映像を通して新しい魅力を引き出す制作会社「LUCK DIRECTION SERVICE」。
カルチャー
2024.09.10
新潟のご当地ヒーロー『超耕21ガッター』をご存知でしょうか? ショッタリアン帝国から新潟の米を守る正義のヒーローで、キャラクターショーが行われたり、テレビで連続ドラマが放送されたりしてきました。そのイベントやドラマに携わってきたディレクターの金子さんが立ち上げたのが、長岡を拠点に活動する「株式会社LUCK DIRECTION SERVICE」。秘密基地のような事務所に金子さんを訪ねて、映像、番組制作にまつわる苦労、こだわりを聞いてきました。


株式会社LUCK DIRECTION SERVICE
金子 浩 Hiroshi Kaneko
1973年小千谷市生まれ。東京の専門学校で建築を学び柏崎の建設会社で働いた後、テレビ業界に憧れて東京の大手制作会社で番組制作に携わる。結婚を機に長岡に移住して「株式会社イフ」で映像制作などに携わり、2017年に独立して「LUCK DIRECTION SERVICE」を立ち上げる。2024年には「株式会社LUCK DIRECTION SERVICE」を設立。趣味はDIYやキャンプ。
想像を絶する、AD時代のキツい体験。
——金子さんは昔から映像の仕事を目指していたんですか?
金子さん:最初は建築士を目指していたので、東京の専門学校で勉強して柏崎の建設会社で働いていたんですよ。でも猛勉強して臨んだ1級建築士の試験に落ちて、付き合っていた彼女にふられたことが重なって「これは人生の転機なんじゃないか」と感じて転職を考えたんです。
——それで映像の仕事に転職したんですね。
金子さん:お笑い番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」を初期から見ているほどの大ファンだったので、自分でも面白いバラエティ番組を作ってみたいと思ったんです。そこで何のツテもないまま上京して、大手のテレビ番組制作会社でアシスタントディレクター……つまりADとして働きじめました。
——へぇ〜、どんな番組に関わったんですか?
金子さん:ADとしては「THE夜もヒッパレ」「出没!アド街ック天国」「ココリコミリオン家族」などに関わりました。「アド街」は業界でも2番目にハードな番組と言われていて、朝から晩まで取材をして帰社すると、今度は朝までかけて商品等の物撮りをする毎日でした。
——みんな好きだった番組です。ADって超絶ブラックな職種というイメージがあるんですけど、実際はどうなんでしょうか?
金子さん:いや〜普通の人間には務まらないですね。ちょっとおかしい人間じゃないと無理だと思いますよ(笑)
——ADをやっている方々に失礼ですよ(笑)。でも、それだけ過酷な現場ということなんですね。
金子さん:僕らの頃は1週間家に帰ることができないとか、2週間風呂に入ることができないなんてザラでしたよ(笑)。会社のエレベーターの扉が開くと、乗っていたADの発酵した匂いが漂ってきましたからね。階段を降りている途中で寝てしまって、転がり落ちた挙句に救急車で病院へ運ばれた者もいました。

——それはもう気絶なのでは……。想像を絶する仕事だったんですね。
金子さん:ディレクターやAD数人で新番組のシミュレーションに行った帰りの車でみんな爆睡していたんですけど、運転していたスタッフまで寝てしまって首都高の壁に激突したんです。起きたら血を流していたなんてことがありました(笑)
——もはや笑いごとじゃないですよ。そんな辛い仕事でも辞めずに続けたのはどうしてなんですか?
金子さん:自分で考えた面白い番組を作ってみたかったし、いつかダウンタウンさんと一緒に仕事をしたいと思っていたので、やるからにはディレクターになろうと決めていましたね。
——その甲斐あってディレクターに昇格したんですね。
金子さん:『神経質バラエティー 心配さん』でディレクターに昇格したんです。その後は「芸能人格付けチェック」などを担当しました。
——ADからディレクターになって、変わったことはあったんですか?
金子さん:最初の頃はどういうものが面白いのかわからなくて悩みました。自分がすごく面白いと思った企画でも、プロデューサーから「それの何が面白いの?」と聞かれることもあって、感覚の違いに苦しんだこともありましたね。
——でも『芸能人格付けチェック』を担当したことで、ダウンタウンの浜田さんとは仕事ができたんですよね。「ダウンタウンと仕事がしたい」という夢は叶ったじゃないですか。
金子さん:叶いました。ただ僕が担当していたのはスタジオではなく、お笑い芸人対抗の予選会で爆破やバスの横転、低温花火とかをやっていましたね(笑)
——何気なく観て笑っているテレビ番組が、大変な苦労の上に制作されていることがわかりました。
金子さん:地獄のような苦労を経験してきたおかげで、今は大変なことがあったって屁にも思わないです(笑)

新潟のご当地ヒーロー「超耕21ガッター」を演出。
——新潟にUターンして長岡へ移住したのはどうしてなんですか?
金子さん:結婚して子どもができたタイミングで、奥さんの実家がある長岡で暮らすことにしたんですよ。
——奥さんは長岡のご出身なんですね。もともとお知り合いだったんですか?
金子さん:柏崎のゼネコンにいた頃、飲み会ではじめて出会ったんです。それからだいぶ経って、番組に出演するはずだったモデルさんにドタキャンされてしまって、急遽代役で出演してもらったことがきっかけで付き合いはじめました。
——ドタキャンしたモデルさんには感謝ですね(笑)。長岡で暮らしはじめてからも、映像の仕事をしていたんでしょうか?
金子さん:長岡に唯一あった映像制作会社の「株式会社イフ」で、映像制作やイベント運営に関わってきました。少人数の会社でしたから、撮影から音響、編集までなんでもやらなければならなかったんです。

——その制作会社では、どんな仕事に関わったんでしょうか?
金子さん:長岡花火大会や日本海夕日コンサートの中継、防衛庁や警察庁といった官公庁のビデオ制作などがありました。全国の免許センターで免許更新の際に見せるビデオも制作しましたが、一部を長岡で撮影したので道路に消雪パイプがあったり、信号機が縦型だったりと雪国仕様になっていたんです(笑)
——新潟のご当地ヒーロー「超耕21ガッター」にも関わっていましたよね?
金子さん:よくご存知ですね。「株式会社イフ」が「円谷プロダクション」と代理店契約を結んで、ウルトラマンショーをやっていたんです。そのことから「超耕21ガッター」のイベント運営や映像制作を任されることになって、僕はディレクターとして演出を担当していました。プロモーションムービーからはじまり、30分ドラマを数本放送して、5分や15分のドラマを毎週放送するまでになりました。
——もちろん観ていました(笑)。かっこいいだけじゃなくて、お笑いの要素が盛り込まれていて親近感を覚えましたよ。
金子さん:ありがとうございます。予算が限られていて撮影にも編集にも時間を掛けることができないので、まともにやっていては仮面ライダーや戦隊ヒーローに太刀打ちできないと思いました。そこで思い切ってお笑い方向にシフトすることにしたんですよ。
——なんか最後の方は「ヒーローアクション番組」というよりも「ローカル情報番組」みたいになってましたよね(笑)
金子さん:あれも理由があったんですよ。撮影時期が秋から冬にかけてだったので、雪の多い新潟の天候を考えた結果、体験型の観光施設を選んでロケすることになったんです。そのおかげで観光情報バラエティーみたいになりました(笑)
——いろいろな制約の上で番組を制作されていたんですね(笑)
金子さん:キャラクターの吹き替えも制作スタッフが担当していましたからね。僕も敵キャラの「ザリガニータ」や、「流れ笹次郎」というヒーローの愛犬「ちまき」の吹き替えをやっています。ちなみに「ちまき」は我が家の愛犬なんですよ(笑)
——そうだったんですね(笑)
金子さん:やっているときは苦労しましたけど、みんなでひとつのものを作り上げたことが、今ではいい思い出になっていますね。

新しい魅力を引き出す目線を大切にしたい。
——現在は独立して「LUCK DIRECTION SERVICE」を立ち上げたんですね。
金子さん:2017年に個人事業主として独立して、今年2024年に株式会社LUCK DIRECTION SERVICEを設立しました。
——金子さんが映像を制作をする際に、心掛けていることがあったら教えてください。
金子さん:お店や商品の紹介をするのであれば、クライアントがまだ気づいていない新しい魅力を引き出せるように、普通とは違った目線を探して撮ることを心掛けています。

——なるほど。
金子さん:あとバラエティー番組の撮影では、みんなが笑える楽しい現場づくりを心掛けていますね。雰囲気の悪いピリピリした現場だと、映像を通して観ている人に緊張感が伝わっちゃって、面白くない番組になっちゃうんですよ。
——楽しいものを作るときは、楽しい気持ちで作ることが大切なんですね。とても勉強になりました。最後になりますが、これからやってみたい仕事があったら教えてください。
金子さん:「超耕21ガッター」とか官公庁の再現ドラマの撮影が楽しかったので、またドラマの撮影ができたらいいなと思っています。またドラマの撮影ができたらいいなと思っています。それから映像の仕事を通して新潟の魅力もどんどんアピールしていきたいですね。

株式会社LUCK DIRECTION SERVICE
長岡市四郎丸2-3-8
0258-94-4944
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