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本格的な日本料理が気軽に楽しめる「四季彩和食 娃」。

JR新潟駅南口のけやき通り沿いに「四季彩和食 娃(しきさいわしょく あい)」という日本料理店が開店しました。落ち着いた雰囲気のお店にお邪魔して、店主の小山さんからお店やお料理のこだわりを聞いてきました。

 

 

四季彩和食 娃

小山 誠 Makoto Koyama

1985年新潟市東区生まれ。新潟市内の旅館で料理人として12年働いた後、上京して南青山にある有名日本料理店で2年間修業。新潟に帰ってからは新発田市の日本料理店を経て、2025年にJR新潟駅南口で「四季彩和食 娃」を開店する。仕事の反動からか、がっつり系のラーメンが好き。

 

息子に父の背中を見せるため、東京の有名店で修業。

——開店おめでとうございます。小山さんは、いつ頃から料理人になりたいと思ったんですか?

小山さん:我が家では両親が働いている間、姉と妹が食事の準備をしていたんです。その手伝いをしているうちに、料理が楽しいと感じるようになりました。特に「美味しい」と褒めてもらえたときは嬉しくって、その言葉を聞きたくて料理人になったんだと思います。

 

——「美味しい」という言葉が、料理人としての原点になっているわけですね。どんなところで修業を積んだんでしょう?

小山さん:姉の働いていた旅館で12年間お世話になりましたが、息子が小学校の文集に「将来は料理人になりたい」と書いていたのを見て、東京の南青山にある日本料理店で修業をすることにしたんです。

 

 

——それは、どうして?

小山さん:息子が憧れてくれるような料理人になって、父親としての背中を見せたいと思ったんです。それで2年間という約束のもと、妻と子を新潟に残したまま単身で上京しました。修業先に選んだのは、料理人向けの雑誌に掲載されていた有名店だったんですよ。

 

——さぞかしシビアな修業だったんでしょうね。

小山さん:修業をはじめてすぐに、親方から定規を持っているか聞かれました。何に使うのかと思ったら、そのお店では食材をミリ単位で測って切るんですよ。その経験は今でも身体に染み付いています。

 

——そんなにきっちり測るのは、どうしてなんですか?

小山さん:味はもちろん、見た目でも楽しんでもらうことを大切にしているんです。新潟では厚めにお刺身を切るんですが、修業先では品よく小さめに切るんですよ。おかげで私も料理の見た目を大切にするようになり、絵画や山を眺めて勉強する習慣ができました(笑)

 

 

——味だけでも大変なのに、さらに見た目までこだわるとは……。修業はきつかったんじゃないですか?

小山さん:毎日が辛くて、2年間がとても長く感じられました。新潟に帰りたいと思いながら近所の公園で毎晩落ち込んでいましたが、家族にわがままを言って上京した手前、中途半端に帰るわけにはいかないと自分に言い聞かせて頑張りました。「四季彩和食 娃」を開店することになって親方の元へ挨拶に行った際には、修業時代の気持ちを忘れないように、その公園の写真を撮ってきたんです(笑)

 

——かなり辛い2年間だったことが伝わってきます。修業を終えた後は、新潟へ戻ってきたんですか?

小山さん:はい、新発田にある日本料理店で料理長を務めました。ミシュランのビブグルマンをいただいたのをはじめ、「全国日本料理コンクール」の「技能賞」や「新潟ガストロノミーアワード2024」をいただいたりして、南青山の店で修業するきっかけになった雑誌に、今度は私が掲載してもらえるようになったんです。とても感慨深かったですね。

 

読める人の少ない「娃」、店名の秘密。

——独立してご自分の店をはじめることは、以前から考えていたんでしょうか?

小山さん:南青山で修業をはじめた頃から考えていました。コロナ禍の影響が心配ではあったものの、人生を後悔したくなかったので40歳の節目に独立することにしたんです。

 

——新潟駅南口でお店をはじめたのは、アクセスがいいからですか?

小山さん:それもありますけど、イルミネーションに憧れていたので、どうしてもけやき通り沿いで開業したかったんです。客席からイルミネーションが見えるよう、壁に窓をつけたほどなんですよ。今から冬を楽しみにしています(笑)

 

 

——本当だ(笑)。内装でこだわったところは、他にもあるんでしょうか?

小山さん:自慢はカウンターです。「この木なんの木」っていう曲が流れるCMに映る「モンキーポッド」という樹の一枚板で、新潟県内ではうちにしかないんです。開店祝いにいただいたものですが、普通に買ったら100万円以上はするもので、木材に詳しい人は喜んでくださいます。

 

 

——立派なカウンターだということはわかります(笑)。入口の扉も風情がありますね。

小山さん:あれは加茂の「大湊文吉商店」さんでつくられた桐組子細工で、春夏秋冬が表現されたものなんです。新潟の伝統工芸品をお店に取り入れたかったので、料理のトレイや飲み物の下に敷くコースターにも桐組子細工を使っています。

 

——ところで、ずっと気になっていた「娃」っていう店名の由来を教えてください。

小山さん:なかなか読めないですよね(笑)。「美人」や「美しい」といった意味のある「あい」と読む言葉なんです。五十音順の電話帳では上に名前が載ることから、父が営むクリーニング店の店名に使っているんです。クリーニング店は継げなかったので、せめて店名だけでも受け継ごうと思いました。

 

——そうだったんですね。それにしても「愛」ではなく「娃」を使うのは珍しい。

小山さん:「愛」がつく店名は多いので、他とは違った漢字を使ったんでしょうね。「美人」という意味が、私の目指す華やかな料理にもマッチして気に入っています。ロゴには「娃」という字にチューリップの花をあしらっていて、新潟県の花というだけではなく「永遠の愛」という花言葉もあるので、「永遠に愛される店でありたい」という思いを込めたんです。

 

お金よりも「美味しい」の言葉がほしい。

——さて、小山さんが目指すのはどんなお店でしょうか。

小山さん:本格的な日本料理が、お手頃な価格で誰にでも楽しめる店です。

 

——お料理についても聞かせてください。

小山さん:お造りは食材を生かしながら、目でも楽しめるよう心掛けています。大根のツマは使わずにここまで凝っているものは、あまりないんじゃないかな。魚は佐渡の魚屋さんから直送してもらっているんですが、その魚屋さんは名だたる名店にしか卸していないんです。

 

 

——それはすごい。そういう漁師さんから仕入れる魚って、やっぱり違うものですか?

小山さん:魚の処理が上手なので、発送に1日かかっても魚の鮮度が落ちないんですよ。あと新発田牛の炭火焼も食べてみていただきたいです。脂が良質なので胃もたれしないんですよね。レンガで自作した窯を使って炭火焼するんですが、壁に窓を作ってカウンターの客席から調理を見ていただけるようにしています。新潟で新発田牛が食べられる店は少ないと思うので、ぜひ味わってみてほしいです。

 

 

——炭火焼をする際の音や香りも楽しめるんですね。他にもおすすめはありますか?

小山さん:名物デザートの「アンショコラ」があります。チョコレートにあんこを合わせたもので「和食にチョコは合わない」という常識を覆した逸品です。修業先のお店で提供していて、人気ヴィジュアル系ロックバンドのメンバーもお気に入りでした。

 

——どの料理にもこだわりが感じられて、とっても美味しそうです。調理をする際にこだわっていることはあるんでしょうか?

小山さん:毎日鰹で出汁をとって、ご注文をいただいてからお刺身を切ったり、出汁巻玉子を焼いたりしています。

 

——つくりたてを食べてもらうようにしているんですね。お店をはじめて良かったと思うのはどんなときですか?

小山さん:月並みかもしれないけど、お客様に「美味しい」と言ってもらえたときです。ただその言葉が欲しくて、料理人をやっているようなものなんですよ。

 

——ところで息子さんはその後、料理の道に進んだのでしょうか?

小山さん:古町の料亭で修業中です。ときどき店の手伝いをしてくれるんですけど、仕事中は私に対して敬語を使うんですよ(笑)。いつか息子と一緒に店をやって、ゆくゆくは継いでくれたら嬉しいですね。

 

 

 

四季彩和食 娃

新潟市中央区笹口1-19-9 アルプスNビル 1F

050-8888-0718

17:30-23:00

日曜、第三月曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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