Things

焼きいも屋をはじめた、燕市にある彫刻や看板の会社「沖野彫刻」。

神社やお寺へお参りに行くと、見事な彫刻が施された柱や梁を見かけることがあります。今回紹介するのは、そうした彫刻を手がける「沖野彫刻(おきのちょうこく)」という会社です。この会社、なんと敷地内に「焼きいも屋ぴーす」というお店をオープンして、焼きいもの販売もはじめたんだとか。いったいどうしてなんでしょう。代表の沖野さんにお話を聞いていきました。

 

 

沖野彫刻

沖野 兼一 Kenichi Okino

1969年燕市(旧分水町)生まれ。村上市でおしゃぎり屋台の修繕に5年間携わって彫刻の基礎を学び、父の経営する「沖野工務店」で働いた後、1996年より独立して「沖野彫刻」を立ち上げる。2022年には「焼きいも屋ぴーす」をオープン。さつまいもを栽培し、3頭のヤギを飼育している。

 

表情を意識して、躍動感のある彫刻をつくる。

——「沖野彫刻」では、どんなお仕事をされているんですか?

沖野さん:寺社の建築に使われている、彫刻された部分をつくる仕事をやっています。

 

——龍や獅子が彫られている梁の部分とか?

沖野さん:そうです。わかりやすい例では、新潟市にある白山神社の手水舍に携わりました。先日は「分水ロータリークラブ」創立50周年の記念品として、燕市に寄贈するフェニックスも製作したんですよ。

 

 

——木像までつくるんですか。フェニックスは写真で見ただけでも存在感がすごいですね。そもそも「沖野彫刻」というのは代々続いてきた会社なんでしょうか?

沖野さん:父は「沖野工務店」という会社を経営していて、農家の住宅や神社をつくる宮大工だったんです。私は父の勧めもあって村上市で彫刻の修業をしてきたので、1996年に独立して「沖野彫刻」を興しました。

 

——村上市ではどんな修業をしてきたのか教えてください。

沖野さん:村上市内でも厳しいことで有名な親方の下で、住み込み修業を5年間続けました。「村上大祭」で曳き回される「おしゃぎり」と呼ばれる山車を修繕する仕事が中心でしたね。よく叱られていましたが、特に毎週水曜になると大した理由もないのに怒られるんです(笑)。今考えると、週1回は叱って気を引き締めていたのかもしれませんね。

 

 

——今では考えられないですね(笑)。それにしても5年間では覚えきれなかったんじゃないですか?

沖野さん:そうですね。基礎だけ学んで、あとは独学で身につけていきました。いまだに未経験の仕事に出くわすことがたくさんあるんですよ(笑)

 

——彫刻する際に心掛けていることがあったら教えてください。

沖野さん:生き生きした彫刻になるよう心掛けています。唐草模様を彫る場合は曲線の描き方に気をつけたり、深さや太さのメリハリをつけたりすることで,流れるような勢いのある表現にしているんです。

 

 

——確かに躍動感を感じますね。

沖野さん:顔の表情も大切にしています。他の部分がよくできても、顔がうまくいかなかったら台無しですからね。例えば獅子は目をむいて口を開いた表情で睨んでいるんですけど、ちょっとしたことで笑顔になってしまうんです(笑)

 

——なるほど(笑)。見る角度によっても表情は変わって見えそうですね。

沖野さん:まず平面でデザインを起こすんですけど、立体になったときに表情が変わってくるんです。取り付ける場所によっても見える角度が変わってくるので、どこに取り付けるのか意識してつくることも大切ですね。

 

みんなに楽しんでほしくて、焼きいも店をオープン。

——彫刻の他には、どんなことをやっているんでしょうか?

沖野さん:看板のネット販売もやっています。会社や店舗のガラス窓や自動車に貼るカッティングシートとか、展示会の装飾に使うシートとかをつくっているんですよ。

 

——カッティングシートはなんとなくわかるんですけど、展示会に使うシートとは?

沖野さん:ブースの壁に引っ掛けるだけで使えて、何回でも繰り返し使える上に、くるくると巻いて片付けることができるので保存や運搬が楽なんですよ。簡単そうに見えますけど、細かいところを便利にするため開発に3年かかったんです。

 

 

——それはそうと、来たときからずっと気になっていたんですけど……おもてに白いテントのようなものがありますよね?

沖野さん:あれはモンゴルの遊牧民が使っている「ゲル」という移動式住居です。知り合いからいただいたので、焼きいも屋のイートインスペースや休憩所として使っています。

 

 

——焼きいも屋さんも?

沖野さん:耕作放棄地を借りてさつまいもの栽培をはじめたんです。最初は手土産にしたり事務所で細々と販売したりしていたんですけど、もっとたくさんの方々に食べてもらおうと思って2022年に「焼きいも屋ぴーす」をオープンしました。

 

——何種類くらいの焼きいもを扱っているんでしょうか?

沖野さん:「紅はるか」や「シルクスイート」をはじめ、4〜5種類の焼きいもを売っています。その他に駄菓子やいもを加工したお菓子も置いているんですよ。

 

——焼きいものこだわりがあったら教えてください。

沖野さん:当たり前のことかもしれませんが、13〜15℃の温度環境で3ヵ月ほど熟成させていますので、しっとりした食感で甘みの強い焼きいもになっています。夏場でも保管できるように大型冷蔵庫を導入しましたので、1年を通して販売することが可能になったんです。

 

 

——ジャンルに関わらず、いろんなことに挑戦しているんですね。

沖野さん:人に楽しんでいただくことが好きなのかもしれないですね。飼っているヤギの餌やり体験もやっていますし、鯉が泳いでいる池の周りを散策していただくこともできるんです。ぜひ焼きいもを買いに来たついでに楽しんでいっていただきたいですね。

 

——ちょっとしたテーマパークですね(笑)

沖野さん:工房の建物内には、2階から1階へと降りるすべり台をつくりました。全国ネットの情報バラエティー番組「ナニコレ珍百景」でも紹介されたことがあるんですよ(笑)

 

 

 

沖野彫刻

燕市新堀2294-3

0256-97-7507

8:00-17:30(焼きいも屋ぴーすは10:00-18:00)

日曜休(焼きいも屋ぴーすは木曜定休)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP