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移動水族館や廃校活用に取り組む「WHALE TAIL」の滝沢日向子。

子どもたちは夏休みに入りましたが、この暑さもあり、昔に比べて外で遊び回る子が少なくなっているようです。そんな子どもたちに、もっと自然に触れてほしいという思いで「移動水族館」をおこなっているのが、「WHALE TAIL(ホエール・テール)」の滝沢さん。蝉しぐれが降り注ぐ新潟市中之口農業体験公園で、滝沢さんから様々な取り組みについてのお話を聞いてきました。

 

 

WHALE TAIL

滝沢 日向子 Hinako Takizawa

1996年長岡市生まれ。専門学校卒業後、和歌山県にあるくじらの博物館に勤務。結婚を機に新潟へ戻り専門学校の講師を務める。2024年に地元の廃校活用のため、任意団体「WHALE TAIL」を立ち上げると共に、移動水族館「AQUA SWITCH(アクア・スイッチ)」の運営も手掛ける。2025年にはJR巻駅前にて子育てママ専用夜間カフェ「ヨナキリウム」をオープン。

廃校活用のために立ち上げた「WHALE TAIL」。

——滝沢さんが代表を務める「WHALE TAIL」っていうのは、どういう団体なんですか?

滝沢さん廃校になった旧潟東小学校の校舎を、有効活用するために立ち上げた任意団体なんです。

 

——どうして、そういった活動をはじめたんでしょうか?

滝沢さん私自身がふたりの子育てをしてきた中で、新潟に子供の遊び場が少なく、子どもを遊ばせながら親も息抜きできる場所があったらいいなって思ったことがきっかけなんです。地元にある旧潟東小学校の廃校舎を活用して何かできないかと思って調べてみたら、文部科学省が「未来につなごう みんなの廃校プロジェクト」として廃校活用を推進していることを知りました。

 

 

——へぇ〜、そんなプロジェクトがあるんですね。

滝沢さんそうなんですよ。そこで文科省に連絡して情報収集をし、新潟市に事業案を提案して区役所でプレゼンをさせていただきました。私のプランでは、体育館を子供の遊べるスペースにしたり、空き教室を使っていろいろな生き物を展示したり、夜泣きする赤ちゃんを抱えるママのための夜間カフェを運営するというものでした。

 

——想像以上にすごい施設になりそうじゃないですか(笑)

滝沢さん新潟市からも予算的に実現するのは難しいと言われました。その上、昨年起こった能登半島地震で被害にあった小学校の備品も一時保管されているということで、その件に関しては保留ということになったんです。

 

——それは残念でしたね……。

滝沢さんだからいくつかあった事業案の中でもできることは自分でやってみようと思い、「WHALE TAIL」の事業として移動水族館や夜泣きカフェ、子ども食堂などの活動に取り組んできたんです。

 

イルカの飼育やショーの企画運営に携わる。

——「夜泣きカフェ」や「子ども食堂」はわかるんですけど、どうして「移動水族館」をやろうと思ったんでしょうか?

滝沢さん私は子どもの頃から自然のなかで遊ぶことが大好きで、高校生まで虫やカエルを探して遊んでいるような子だったんです。ちなみに、今もカエルを飼っています(笑)。だから小さい頃の将来の夢はアフリカのアニマルレンジャーや獣医など、生き物と関わる仕事がしたいと思っていました。

 

——カエルを飼っている時点で、ガチの生き物好きですよね(笑)

滝沢さん高校時代はダンス部に所属していて、自分たちのパフォーマンスを観客が笑顔で楽しんでくれるのを見て、やりがいを感じるようになり、生き物と一緒にパフォーマンスができるイルカのトレーナーになりたいと思うようになったんです。そこで新潟市の専門学校で水族館職員について学んだ後、和歌山にある太地町立くじらの博物館に就職しました。

 

——ずいぶん遠いところに就職したんですね。

滝沢さん水族館のような施設は欠員募集の場合がほとんどなので、タイミングが合わないとなかなか就職できないんですよ。あと水族館に就職できたとしても、必ずしもイルカを担当できるわけではないんです。「くじらの博物館」だったら確実にイルカの飼育に関われるだろうと思って受験を決めました

 

 

——なるほど。それで、イルカの飼育には関わることができたんですか?

滝沢さんイルカの飼育やショーの運営に携わりました。ただ想像以上にハードな仕事で、勤務時間が8時間とすると6時間は走っているようなもので、食べても食べても太らずに痩せていく一方でした(笑)。酸素ボンベを背負って水中にいることも多かったですね。でもイルカと一緒に仕事ができるし、楽しんでいるお客様のキラキラした笑顔を見られるので、とってもやりがいのある仕事でした。

 

——夢が叶ったわけですね。イルカの飼育においては、どんなことを心掛けて仕事をしていました?

滝沢さんいちばん気をつけていたのはイルカの健康管理ですね。目や動物の動きをよく観察して、少しの異変も見逃さないように気をつけていました。生命を預かる仕事ですので、責任を持って臨んでいましたね。

 

——言葉の通じない相手ですから、健康状態を知るのも大変ですよね。その博物館には、どのくらい勤めていたんですか?

滝沢さん2年くらいです。結婚を機に新潟へ戻ってきてからは、母校の専門学校で講師をやりながら、個人事業として「移動水族館」をはじめるようになったんです。

 

生き物に触れて、子どもたちに学んでほしいこと。

——その「移動水族館」っていうのは、具体的にどういうものなんですか?

滝沢さんひとつはアメフラシ、ウニ、ヤドカリ、カニなど磯の生き物と触れ合ってもらう「タッチプール」です。もうひとつは「ザリガニ釣り」で、子どもたちに大人気なんですよ。

 

——そうした生き物はどのように集めているんでしょうか?

滝沢さん用水路や海に出かけて探してきます。最初はひとりで夜の海に出かけていたんですけど、まわりから「危ない」と止められたので、それからは誰かに付き合ってもらうようになりました(笑)。

 

 

——準備にもいろいろな苦労があるんですね。

滝沢さんそうなんですよ。でも、その甲斐あって多くの親子から喜んでもらっています。アニメを観たりゲームをしたりとインドアで過ごすことが多い最近の子どもたちに、いろいろな生き物と触れることを通して生命や環境について学んでほしいし、自然の面白さや素晴らしさを知ってほしいんです。

 

——滝沢さんが子どもの頃に経験したことを、今の子どもたちにも経験してほしいわけですね。今後はどんなふうに活動していきたいと考えているますか?

滝沢さん保育園や小学校への出張ふれあい水族館、大型商業施設での展開へと活動を広げていきたいですね。あとはママと赤ちゃんのための夜カフェとしてオープンしたJR巻駅前の「ヨナキリウム」にも力を入れていきたいと思っています。地域活性の一端を担っていけたらいいなと。

 

 

 

WHALE TAIL

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