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地元・赤塚の大根を使った漬物の魅力を伝える「株式会社ヤマキ食品」。

ごはんのお供として、真っ先に思い浮かぶのが漬物ではないでしょうか。特にたくあん漬はお米のうま味を引き立て、いくらでもご飯がすすんじゃいますね。そんな漬物をつくり続けてきたのが、新潟市西区の赤塚にある「株式会社ヤマキ食品」です。今回は常務取締役の小竹さんにお会いして、漬物の魅力やこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

株式会社ヤマキ食品

小竹 周平 Syuhei Kotake

1992年神奈川県生まれ。アパレル企業やエンジニアリング企業を経て、2019年に新潟へ移住し「株式会社ヤマキ食品」に就職する。富士山登山や読書が趣味。

 

漬物会社を受け継ぐために新潟へ。

——小竹さんは社長と同じ苗字ですけど、ご関係は?

小竹さん:社長の娘と結婚したので、それを機に新潟へ来て「株式会社ヤマキ食品」に就職したんです。

 

——そうだったんですね。その前はどちらで暮らしていたんですか?

小竹さん:神奈川県で生まれて地元のアパレル企業でショップスタッフをやったり、エンジニアリングの仕事で自動倉庫のメンテナンスをおこなっていました。自分のメンタルを鍛えたくて、ひとりでハワイに渡って3ヵ月間だけ生活してきたこともあったんですよ。

 

——メンタルを鍛えることができましたか?

小竹さん:度胸はついたと思います。それまでは人と接することが苦手だったんですけど、ハワイで生活してきたことで克服できたように思います。

 

——行ってよかったですね。新潟へ移り住んだのはいつ頃なんですか?

小竹さん:2019年にこちらへ移りました。はじめて新潟へ来たんですけど、海や山が近くていい所だなというのが第一印象です。自動車で雪道を運転するのも新鮮に感じました。

 

——「株式会社ヤマキ食品」に就職してからは、どんな仕事をしてきたんでしょう?

小竹さん:まずはひと通りの仕事を覚えるために、ほとんどの部署を経験させていただきました。短い期間で仕事を覚えなければならなかったので必死に勉強しましたけど、昔から新しいことを覚えるのは好きだったので苦にはならなかったですね。

 

 

——ちなみに、いちばん最初はどんな部署で働いたんでしょうか?

小竹さん:工場で大根の漬け込みを経験しました。タンクに大根を入れ、10kgのバケツに入った塩を一日中数百回も振りかけるんです。そうすると塩の浸透圧で水が抜かれ漬け込まれていきます。これを2回3回と繰り返し付け替えることで長期間保存して、発酵させることで美味しい漬物が出来上がります。重量のある大根を扱うのは、かなりの肉体労働で大変な作業なんですよ。

 

——大根って1本だけでもけっこう重いですからね……。今はどんな仕事を任されているんですか?

小竹さん:原料仕入れ管理のデジタル化、添加物の仕入れ、商品開発を主に担当しています。原料管理は今まで用紙に記入していたんですけど、現場では紙が水に濡れることもあって大変だったんですよ。ですから防水ケースに入れたiPadを使うように改善し、データもやりとりしやすいようデジタル化しました。

 

会社の歴史と漬物へのこだわり。

——「株式会社ヤマキ食品」の歴史を教えてください。

小竹さん:1947年に創立して1972年に株式会社として設立しました。農家をやっていた現社長のお父さんが、余った大根で漬物をつくったら美味しくできたので販売してみたんです。そうしたらとても好評で「また売ってほしい」という声が多くて、どんどん拡大していったそうです。でも、ここまでの規模にするのは大変な苦労があったようですね。

 

——現在はどんな商品をつくっているんでしょうか?

小竹さん:地元の赤塚や松野尾で収穫された大根を使った「たくあん漬」「みそ漬」「しょうゆ漬」ですね。変わり種としては赤塚地域で採れるすいかを使った「すいかのみそ漬」なんかもつくっているんです。道の駅や新潟県内の和菓子屋さんなどで販売しています。

 

——すいかはともかく、赤塚の大根にこだわった商品なんですね。

小竹さん:大根農家さんあっての我々ですから、経営理念にも「地元農業と共生」を掲げて、地域の繁栄に貢献できる企業を目指しています。重量のある大根というのは収穫も大変なんですよ。そこで大根の収穫機を契約農家に導入することを検討したんです。

 

——それって上手くいったんでしょうか?

小竹さん:最初はなかなか上手くいかなかったようですが、細かく改良を重ねることで今まで以上に収穫量が増えることになったんです。ちなみに契約農家全体のトータル作付け面積は72haで、東京ディズニーランドより広いんです。

 

 

——へぇ〜、大根の収穫量もすごいんでしょうね。

小竹さん:赤塚地区は全国でも有数の大根生産地ですからね。その割に新潟市内でもあまり知られていないのが残念なんですよ。なぜかというと、ほとんど全部が漬物の原料になっているからなんです(笑)。今後はもっと赤塚大根の名を世間に広めていきたいと思っています。

 

——そのために、どんな取り組みをしようと考えていますか?

小竹さん:自分で大根を収穫して、それを使った料理を食べてもらえる農業体験ツアーがあるといいですよね。そうすることによって、赤塚へ人が訪れる流れもできますし。

 

——それは楽しそうですね。話は変わりますけど「株式会社ヤマキ食品」の漬物って、どんなところにこだわってつくられているんですか?

小竹さん:経営理念にあるように「美味しいを追求」しています。食感を出すために漬物の厚みにこだわってみたり、さっぱりした甘めの味にすることで、子どもからお年寄りまで食べやすくしたりしているんです。

 

世間の漬物離れに対する取り組み。

——取り組んでいる課題はあったりするんでしょうか?

小竹さん:漬物を食べる習慣がない家庭へのアプローチでしょうか。漬物に触れてこなかった人たちに漬物の美味しさを知っていただき、市場を開拓していきたいと思っているんです。実は僕自身、この会社に入るまでは漬物を食べてこなかったんです(笑)。だからこそ、漬物を食べない人たちの気持ちを理解できるし、どうしたら興味を持ってくれるのかを考えることができると思っています。

 

——具体的にはどんな取り組みを?

小竹さん:こども食堂への協賛をおこなって、ときには漬物の提供もしています。子どもの頃から漬物に親しんでもらえたらという思いで取り組んでいるんです。

 

——他にも取り組んでいることがあったら教えてください。

小竹さん:「漬物は塩分が多くて身体に悪い」というイメージを払拭したいと思っています。以前は10%だった塩分も最近は3〜4%に抑えられていますし、そもそも丸ごと食べる人はそうそういないと思うので、1食で摂取する量を考えれば0.9gくらいなんですよ。

 

 

——なるほど。

小竹さん:商品につける栄養成分表示にしても、100gあたりの表示になっているじゃないですか。あれって、たくあん10枚分くらいの量にあたるんですよ。だからどうしても塩分が高く感じてしまうと思うんです。いずれは1回の食事分で表記できるように変えていきたいですね。

 

——漬物のいいところも教えてください。

小竹さん:漬物は野菜を漬け込んだものですから、食物繊維を多く摂取できるんです。そのため腸の活性化にも繋がるんですよ。腸は「第二の脳」とも呼ばれていて、腸から出る幸せホルモンによって気分が上がることもあるそうです。大根のようなアブラナ科の植物には寿命を延ばす効果もあるといわれています。

 

——思いがけないメリットがありそうですね。これからはどんなことに力を入れていきたいですか?

小竹さん:実は最近ようやく会社のインスタグラムをはじめたので、今後は製品をはじめ会社の紹介をすることで「株式会社ヤマキ食品」のファンになってもらえたらと思っています。その他、地元の紹介もやっていきたいと思っています。

 

——それも小竹さんが入ったから実現したことなんでしょうね。

小竹さん:僕だけではなく、SNSに詳しい社員がいてくれたからです。今まではマーケティングに対してあまり力を入れてこなかった会社なので、それなのにここまでやってきたことはすごいと思うんです。でも今後は時代に合わせた対応もしていかなければならないと思っています。僕が入ったことで、新しい魅力を引き出していければと思っています。

 

 

 

株式会社ヤマキ食品

新潟市西区神山258

025-239-2057

8:30-17:00

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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