新潟市西区にある「ピアノと歌 フェリーチェ音楽院」。この教室でピアノや歌を教える笠原さんは、イタリアやドイツでの経験をもとに、「音楽の楽しさを伝えること」をとても大切にしています。笠原さんがピアノや歌をはじめたきっかけや、これまで学んできたこと、教室のこと、いろいろお話を聞いてきました。
ピアノと歌 フェリーチェ音楽院
笠原 けい子 Keiko Kasahara
1970年北海道出身。札幌市内の短期大学で音楽教育を声楽を学び、ピアノの講師として働く。その後、声楽を本格的に学ぶためイタリアとドイツへ留学。帰国後、結婚を機に新潟で「ピアノと歌 フェリーチェ音楽院」をはじめる。オペラとバレエ、宝塚が大好き。
――今日はよろしくお願いします。笠原さんは、いつからピアノをはじめたんですか?
笠原さん:幼稚園のときピアノを習いはじめました。先生が弾いていた曲を、友達が演奏しているのを見て、「私も弾けるようになりたい」と思ったんです。でも、はじめたときは「ピアニストになる!」と意気込んでいたんですけど、発表会ですごく緊張することが多くて……。
――ピアノを習っている人にとっては、避けては通れない道かもしれませんね。
笠原さん:「ピアニストは自分に向いていない」って子どもながらに思ったんです。そんなとき、ピアノを教えてくれた先生がすごく楽しそうに教えてくれて。その姿を見て、ピアノの先生になるって決めました。そこから音楽科のある短大に進学して、ある先生との出会いがあったんです。
――ふむふむ。
笠原さん:副科で受けていた声楽の先生なんですけれど、私の歌声を聞いて「あなたは絶対声楽に向いているわ」っておっしゃってくださって。その先生も、とても楽しそうに歌を教えてくれたんです。踊ったり、ジャンプしたりとか。そんな姿を見て、歌が好きになっていきました。短大の課程を終えた後は、専攻科に進んで声楽を学びはじめたんです。
――声楽に転科しちゃうくらい、楽しかったんですね。でも、ピアノの先生になる夢は……?
笠原さん:学校にいる間に「ヤマハ音楽教室」のグレードを取っていたので、ピアノの先生になることはできたんです。だったら、もう少し声楽をやってみたいなと思って。「ヤマハ音楽教室」の先生として働きはじめてからも、歌うことは続けていました。先生をしながら、「北海道二期会」というオペラの団体で活動しているうちに、声楽を勉強したいという気持ちがもっともっと強くなっていったんです。
――お仕事をはじめてからも、また声楽への気持ちが大きく膨らんでいったんですね。
笠原さん:それで、ピアノの先生のお仕事を一旦お休みして、30歳のとき、イタリアとドイツに留学しました。イタリアでは先生からとても刺激を受けて、歌をイチから学び直すことができたんです。
――いい出会いがあったんですね。その先生は、どんな方だったんですか?
笠原さん:「歌を届ける自分がまず楽しむ」という姿勢が一貫してあったんです。歌を聴いてくれる人が幸せになるには、まず自分が幸せでいなきゃだろうって。「歌は身体が楽器なのに、ほとんど身体が使えていない」って言われて、身体の使い方を根本から教えてもらいました。
――歌手として活動する道もあったと思いますが、日本で教室を開くことにしたのは?
笠原さん:イタリアとドイツで学んできたことを、日本で教えたいと思ったんです。帰国後は、結婚をきっかけに新潟に住みはじめて、そこでピアノと声楽を教える教室をはじめました。
――笠原さんが今まで学んできたことを伝える場所として、「ピアノと歌 フェリーチェ音楽院」ができたんですね。
笠原さん:「フェリーチェ」はイタリア語で「幸せ」という意味を持っています。私がイタリアに留学をしているとき、先生に「フェリーチェ! フェリーチェが足りない! 」ってずっと言われていて(笑)、私にとって大事な言葉でもあるんです。ここに習いに来てくださる生徒さんが演奏を通して幸せを感じたり、保護者の方がお子さんの演奏を聴いて幸せになったり、音楽が自分に寄り添ってくれる存在であってほしいという思いを込めました。
――この教室では、目的にあわせてコースがつくられていると聞きました。
笠原さん:ピアノでは、楽しみながらゆっくり進んでいく「エンジョイコース」と、コンクールにチャレンジできる「チャレンジコース」に分けています。最初は「エンジョイコース」でピアノを楽しんでもらって、もっとやりたいと思った子は「チャレンジコース」に切り替えてもらっていますね。他には、1歳から受けることができる「脳育モンテ®コース」もありますよ。
――「脳育モンテ®」って、はじめて聞きました。どんなものなんでしょう。
笠原さん:脳科学とイタリアの教育法である「モンテッソーリ」を合わせた、日本の教育法です。ピアノのレッスン中の10分間、「脳育モンテ®」専用の道具を使って遊ぶことで、脳を刺激します。そうすると、子さんの気持ちの切り替えが上手くなったり、空間認知能力が上がるなど、いろんな効果が期待できるんです。
――なぜ、「脳育モンテ®」とピアノを掛け合わせようと?
笠原さん:この教育法で鍛えられる空間認知能力は、ピアノにものすごく活きてくるんです。ピアノは楽譜を見ながら弾かなければいけないですよね。そのときに、空間認知能力が高いと、手元を見なくとも手首や指を動かしやすくなるんです。「脳育モンテ®」を取り入れているピアノ教室は、市内ではここだけだと思います。
――脳科学の分野からもアプローチしているってすごいです。
笠原さん:「エンジョイコース」や「チャレンジコース」では、「童謡脳育メソット®」を取り入れています。レッスンのときには必ず歌を歌うんです。その歌を歌詞やメロディーから考えてほしくて。これをすることによって、ピアノで演奏する曲もイメージしやすくなるんです。
――ピアノや歌を教えることを通して、笠原さんが大事にしていることを教えてください。
笠原さん:生徒さんを否定しないことですね。緊張したとき思い出すのって「間違えたらどうしよう」みたいな、マイナスなことが多いと思うんです。でも、外国の人は緊張したとき、褒められた経験を思い出すから、いいパフォーマンスができるんですよ。
――それだけ、褒められた経験が多いのかもしれませんね。
笠原さん:直すべきところはあったとしても、マイナスに受け取られないような言い方を心がけています。間違えるのが怖いと思ってほしくないんです。レッスンはどれだけ間違えてもいい場所なので。もちろん結果も大事かもしれませんが、そこまでの過程をまず褒めています。レッスン中であれば、「最後まで弾けたね、じゃあ、ここをもう一回弾いてみよう」とか、コンクールに向けてたくさん練習を重ねたこととか。
――先生から褒められたら、嬉しくて「また頑張ろう」と前向きになれますね。「ピアノと歌 フェリーチェ音楽院」をこれからどんな教室にしていきたいですか?
笠原さん:今と変わらず、たくさんの生徒さんに教えていきたいですね。その中で、音楽以外でも生徒さんを支えられたらいいなとも思っているんです。学校や勉強のことで悩みがある生徒さんには、ピアノを弾かずにお話していることもあるんです。それで少しでも前向きな気持になってくれたら嬉しいですね。
――最後に、笠原さん自身の目標を教えてください。
笠原さん:タカラジェンヌを育てたくて、新潟に宝塚歌劇団の受験スクールをつくりたいと思っています。新潟にもタカラジェンヌを目指しているお子さまがたくさんいるんですが、今は東京のスクールまで通わないといけなくて、「新潟にもあったらいいのに」と思っていたんです。バレエやダンスの先生、元タカラジェンヌの先生と協力して実現できたらいいなと思っています。
ピアノと歌 フェリーチェ音楽院
新潟市西区山田3205-1