大人でも楽しんで学べる「習いごと」を紹介する特集企画『オトナの習いごと』。今回お話を聞いたのは、新潟市内でピアノを教えている、「エンパワーピアノ教室」の大響さんです。大響さんは5歳からピアノをはじめ、ストリートピアノでの演奏活動も行っています。教室を立ち上げたきっかけや、教室のこと、大響さんが大切にしていることなど、いろいろ聞いてきました。
エンパワーピアノ教室
大響 Daiki
1993年新潟市出身。昭和音楽大学を卒業後、アパレルショップやピアノ教室などで働く。4年前からストリートピアノでの演奏活動をはじめ、ソロリサイタルやロビーコンサートを行い、アナウンサーユニット「イケメン四銃士」と共演する。今年自身のピアノ教室である「エンパワーピアノ教室」を立ち上げる。読書が好きで、ミステリーをよく読むそう。好きな作家は湊かなえ。
——早速ですが、大響さんのこれまでのピアノ経歴を教えてください。
大響さん:ピアノは5歳からはじめたんです。そのまま続けていって、高校卒業後は音楽大学に進んでピアノを専攻していました。今は老人ホームで働きながら、演奏活動や講師としてピアノを教える活動をしています。
——ちなみに、ピアノをはじめたきっかけは?
大響さん:母が保育士として働いていて、家にピアノがあったんです。それでなんとなく触りはじめたのがきっかけでしたね。母は音楽が好きだったので、僕にもピアノを触れさせたかったのかもしれません。
——お母さまの影響が大きかったんですね。それから、今までピアノをずっと続けられています。
大響さん:続けてこられたのは、先生の影響が大きいと思います。僕、ピアノを習っていて一度も先生に怒られたことがないんですよ。僕にとってはそれがすごくありがたくて。いい先生に恵まれたから、ピアノを続けることができたんだと思います。ただ、当時は男の子でピアノを習っているって珍しくて、周りには隠していたんです。
——ふむふむ。
大響さん:でも、中学生のときに転機があって。僕のクラスには、ピアノを弾ける子がいなくて、僕が合唱コンクールの伴奏をすることになったんです。そのとき、クラスメイトから「すごく難しい曲が弾けるんだね」って感心されたんです。そのとき、はじめてピアノを弾いている自分を認めてもらえた気がしました。
——それはとても自信になる言葉だったんでしょうね。
大響さん:そうなんです。自分に自信を持つことができた、とても大きな出来事になりました。そのときにピアノの道に進むことを決めて、「ソロリサイタルを開くこと」と「ピアノ教室を開くこと」をいつかしたいと、ぼんやり思っていました。
——そこからピアノを学ぶために、音楽大学に進まれた、と。
大響さん:大学ではピアノだけではなく、バイオリンやチェロなどとセッションをしたり、オペラの伴奏をしたりしていました。特に歌の伴奏をしているときは、人の呼吸に合わせて演奏するのが難しいんですけど、楽しかったんです。大勢の人の前で演奏する楽しさもこのとき知って。この頃から、人前で演奏したいっていう気持ちも強くなりました。
——大響さんは4年前から、ストリートピアノで演奏活動をはじめられました。
大響さん:新型ウイルスが流行って、発表会やイベントも全部中止になっちゃって。そのときに朱鷺メッセにストリートピアノが置かれたんです。それを見た父が「絶対行ったほうがいい」って言ってきて。普段、そんなこと言われないから、驚きつつも行ってみることにしたんです。
——行ってみて、どうでした?
大響さん:演奏会みたいに、誰かに聴いてもらえるのが嬉しかったですし、単純に人前で演奏できるのが嬉しかったですね。その後、新潟にストリートピアノを設置しようっていうチームに参加して、演奏活動をはじめました。活動の一環としてSNSで発信もはじめて、「イケメン四銃士」っていうBSNのアナウンサーのユニットの伴奏をさせてもらうこともありました。
——ストリートピアノから、活動の幅が広がっていったんですね。
大響さん:自分の演奏を通じて元気になってくれる人がいるって分かって、「あのとき行動してよかったな」って改めて思っています。この活動のおかげで、ずっと夢だったソロリサイタルも開催できました。リサイタルを開催するまで、いろんな人に背中を押してもらえたのが、自信になったと感じていて。今度は自分が誰かを応援したいなって思うようになったんです。
——そうしてできたのが「エンパワーピアノ教室」なんですね。
大響さん:名前には「力を与える」とか「勇気づける」という意味の「エンパワー」を使いました。誰かの夢が大きく叶わなかったとしても、次の一歩につながるようなことが、ピアノを通してできるような教室にしたい、という思いを込めています。
——こちらの教室は大人を対象に、1回からレッスンを受けることができます。
大響さん:大人の方は家庭や仕事で忙しいでしょうから、定期的には通えないと思うんです。ピアノをやりたいと思う方が長く続けられるように、この仕組みをとっています。曲選びやレッスンの進め方も、生徒さんの「やりたい」という思いを尊重しているんです。
——具体的に、どうやってそれを実現しているのでしょう。
大響さん:生徒さんのやりたい曲を中心にレッスンを進めていくのですが、中には「この曲のこの部分だけ弾きたい」という方もいらっしゃいます。そういった方のために最初からではなく、特定のパートだけを教えることもしています。
——大響さんが、ピアノを教えるとき大切にしていることを教えてください。
大響さん:生徒さんに指摘をするとき、まず褒めるようにしています。昔、ピアノの先生に怒られたのが怖くてピアノをやめてしまったって人が多いんですよ。それはもったいないじゃないですか。まずはピアノを好きになってもらえるように、褒めることは大事にしています。僕のレッスンは「できることを増やしていく時間」にしたいと思っています。
——と、いいますと?
大響さん:大人の方はピアノを習いはじめた背景や目的がそれぞれ違います。だから完璧を求めるより、「できた」と感じる瞬間を大切にしたくて。生徒さんの自信にもつながりますし、「次はこれも弾いてみたい」って前向きになってくれると思うんです。あとは、ピアノをストレスなく楽しんでもらうために「練習してきてください」って言わないようにしています。
——大響さんの考える、大人になってからピアノを習うことの良さとは?
大響さん:ご家庭やお仕事も大切にしつつ「自分の時間を持ちたい」と思っている生徒さんが、今来てくれています。ピアノの演奏を通じて、自分の気持ちが表現できるようになって、生徒の皆さんの表情が豊かになっていくんです。レッスンを通じて「子どもの頃にピアノを習っていたけど、ここではじめてピアノが楽しいと思えた」とか「自分に自信が持てるようになった」って言ってくださる方も多くいらっしゃいます。
——レッスンを通じて、前向きになっていく方が多いんですね。
大響さん:それからどんどんピアノを好きになって、演奏の上達のために頑張る方もいますし、自分のペースで楽しむ方もいます。ピアノを習ったことがない方でも、30分から気軽にはじめられるので、気軽に触れてもらえたら嬉しいですね。
——教室をはじめられて、いかがですか?
大響さん:今まで自分でたくさんピアノの練習をしてきて、それなりに納得できる練習方法をご提案できると思っていたんです。でも、いろいろな生徒さんに教えていく中で、より伝わりやすい教え方や、人の得意・不得意に合わせた練習方法を、さらにもっと見つけることもできていて、ここは僕自身にとっても成長できる場所になっているんです。
——最後に、大響さんの今後の目標を教えてください。
大響さん:大人の方にもっと気軽にピアノを楽しんでもらうために、これからもこの教室を続けて、ピアノの楽しさを知ってもらえたらいいなと思っています。生徒さんを集めて、発表会も開けたらなって。生徒さんがピアノを楽しむ姿を見て、お友達やお子さんが「ピアノをやってみたい」と思うような、ポジティブな循環をつくっていきたいと思います。
エンパワーピアノ教室