流行に捉われない新しいスタンダードを目指す「SUGIKEN」。
ものづくり
2024.08.22
住宅の新築工事や古い建物のリノベーションを手がけ、現場監理に携わっている新潟市中央区の「SUGIKEN(スギケン)」にお邪魔して、代表の佐藤さんから建築に対するこだわりを聞いてきました。

SUGIKEN
佐藤 博之 Hiroyuki Sato
1974年山形県生まれ。神奈川県でATMのメンテナンスの仕事を経験し、山形県に戻って建設会社の作業員として働く。結婚を機に新潟県へ移住し住宅メーカーに勤め、飲食店の経営を経て再び建築会社に勤務。2023年に「SUGIKEN」を開業する。モトクロスが趣味でレース経験もある。
人の名を使った屋号に込められた意味。
——佐藤さんはいつから建設業に携わってきたんですか?
佐藤さん:22歳のとき、山形の建設会社で作業員として働きはじめたんです。学校や病院といった公共施設の工事をやっていました。
——大きな工事に携わっていたんですね。新潟に来たのはいつ頃なんですか?
佐藤さん:26歳のとき結婚を機に新潟で暮らしはじめて、住宅メーカーで10年くらい働いていました。
——それからはいろいろな建築会社で経験を重ねてきたわけですね。
佐藤さん:でも36歳くらいからしばらく飲食店を経営していたんですよ。
——急にまた、どうして?
佐藤さん:自分で商売をはじめようと思ったんですけど、建設業は着工してから完成するまでお金が入らないんですよ。それでは資金繰りが大変なので、毎日お金が入ってくる仕事をしようと思って飲食店をはじめたんです。
——なるほど。飲食店を経営してみていかがでした?
佐藤さん:飲食店の経営も楽しかったんだけど、やっているうちにやっぱり自分は建築の仕事が好きだということに気がついたので、店を畳んで建築会社に入社しました。その会社では自由な発想で建築やものづくりに取り組んでいるのを見て、いろいろと影響を受けましたね。

——独立して「SUGIKEN」を立ち上げたのはどうしてなんですか?
佐藤さん:居酒屋をやっていたときの経験から、自分で経営することの辛さは身に沁みていたので、独立したいなんてさらさら思っていなかったんですよ。でも知り合いの建築仕事を手伝っているうちに、いつの間にか独立することになっちゃったんです(笑)
——「SUGIKEN」という屋号は、どういう意味なんでしょうか?
佐藤さん:最初は自分の名前を使って「佐藤建築」とか「SATOKEN」とかを考えていました。でも自分の名前は使いたくなかったので、恩人の名前を使って「SUGIKEN」にしたんです(笑)
——まさかの他の人の名前だったんですね(笑)。ちなみに、どういう方なんでしょうか?
佐藤さん:建築業をやっている方で、私が無職のときに仕事で使ってくれたんですよ。その方への尊敬を込めて、屋号に使わせていただいたんです。

一生懸命考えて、新しいものを生み出していきたい。
——こちらでは、どんな仕事をされているんですか?
佐藤さん:住宅の新築工事や店舗のリノベーションなどです。ただ、ひとりでやっているので住宅の新築工事は数多く引き受けられないんですよ。
——住宅をつくる際にこだわっていることがあったら教えてください。
佐藤さん:○○調とか○○風っていう言葉が好きじゃないんです。誰かがいいものをつくると、みんなが真似して同じような家ばかり作るからお腹いっぱいになっちゃう(笑)。安易に今あるもので何とかしようとはしないで、一生懸命考えて新しいものを生み出したいと思っています。今では常識とされていたり、流行っていたりするスタイルでも、少し前まではあり得ないことだったりもするんですよ。非常識と思われていても、やってみたら案外面白いってこともあるので、新しい常識をつくっていけたらいいなと思っています。
——そうしたこだわりが、手掛ける建物に生かされているんですね。
佐藤さん:自分で手掛けたなかでは、軒を長くした住宅がありました。最近は軒がない住宅が多いんですよ。でも、軒があれば雨が降っていても窓が開けられるし、日除けにもなって便利だと思うんです。そこで普通よりも軒を長めに出した家をつくりました。

——迫力とインパクトがありますね。でも、自分とクライアントの考えが合わないこともあるんじゃ……。
佐藤さん:そうですね(笑)。そのためにも、クライアントとの打ち合わせを密にして、お互いの考えを理解し合いながら進めることが大切だと思っています。
——リノベーションの難しさっていうのはありますか?
佐藤さん:ほとんどは自分たちが手掛けたものではない建物を改装するので、壊してみたら予期していない状況だったということも多いですね。垂直ではなく斜めになった柱が現れたり、すっかり腐っていたり……。おかしなつくりをしているケースもあるので、大工さんもやりたがらないんですよ(笑)。その反面、見事な技術でつくられている建物もあったりして、壊すのをためらわれることもあります。
——最初からつくるより大変だったりするんですね(笑)
佐藤さん:そうですね。でも、どんな仕事もやっているときは大変なんですけど、完成してみると充実感がありますね。振り返ってみると「楽しかったな」と思えるんですよ。
——今後はどんなことをやってみたいと思っていますか?
佐藤さん:住宅の仕事は続けていきたいですね。あと、建築会社から現場監理の仕事も外注で受けていきたいと思っています。人手不足の会社も多いので少しでも手助けできたらという思いもありますし、私もいろいろな会社とお付き合いすることで学びになったり刺激を受けたりできるんですよ。

SUGIKEN
新潟市中央区上近江3-26-17 エクセル近江103
090-8588-0494
9:00-18:00
日曜休
Advertisement
関連記事
ものづくり
生活を絵に落とし込む、イラストレーター「Abby Fukunosuky」。
2024.07.23
ものづくり
日常酒も新しいお酒も。愛される日本酒をつくり続ける「笹祝酒造」。
2021.05.04
ものづくり, 僕らの工場。
僕らの工場。#2 誠実な職人たちの靴工場「コージ製靴」
2019.04.27
ものづくり
土管屋さんがかまどを作っちゃった!安田の「小田製陶所」。
2020.12.17
ものづくり
オープンファクトリーを兼ねた酒蔵の直売所「KULABO」。
2023.10.04
ものづくり
愛らしい表情にほっこり癒される、「かんだあきら」の羊毛フェルト。
2025.06.21
新しい記事
食べる
季節感を大切にしたお菓子づくり。
上古町の老舗「美豆伎庵 金巻屋」
2025.12.16
その他
「整体コラボスペース リソラボ」で
やりたいことを、思いっきり。
2025.12.15
Things写真館
[Things写真館]Photo Studio またね photographer 吉田尚人 #03
PR | 2025.12.15
カルチャー
オリジナルZINEが活動の原動力。
移動本屋「いと本」
2025.12.14
カフェ
海沿いの小さな田舎町で
暮らしと人々をつなぐカフェ「絲と糸」
2025.12.13
カフェ
ガラス作家が店長を務める、
「1DAY シフォンカフェ」
2025.12.12


