フランス料理と聞くと、高級なイメージが先走ってしまいがちですが、新潟市西区にある「French Rice(フレンチライス)」はカジュアルにフランスの家庭料理を食べられるお店。テイクアウトをして自宅で楽しむも、ランチタイムに友達とイートインするもよし。さまざまなシーンで気軽にフレンチを楽しめます。シェフを務める冨田さんはとってもとっても話好き。まるで常連さんと語り合うかのように、修業時代のコト、お店のコトなど、気さくにたっぷり話してくれました。
French Rice
冨田正幸 Masayuki Tomita
1964年新潟生まれ。「新潟シルバーホテル」、東京の有名レストラン、グルメ客船など、料理人として豊富な経験を積み重ねてきたベテランシェフ。満を期して2018年に「French Rice」をオープン。趣味は絵を描くこと。店内のどこかに飾ってあるとか、ないとか。
――冨田シェフは、料理人歴がとても長そうですね。何年くらいされているのですか?
冨田シェフ:高校を卒業してすぐに、JR新潟駅前にあった「新潟シルバーホテル」に入社したのが料理人としてのはじまりです。かれこれ37年になりますね。…あと3年もしたら、40年じゃないですか!驚きですね(笑)。
――大ベテランじゃないですか。高校を卒業してからすぐにというのは、昔から料理に興味があったからですか?
冨田シェフ:僕の時代は、就職と進学が半々だったんですよ。何もプランがなかったので、とりあえず就職しようかなって。まずはカーディーラーの「新潟マツダ」を受けたんです。そしたら、不採用で。しかも学科試験がゲッポだったんです(笑)。そんなこんなで、どうしようか考えていたら、父が「手に職を付けた方がいいぞ」と、アドバイスをくれたんです。それで「料理人かな…」って安易な考えで「新潟シルバーホテル」の試験を受けてみたら…受かっちゃって!
――「料理が好きだから」といったスタートではなかったんですね(笑)
冨田シェフ:はい(笑)。でも、今思うと、この道でよかったなと。大変な修業時代もありましたが、「French Rice」ではとても充実した日々を歩んでいます。
――「新潟シルバーホテル」以外では、どのような場所で修業を?
冨田シェフ:「新潟シルバーホテル」では4年半、その後、個人のフランス料理店で半年修業をして、東京へ行くことになりました。東京では西麻布にあったレストラン「French Rice」がスタートでした。このお店と同じ名前のレストランです。
――え?同じ名前なんですか?何か思い入れが?
冨田シェフ:西麻布の「French Rice」は、入店して半年ほどで閉店してしまったんですよ。閉店の片づけをしていた時、使っていたメニューをいつか自分でお店を開いたら額にでも入れて飾ろうかなって、おぼろげに思ったんです。フランス料理ってどこか敷居が高く、店名もかっこつけて難しいものが多いじゃないですか?でも西麻布の「French Rice」には、フランスの家庭料理みたいなカジュアルさがあって、日常があったんです。それがなんかいいなって感じてて。ずっと頭のどこかに存在していたんでしょうね。
――働いた期間は短くても、長い料理人生の中ではとても重要な期間だったんですね。閉店されてからは、どうされたんですか?
冨田シェフ:横浜のグルメ客船「ロイヤルウイング」の調理場に入りました。この船は、東京湾を1周しながら食事を楽しめるんです。ただ、料理長が厳しくて。ちょっとでもミスをしたり、まかない料理が口に合わないと、パンチとかが飛んでくるんです。今ではパワハラ?いや、暴力沙汰ですよね(笑)。まぁ昔ながらの調理場って感じですね。忙しかったので、多くのことが学べた期間ではありましたけど。
――おぉぉ、パンチですか(笑)
冨田シェフ:まぁ、今となってはこうして笑い話になっていますけどね(笑)。その後はいろいろあって、新潟に戻ってきました。最終的には長岡の結婚式場「La partil(ラ・パルティール)」で13年半お世話になって、2018年にこの「French Rice」をオープンしました。
――ん?ちょっと話を端折りました??
冨田シェフ:いや、ちょっと自分ばかり話しすぎたかなって。シェフの話は長いって、スタッフによく怒られるんですよ(笑)
※ここまで90分のインタビュー。冨田シェフは細かくお話してくださいました。が、とても長かったので、修行時代のストーリーは要約した内容となっています。詳しく知りたい方は、富田シェフまで。たっぷり語ってくれます。止まりません(笑)
――どうして独立して「French Rice」を、はじめようと思ったんですか?
冨田シェフ:いつかは自分の店を持ちたいって思いがあったのは、正直なところ。でも決定的な部分は、手に職を持ったことを生かそうと考えたからですね。サラリーマンって、60歳で定年を迎えて、再雇用で65歳まで働いたら終わり(一般的には)。その後は…って、考えたときに、自分ではじめたら好きなだけ料理が作れると思ったんですよね。これまでの経験もあるし、今ならできるかなって。
――手に職があるからこそ、選べた選択肢ですね。
冨田シェフ:自分がおいしいって思って作ったものを、お客さんもおいしいと思ってくれている姿が見れる。これって結婚式場や大きなレストランで勤めていたら、調理場からは感じられないんです。料理人として、もっと近くでリアクションを感じられ、身近なフランス料理を提供したい。そんな思いから、以前働いていた西麻布の「French Rice」に、店名をもらったんです。勝手に(笑)
――真面目な話かと思えば、しっかりオチを作ってきますね(笑)
冨田シェフ:だからスタッフに怒られるんですよね(笑)。ちゃんとします!「French Rice」について話していいですか?
――ぜひ、お願いします!
冨田シェフ:この「French Rice」では、カジュアルに、身近にフランス料理を感じてもらいたくて、ランチタイムのイートインとテイクアウトのみで営業しています。目指す料理は高級レストランのフランス料理ではなくて、田舎っぽいフランスの家庭料理。ニンジンのラぺなど、常時15種類以上のデリ総菜が楽しめます。
――ランチタイムも、デリ総菜が食べられるんですか?
冨田シェフ:もちろんです。メイン料理にデリ総菜から4種類のサラダ、前菜、スープなどが付いてくる「シェフきまぐれランチ」があります。イタリアンって、カジュアルな印象も定着したじゃないですか? ならばフレンチだってと思い、「French Rice」では箸も使えるようにしています。気兼ねなくフランス料理を食べてもらえるように、フランスの母が毎日作るような料理を、気軽にいつでもどこでも。
――最後はきれいにまとめてきましたね(笑)
冨田シェフ:ちょっと真面目な話でしたね。大丈夫ですか? とにかく、気軽にフランス料理を食べてもらえるので、おしゃべりついでに来てみてください。こんなにカジュアルな雰囲気で楽しめるんだ、って思ってもらえますから。たくさん話しましょう(笑)。
終始、常連さんと話しているかのような空気感でインタビューをさせてくれた冨田シェフ。ときどき「話過ぎたかな?」と気をつかってくれつつ、冗談交じりの会話は、まるで接客でも受けているかのように楽しいひと時でした。でも、フランクに見える冨田シェフは、いざ調理場に入ると、やはりベテラン料理人。丁寧な仕事でひとつひとつの作業を真剣にこなしていく。彩り鮮やかに、温かみのある料理たちは、どこかほっこり。フランスの家庭料理みたいと語ってくれた料理は、冨田シェフの人柄を映しだしているようです。おいしい料理を食べたいという気持ちと一緒に、冨田シェフと話したい、そんな気持ちになった、楽しい時間でした。ぜひ、おしゃべりしに行ってみてください(笑)
French Rice
新潟県新潟市西区寺尾東1-10-5
025-260-0656