よりも若いお客様が増えましたね。
——豪華なネタばかり乗っている海鮮丼なのに、リーズナブルな値段で食べられるんですね。他にもおすすめはありますか?
池田さん:あとは「新潟のどぐろひつまぶし」ですね。「のどぐろ丼」として味わっていただいた後、だし汁をかけて「のどぐろ茶漬け」としてもお楽しみいただける、二度美味しい料理なんです。コロナ禍が落ち着いて県外のお客様が増えたら、のどぐろのリクエストを多くいただくようになったので、より美味しく楽しんでいただこうと考えたのがこのメニューなんです。
——これは贅沢な料理ですね。最後に今後やってみようと思っていることはあるんでしょうか?
池田さん:台湾をはじめ海外からのお客様も増えてきたので、インバウンドへの対応に取り組んでいこうかなと思っています。海外からのお客様にも美味しい寿司を食べていただいて、少しでも新潟の魚や寿司の魅力を世界に発信できたら嬉しいですね。
鮨家むらさき
新潟市東区牡丹山6-11-9
050-5484-4412
11:00-14:00/17:00-21:00
月水木曜休