家は、ただの「住む場所」ではなく、そこに暮らす人の価値観や生き方が映し出される場所。どんな家にも、住む人ならではのこだわりやストーリーが詰まっています。シリーズ『イエとヒト。』では、新潟で暮らす人々の「家」と「暮らし」にフォーカス。その空間にはどんな想いが込められているのか、どんなふうに過ごしているのかをご紹介していきます。
第3回は、新潟市江南区で暮らすご夫婦。2024年に建てたばかりの新居には、奥さまの家具とインテリアに関する「好き」がいたるところに散りばめられています。なかでも象徴的なのが、リビングに設けた土間。いったいどんな経緯で取り入れることになったのでしょうか。おふたりのこだわりと暮らしの楽しみについて、いろいろと聞いていきました。
りょうとさんファミリー
りょうとさん、あやかさん、牛乳ちゃん
映画好きのりょうとさんと、家具・インテリア好きのあやかさん。2024年に「高田建築事務所」とともに、自分たちらしい住まいをつくりあげる。愛犬・フレンチブルドッグの牛乳ちゃんも、ひろびろとした土間のあるリビングがお気に入り。
企画/プロデュース・北澤凌|Ryo Kitazawa
イラスト・桐生桃子|Momoko Kiryu
――まず、家づくりしていく上で大切にしたことを教えてください。
あやかさん:「好きなものに囲まれて暮らせる家」をつくることです。大学生のころから家具やインテリアが好きでした。でも、当時は賃貸だったし、お金もなかったし、できることに限りがありました。だからこそ、「いつか自分の家を建てるときには、自分の好きを全部詰め込みたい」って、ずっと思っていたんです。
――その想いをかたちにしてくれるパートナーとして、「高田建築事務所」さんを選んだ決め手は?
あやかさん:はじめて打ち合わせに行ったとき、担当の辻さんが「まずは理想の暮らしを、思いつくまま全部書き出してみてください」と言ってくれたんです。だから放題紙(※放題紙(ほうだいし):家づくりにあたり、普段考えていることや想いを書いてもらうオリジナルの白い紙のこと)に「明るい家にしたい、犬と暮らしたい、お気に入りの家具や食器を飾りたい、洗面台は広くしたい……」と、思いつくままたくさん書きました。それを見た辻さんが、「弊社にとって建築家はお客さまですから、一緒に理想の家をつくっていきましょう」と言ってくれて。その言葉に、もう心をつかまれちゃって(笑)
――あやかさんの「好き」に寄り添ってくれる存在だったんですね。
あやかさん:そうですね。見学会で見たお家のデザインも素敵でしたが、決め手はやっぱり辻さんの人柄と家づくりへの姿勢でした。
りょうとさん:僕たち、ふたりとも人見知りなほうで。初対面の人と話すのはちょっと苦手なんですけど、辻さんは僕らと同い年だし、人柄も朗らかで。打ち合わせも毎回、すごく楽しみな時間でした。
――家づくりのなかで、悩んだことはありましたか?
あやかさん:そうですね…。今までは、同世代で家づくりの相談ができる人っていなかったんです。親世代や年上の人に話すことが多かったので、当時は「こういう雰囲気が好き」っていう感覚をなかなか共感してもらえませんでした。
りょうとさん:SNSでいろいろ調べたんですけど、情報が多すぎて、途中から「何がいいのか」わからなくなっちゃって(笑)
――そんな中で、辻さんは感覚的な部分もしっかり汲み取ってくれたんですね。
あやかさん:はい、打ち合わせのたびにワクワクしていました。最後の打ち合わせのときには、「これで一区切りですね」って言われた瞬間、ちょっと泣きそうになりました(笑)。あんなふうに同じ目線で話ができる人って、なかなかいないと思います。
――実際に完成したお家を見て、どう感じましたか?
あやかさん:もう、最高ですね。とくに気に入っているのが、リビングの土間です。いまでも毎日うれしくなるくらい、お気に入りの場所です。
――リビングの土間、気になっていました。どんな経緯で取り入れることになったんですか?
あやかさん:ずっと前から「いつか家を建てたら置きたい」と思っていたアンティークのキャビネットがあったんです。そのことを相談してみたら、「じゃあ、土間に置いてみませんか?」って提案してくれて。最初にわたしが書き出した要望の中に「古い家具が映える家にしたい」っていうのがあったんですが、それをちゃんと覚えていてくれたんですよね。
――家具を中心に空間をつくっていくような設計だったんですね。
あやかさん:そうなんです。家具がただ置かれているんじゃなくて、家のなかでちゃんと居場所を与えられているような、お気に入りの家具がより好きになる家になりました。
――ちなみに、旦那さんがこだわった部屋はありますか?
りょうとさん:僕は、ずっと憧れていたシアタールームです。部屋の入り口が本棚の隠し扉になっていて、めちゃくちゃカッコいいんですよ。あとで、ぜひ見に行って欲しいです。
あやかさん:でも、こんなこと言っていますけど、まだ一度も使ったことないんですよ(笑)
――えっ、どうしてですか?
りょうとさん:リビングの居心地が良すぎるんです。映画はもちろん好きなんですけど、それよりも、ここでゴロゴロして過ごす時間がいちばん贅沢なんですよね。とはいえ、これから少しずつ好きなフィギュアを飾ったりして、シアタールームもつくり込んでいきたいですね。
――新しい暮らしがはじまって、いちばん変わったことって何ですか?
りょうとさん:外出が減りました。以前は毎週のようにカフェや外食に出ていたのに、いまは家が快適すぎて出かけなくなりました(笑)
あやかさん:キッチンも広くて使いやすいんですよ。設計士さんがうまくかたちにしてくれて。あんまり具体的な要望は伝えてなかったんですけど、思っていた以上に素敵に仕上げていただきました。
――今後、このお家で叶えたいことってありますか?
りょうとさん:庭に空いているスペースがあるので、そこに自分でドッグランをDIYしたいと思っています。アパート暮らしのときは結構DIYをやっていたんですけど、いまは「余計なことしないで」って言われるので(笑)。ちょっとずつ、やらせてもらえたらなと……。
あやかさん:家の中はなるべくいじらないで欲しいですね(笑)。いずれ子どもができて家族が増えても、この家で楽しく過ごしていければいいなって思っています。
「千人鮮色(せんにんせんしょく)」の住まいづくり。 十人十色と言いますが、千人いれば千通りの想いがある。高田建築事務所は「千人千色」の想いを住まいというかたちで鮮やかに表現したいと思っています。住む土地にも住む人にも個性や長所があります。そこに光を当てるところからはじまり、あなたらしさを感じられるデザインをご提案します。誰かのでなはく、あなたの想いから出発する住まいづくりです。
Q. 今回の家づくりのポイントについて教えてください。
A. ヴィンテージのキャビネットが似合う住まいを希望されていたこと、「新しさと古さの良いとこ取り」というキーワードをいただき、新築のまっさらな雰囲気とヴィンテージ家具をうまく中和してくれそうな土間があると良いのではと考えました。また、庭での過ごし方のイメージを多くいただいたことをヒントに、外と中どちらにも土間空間を設け、曖昧な境界がもたらす伸びやかな暮らしをご提案しました。
Q. 施主様との思い出のエピソードはありますか?
A. ファーストプランで間取りがほぼ決まったことが印象的です。玄関から続く内土間や本棚の隠し扉、米杉の出窓など、ヒアリングをもとに提案したアイディアにどんどん乗ってくれる楽しい打合せでした。性能や構造に関しては信頼をおいていただき、お気に入りに囲まれて暮らすことをいちばんに、おふたりのこだわりを詰め込んだおかげで何度もお伺いしたいお住まいになりました。最近仲間入りした牛乳ちゃんがとても羨ましいです。(辻より)
株式会社 高田建築事務所(新潟営業所)
新潟市中央区女池南3-5-15
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