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白血病患者をデザインで応援する「g.m.design&art works」。

俳優の渡辺謙さん、競泳の池江璃花子選手……私たちの住んでいる新潟のサッカークラブ「アルビレックス新潟」に所属している早川史哉選手など、多くの人たちが経験している白血病。この病気は、白血球が悪性腫瘍になる血液がんの一種です。この病を経験し、同じ病気の患者さんに向けてメッセージや支援を送りたいとの思いから、自身のデザインスキルを生かした活動「g.m.design&art works(ジーエムデザインアンドアートワークス)」を立ち上げた人がいます。それが、今回ご紹介する野本さんです。活動をはじめるまでの経緯、そしてどんな活動をしているのかなど、お話を聞いてきました。

 

g.m.design&art works

野本 昌宏 Masahiro Nomoto

1979年長岡市生まれ。神奈川大学卒業後、ブランド古着の売買を行う企業に就職。その後、家業である包装資材の製造販売会社・株式会社グローに入社。2018年に白血病と診断され、治癒後、2021年より「g.m.design&art works」をスタート。

 

2018年6月20日。HAPPY BIRTHDAYのはずが……。

――白血病を経験して、「g.m.design&art works」という活動をスタートしたそうですね。病気のことって、お聞きしても大丈夫ですか……?

野本さん:病気になったのは不運だけど、不幸とは思いたくないと考えています。だから気にしないで、何でも聞いてください。

 

――ありがとうございます。白血病が判明したのって、いつ頃だったんですか?

野本さん:毎朝のランニングが日課だったんですけど……2018年のゴールデンウィーク明けから、胸が苦しくなったり、息が上がったり、思うように走れなくなってきたんです。でも、6月に健康診断を予定していて、それまでは様子を見ていたんですよね。仕事のスケジュールはパンパンだったから、過労とも思えたし。

 

――仕事が忙しいと、体調の変化に気がつきにくいですよね。

野本さん:そうなんですよね……。で、健康診断を終えて、東京に出張に出ていたときに携帯が鳴りました。知らない番号だったから、どこからの電話だろうと思いながら出てみたら、「健康診断で異常が見つかりました。緊急事態です。すぐに病院に行ってください」と健康診断を受けた健康管理センターからで……。詳しく話を聞いてみたら、「白血球の数値が異常」「確実に何か重大な病気がある」「転倒などをすると非常に危険」「すぐに長岡赤十字病院に行ってもらいたい」という内容でした。

 

 

――それですぐに病院に向かったんですか?

野本さん:最後の打ち合わせ中だったので、それを切り上げて新幹線で長岡に戻って、翌朝に診断書をもらって、そのまま「長岡赤十字病院」へ車を走らせました。病院で診断書を渡すと、すぐに「こちらの別室へ」と受付の人が案内してくれて、専門の先生が来るまでは安静にするように言われたんです。根が楽観的な性格だとはいえ、さすがに「もしかして、ヤバいのかなぁ……」と心配になったことを覚えています。

 

――身体のどこが悪いのかも分からないまま安静にと言われても、ただただ不安だけが残りますよね……。

野本さん:それで先生に診てもらった結果、「一刻を争う病気です。80%の確率で急性骨髄性白血病」と診断されました。「すぐに治療をはじめないと危険」とも言われて……緊急入院から検査がはじまりました。

 

――そのまま緊急入院ってことは、かなり危険な状態で生活していたってことですよね。

野本さん:はい。先生からは、「数日遅れていたら、もしかしたら死んでいたかもしれない……」と言われたから、かなり危険な状態だったんでしょうね。……ちなみに白血病と診断されたのは、僕の誕生日である6月20日でした。複雑な心境の誕生日だったな(笑)

 

移植するには、HLAのフルマッチを探すことが必要。

――治癒に向けては、どんな治療を行ったんですか?

野本さん:何種類もの薬を試しながら、化学療法を行いました。でも、生存率を上げるためには、骨髄移植がいいとされていて、同時並行でHLA(白血球の型)がフルマッチするドナーを骨髄バンクや家族から探す必要がありました。

 

――HLAのフルマッチというのは?

野本さん:人によってHLAの構造は違います。だから、骨髄を移植したときに移植片対宿主病(GVHD)が強く出る確率を少しでも下げられるように、なるべくHLAが一致しているドナーを探す必要があるんですよ。

 

 

――なるほど。それで、フルマッチするドナーは見つかったんですか?

野本さん:兄弟でHLAが合うのが理想ということで、弟にお願いしてみたら、なんとフルマッチだったんです。弟は性格が違うし、顔も似ていないから合っていたら嬉しいなぐらいの気持ちだったんですけど、最もリスクを抑えた移植ができて、本当に感謝しています。

 

――いや、それは本当によかったですね。移植してから退院するまでは、どのくらいの期間だったんですか?

野本さん:移植した骨髄が定着して、元気になれば退院できるんですけど……なかなかそうもいかなくて。入院から87週後の2019年3月に、一度本退院をしましたが、移植片対宿主病の症状が酷くなってきて、5月後半に肝臓や腎機能に異常が現れたり、大腸と小腸が機能しなくなったりして、再入院に……。症状が落ち着くまでに1カ月半くらいかかったので、結局、合計107週ぐらい入院していました。

同じ病気の人たちにも、元気を届けたい。

――それでは、「g.m.design&art works」の活動について教えてください。現在はオリジナルTシャツを販売して、その売上の一部を骨髄バンクや日本赤十字社などに寄付する予定とお聞きしましたが、この活動はどんなキッカケでスタートしたんですか?

野本さん:昔は治らない病気といわれていた白血病ですけど、自分は今までの生活に近い状態に戻ることができました。この経験や体験を、同じ病気の人たちにも伝えて、ちょっとでも元気になってもらえる活動をしようと考えていたんです。でもコロナ禍で病院への出入りができなくなってしまいました。だから、好きな絵やファッション、仕事で培ってきたデザインスキルを生かして何か貢献できないかと違う角度からのサポートを考えて、Tシャツ制作をはじめたんです。

 

――なるほど。Tシャツには英語のメッセージがプリントされていますよね。どんな言葉が書かれているんですか?

野本さん:「偉大なサバイバーであれ」「病は気から」を意味する英文がデザインしてあって、あとは入院から復調を実感できた日までの日数を示した「1096」の数字もあしらいました。

 

 

――そういうメッセージが記されていたんですね。普段から着られるデザインだから、購入しやすそうですね。

野本さん:病気でふさぎこまないで、楽しみながら回復へ向かった方がいいと思っているんです。だからいろんな人が着てくれると嬉しいです。……あ、あと、治療が上手くいった人の絵や版画って、願掛けとして病院に飾られていることが多いんですよ。だから、自分はこれだけ元気になった、ということも見てもらうために、自分が書いた絵を病院へ持って行ったり、患者さんへ贈ったりもしたいと考えています。

 

――「g.m.design&art works」として、今後はどんなことにチャレンジしていきたいですか?

野本さん:病気を売り物にしている、と感じる人もいるとは思います。でも、活動から寄付を続けて、自分みたいに治療が上手くいく人をひとりでも多く増やせるように、間接的かもしれないけどサポートをしていきたいと思っています。Tシャツも第2弾、第3弾とリリースしていく予定ですし、紫外線から身を守らなければいけない移植後の患者さんの必需品となるキャップやハットも作っていきたいです。

 

 

 

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