Things

若き3代目が描く、新発田の老舗中華料理店「天龍軒」の未来。

新発田市の中華料理店では、餃子を注文するとお皿にカラシがついてくることが多いのだとか。その「餃子+カラシ」の文化を広めたのが、地元で60年近く愛され続けている老舗「天龍軒」です。今回は3代目の小野塚さんに、餃子づくりのこだわりや、これからの「天龍軒」について、いろいろとお話を聞いてきました。

 

 

天龍軒

小野塚 悠 Haruka Onozuka

1994年新発田市生まれ。新潟薬科大学でバイオテクノロジーや食品科学について学んだ後、同大学院に進学し、食品関連の微生物の研究に取り組む。修了後、実家が営む「天龍軒」に3代目として入る。趣味はスノーボードなどのウィンタースポーツ。

 

「天龍軒」といえば、カラシで食べる大きな餃子。

——本日はよろしくお願いします。お店はご家族皆さんでやられているんですか?

小野塚さん:はい。2代目である父と、母、姉、僕の4人です。

 

——調理場で作業している様子も見せていただきましたけど、明るくて楽しそうなご家族ですね。

小野塚さん:いやあ、ぶつかってばかりですよ(笑)

 

——お店をはじめられたのは、小野塚さんのお祖父さまなんですよね。

小野塚さん:そうですね。昔「東華楼」さんで修行していた祖父が、独立して作ったのがこの店です。餃子もそのときに持ってきたと聞きました。再来年で創業60年になります。

 

——「東華楼」さんの餃子、大きいですよね。「ジャンボ餃子」が新発田に広まったきっかけということですか。

小野塚さん:創業時からこの大きさの餃子を出しているので、「ジャンボ」っていう自覚はないんですけどね(笑)。それと、「東華楼」さんと同じように、うちの餃子にもカラシが付いてきますけど、それも当時、新発田では初めてだったみたいです。

 

 

——餃子にカラシって、ありそうでなかなかない組み合わせですよね。どうやって食べるのがおすすめですか?

小野塚さん:直接餃子にカラシを付ける方もいれば、自家製のタレと混ぜて召し上がる方もいらっしゃいます。「カラシ多めに付けといて」って、頼まれることもありますよ。

 

——餃子にはどんなこだわりがあるのでしょうか?

小野塚さん:素材にはこだわっています。豚肉は県内産のものを使っていて、毎朝ひき肉にするところからはじまります。キャベツは特別栽培で、農薬があまり使われていないような、安全なものを使っています。あとは、キャベツの場合は旬もあるので1年を通じて同じものを作り続けるっていうのは難しいですが、その時々でベストな餃子を出せるようにしています。むしろ毎日作っているからこそ、できることなのかもしれないですね。

 

 

——他にはどんなメニューが人気なんでしょうか?

小野塚さん:五目ラーメンと麻婆麺はどちらも人気で、ぜひ推したいところです。それしか食べないっていう常連さんもいらっしゃいます。

 

——五目ラーメンには、半熟卵が乗っているんですね!

小野塚さん:はじめに卵を溶いちゃうか、そのまま食べるか、っていうところですよね。ちなみに僕は、先に卵を溶いて、麺に絡ませながら食べるのが好きです(笑)

 

大学で学ぶことと、現場で学ぶこと。その両方の経験がプラスに。

——小野塚さんは3代目とのことですが、お店を継がれたのはいつなんですか?

小野塚さん:大学院を出た後にこの店に入ったので、3年目です。

 

——学生時代はどんなお勉強を?

小野塚さん:バイオテクノロジーや食品科学について学んで、大学の後半と大学院の2年間は、微生物の研究をしていました。お酒の研究もしたので、酒造関係の会社に勤めようかとも思っていたんですけど、うまくいかなくて。そのときちょうど、この店がごちゃごちゃしていたタイミングだったので、店に入ることにしました。

 

——調理の技術はすでにあったんですか?

小野塚さん:高校生の頃から、大学に通っている間もずっと店の手伝いはしていたんです。なのですぐに即戦力として働きました。

 

——そうだったんですね。仕事をしていて、大学で勉強したことが生かされているなと感じることはありますか?

小野塚さん:大学では栄養科学とかHACCPなど食品衛生について勉強していたんですけど、現場にいるとそういう専門知識は得られないですよね。反対に、現場に来てからは授業では学べない調理技術を学べているので、両方経験できているのは自分にとって大きいです。

 

背中を押してくれたのは、恩師の言葉。

——小野塚さんがお店をやっていて嬉しいのはどんなときですか?

小野塚さん:お客さんから帰り際に「美味しかったよ」とか「ごちそうさま」って言ってもらえるのが嬉しいですよね。あとは、大学の後輩や、中学校の同級生とか、大切な人たちが店に来てくれるのはとてもありがたいですし、「やっててよかったな」って思います。

 

——学生時代も、お友達に手料理を振舞ったりしていたんですか?

小野塚さん:研究室に入ってからは、発表の後の打ち上げとかで腕を振るっていました(笑)。そもそも僕自身、料理を作るのとか、仲間内で集まって飲み食いするような場を作るのが、すごい好きだったんです。

 

——小野塚さんが調理の道に進もうと思ったのも、その経験が影響しているんでしょうか?

小野塚さん:そうですね。大学に入ってから友人たちに料理を振舞うようになって、みんなが食べて喜んでくれるのが嬉しかったっていうのが、かなり今につながっているのかなと思います。

 

——ちなみに、そのときにはどんな料理を?

小野塚さん:中華だけじゃなくて、いろいろなジャンルの料理を作っていました。学生時代はイタリア料理とかも独学で勉強していたんです。

 

——へ~、本当に料理が好きなんですね。先ほど、卒業後は企業への就職を考えてたとおっしゃっていましたけど、実家を継ぐことを後押しするような出来事が何かあったんでしょうか?

小野塚さん:「自分には料理の道が合っているな」とは思っていても、「大学まで行ってこの店で働くのか」っていうのが、正直ずっと引っかかっていたんです。だけど、研究室の恩師が「修士で大学院を出て、調理師になったっていいじゃん」って言ってくださったことが、とっても心強くて、かなり後押しされました。先生本人は酔っぱらっていたので、覚えていないと思うんですけど(笑)

 

「昔ながら」が「時代遅れ」にならないように。伝統にあぐらをかかない店づくりをしたい。

——3代目として、小野塚さんは「天龍軒」をどんなお店にしていきたいですか?

小野塚さん:来てくださったお客様から「変わらないね」って言ってもらえるのも嬉しいんですけど、個人としては、アップデートを続けたいというか。「前来たときよりも美味しいね」とか、「来るたびに美味しい」と言ってもらえる店にしていきたいです。

 

——伝統の味は守りつつ、より良いものに変化させていきたいと。

小野塚さん:そうですね。「昔ながら」っていうのも大切なんですけど、「昔ながら」も、ひとつ間違うと、「時代遅れ」になってしまうので、伝統にあぐらをかかないというか。何かできることがあるんじゃないか、っていうのは考えています。

 

 

——小野塚さんの今後の夢を教えてください。

小野塚さん3代目の僕としては、当面はこのお店を守っていきたいなと思います。ただその一方で、ひとりの料理人として、もっといろいろなことを知りたいっていう気持ちがあるんです。もしかしたらこの店を少しお休みさせてもらって、この街、この国から出て、勉強してみるのもいいなと思っています。

 

——ちなみに行ってみたいところは?

小野塚さん:さっきもちらっと出たんですけど、イタリアに行ってみたいって気持ちがかなり強くて。

 

――中国ではないんですね(笑)

小野塚さん:そこは中華じゃないのかよって感じですよね(笑)。中華も、この店も大事にしたいんですけど、やっぱり個人としては、料理人としていろんなものを吸収したいって思うんです。もちろん、ここをほったらかしにはしないですけど。もう長くやっているので、設備とかもガタがきているんですよ。常連さんが多いので店を閉めることはないと思いますけど、いつか大きな区切りをつけなきゃいけないのかなと感じています。でもそのときは、外から学んできことを、何かしらのかたちで、この店にフィードバックできればいいなと思います。

 

 

3代目としてだけではなく、ひとりの料理人としていろいろな知識や技術を吸収した小野塚さんがつくる未来の「天龍軒」は、どんなお店になるのでしょう。お話を聞いて、今からとても楽しみになりました。新発田を訪れた際には、カラシで食べるボリューム満点の餃子を味わいに、ぜひ一度足を運んでみてください。小野塚さん一家が温かく迎えてくれるはずです。

 

 

天龍軒

新潟県新発田市大手町2- 11-8

0254-22-4759

10:00-16:00(15:30 LO)

第1・3・5水曜日、毎週木曜日定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP