New Eyes Niigata #08 トマ

New Eyes Niigata

2026.05.25

目に映るもの、出会う人、そして日々の生活……海外から新潟にやってきた人たちは、今、この街でどんなことを思い、感じているのでしょう。新シリーズ『New Eyes Niigata』では、海外出身の皆さんが歩んできたこれまでの人生の物語を振り返りながら、彼らが「新潟」という新しい環境で見つけた、小さな発見や気づきをお伝えしていきます。

 

8回目は、フランス・ボルドー出身のトマさんです。現在は、カフェや寮、温泉の運営、国際交流などを行うNPO法人「かわみなと」で、阿賀町の地域おこし協力隊として活動しています。どのような経緯で遠く離れた新潟の地へ辿り着き、暮らしはじめることになったのでしょうか。その背景には、あるロードトリップでの偶然の出会いがありました。

 

 

企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu

 

「Authentic」な日本を求めて辿り着いた、阿賀町での出会い。

――トマさんは、どんな経緯で阿賀町へたどり着いたのでしょうか。

トマさん:きっかけは1年半前の、友達と一緒に日本を巡ったロードトリップでした。車を借りて、福島、新潟、富山、金沢といろんな地方をまわって。僕は都内よりも、日本の地方の景色を見てみたいと思っていたんです。

 

――あえて地方の景色を選んだ理由はなんだったんですか?

トマさん:東京や京都、大阪のような場所よりも、地方をまわることで「Authentic(本当の日本)」が見えると思ったんです。日本の美しい紅葉を見たかったから、時期を10月に選びました。でも、そのときは少し早くて、思い描いていたような赤は見られなかったんですけど(笑)

 

――その旅の途中で、阿賀町に立ち寄られたんですね。

トマさん:そうです。そこで、今働いているNPO法人の社長に出会いました。彼がフランス語を話せたこともあって、将来についてたくさん話をして、僕は大阪でフランス語の先生になるつもりだと伝えたんです。

 

 

――大阪で先生になるつもりだったのが、なぜ阿賀町で働くことに?

トマさん:友人の多い大阪へ行くつもりだったんですが、そのタイミングで社長から「一度お試しで働いてみないか」と誘われたんです。実際にやってみたら想像以上に楽しくて、4月からの採用がすぐに決まりました。無事に仕事が決まったこともあり、その後は大阪へ行って、貯金を切り崩しながら、友達と遊び尽くす最高の時間を過ごせました(笑)

 

――お試しでやった仕事が、阿賀町に腰を据える決め手になったんですね。現在は「地域おこし協力隊」として、どんなお仕事をされているんでしょうか?

トマさん:阿賀町には全国から高校生が集まる高校があって、僕の仕事は彼らが生活する寮のサポートです。寮生が阿賀町で安心して楽しく過ごせるように支えるのが基本ですね。そこに僕なりのプラスアルファとして、海外の料理を作って異文化の要素を加えたり、フランス文化を知ってもらえるような祭りを開催したりしています。他にも僕たちが運営している温泉の手伝いや、冬は除雪もやりますよ。

 

 

誇りである名刺を胸に、新しい居場所を作る。

――トマさんは、学生時代、日本語を勉強したということですが、そのきっかけはなんだったんですか?

トマさん:子どもの頃から日本のサッカーやアニメに興味があって、日本という遠い国へのロマンやワクワク感がありました。もともと大学では、政治について学んでいたんですが、日本へ行きたい気持ちが積み重なり、卒業後に語学学校に入って日本語の勉強をはじめました。日本語が話せなくても日本へ行くことはできましたが、言葉を理解することで、より深く国を知ることができると思ったんです。

 

 

――日本で初めて旅行したときの、印象に残っていることってありますか?

トマさん:いちばん強く感じたのは「平和な社会」だということでした。料理が美味しいとか交通が便利という以上に、ここなら安全で平穏な人生が送れると直感したんです。

 

――フランスでの生活と比べて、どのような部分にそう感じたんでしょうか。

トマさん:今のフランスは若者にとって、経済状況がとても厳しくなっています。車や家を買うことも難しいです。だから僕は20歳の頃から、いつかフランスを出て生活したいと考えていました。日本はフランスと文化は違いますが、料理を大切にしたり、景色や古いお城を愛でたりと、根底にある考え方は似ている気がします 。 

 

――覚悟を持って移住した阿賀町での暮らしはいかがですか?

トマさん:文句のつけようがありません。好きな仕事ができて、職場の人も優しい。暮らす場所があって、景色も綺麗。何より、お米が驚くほど美味しいです! 大阪にいた頃はお米の味なんて考えたこともなかったのに、ここのお米を食べたら、あまりの違いに衝撃を受けました。この間、大阪の友達に会いに行ってご飯を食べたんですが、「あれ、美味しくないな」と感じてしまったくらい(笑)

 

――お部屋にたくさん飾ってあるスポーツチームのマフラーは、日本へ来てから集めはじめたんですか?

トマさん:もともと日本のサッカーにとても興味があるんですが、マフラーを集めているのは、旅行や旅先での記憶を思い出すための記念としてなんです。神戸の友達からのお土産だったり、奈良へ行ったときのものだったり。サッカーは今でもよく観ていて、休日には新潟市までアルビレックスの試合を観に行くこともありますよ。

 

 

トマさん:でも、日本に来てから新しくすっかりハマってしまったのが、野球なんです。フランスでは誰も野球なんて気にしないんですけどね。友達と試合を観に行ったらすごく面白くて、大阪の友達が多いから、自然と阪神タイガースのファンになりました。

 

 

――「地域おこし協力隊」として阿賀町に関わって、これからの展望はありますか?

トマさん:今、チーズ作りを学んでいます。僕が今の仕事ができる期間はあと2年ほどですが、その後も新潟に居続けたい。阿賀町には若者が集まれる場所が少ないので、自分が作ったチーズや料理、好きなビールを提供できる場所を作りたいんです。

 

――阿賀町を拠点に、新たな場所を「作る夢」が広がっていきますね。

トマさん:今年のお正月に習字をしたんですが、漢字は「作る」を選びました。「未来を作る」という意味を込めて。僕は、今この会社の名刺を持てたことを、本当に誇りに思っているんです。それは、僕が日本で暮らして、働いている証になるから。

 

 

――その名刺は、単なる肩書きではなく、阿賀町で「未来を作っていく」というトマさんの決意をかたちにしたものなんですね。

トマさん:そうです。僕がずっと欲しかったのは、こうして安全に、寄り添ってくれる仲間に囲まれて暮らせる環境でした。阿賀町で見つけたこの日々を、自分の手で面白い未来へつなげていきたいです。今はただ、そのワクワク感の中にいます。 

 

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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