お菓子×カクテル。
「0258」が提案する、一皿と一杯。

食べる

2026.03.18

text by Ayaka Honma

お菓子に合わせる飲み物といえば、コーヒーやお茶を思い浮かべる方が多いかと思います。長岡市にある「0258」では、吉樂さんご夫婦がお菓子に合うカクテルやノンアルコールのモクテルを提案しています。バーテンダーとしてお酒を作っている野歩さんは、「お菓子とお酒のペアリングの幅をもっと広げたい」と、県内の飲食店ではじめて「卓上減圧蒸留器」を導入したんだとか。カクテルやお菓子のこと、お店で提案しているペアリングのことなど、おふたりに詳しくお話を聞いてきました。

Interview

吉樂 野歩

Nobu Yoshiraku(0258)

写真左/1979年長岡市出身。東京に上京し、原宿でバーテンダーとして働きはじめる。その後都内のバーで経験を積み、六本木では店舗の経営にも関わる。2010年に長岡に戻り、2014年に「0258」をオープン。旅行が好きで、お店をはじめる前は半年ほど自転車で国内を旅したり、カンボジアでバックパッカーをしていたそう。

吉樂 里美

Satomi Yoshiraku(0258)

写真右/1978年長岡市出身。東京の大学を卒業後は、東京や愛媛のパティスリーでお菓子の販売や製造の仕事に携わる。「0258」のオープン後、パティシエールとして働きはじめる。

お菓子とカクテルのお店、
「0258」ができるまで。

――早速ですが、野歩さんは長い間、東京でバーテンダーとして働かれていたそうですね。

野歩さん:祖母の家が二子玉川にあったのもあり、小さい頃から東京によく行っていたんです。新潟を出て仕事をするなら東京かな、と思い、最初は原宿でバーテンダーとして働きはじめました。やっていくうちに、仕事として面白さを感じていって。いろんなお店で経験を積んだ後は、六本木で店舗責任者としてバーの経営に携わりました。

 

――そのまま、東京でお店を続けることは選ばれなかったんですか?

野歩さん:最初は自分のお店を東京に出すことを考えて、麻布十番あたりの物件もチェックしていました。でも、やっぱり家賃がすごく高くて。それで長岡の物件も探して、この場所にお店を作ることを決めました。ちなみに、お店の名前の「0258」は長岡の市外局番をそのまま使いました(笑)

 

――2014年にお店がオープンした後、里美さんがこちらで働きはじめました。

里美さん:それまでは、東京や愛媛でお菓子の販売や製造の仕事をしていました。大学では全然違うことを学んでいたんですけど、小さい頃からお菓子作りが好きで。卒業するときに、「やっぱりお菓子作りが好きだな」って思って、この道に進みました。

 

野歩さん:「0258」がオープンした当初は、お酒とお料理を出していたんです。母が裏千家の先生で、私自身も茶道を習っていて。お店では裏千家の「茶事懐石」の要素を取り入れた、季節を感じてもらえるようなお料理とお酒を出していたんです。里美さんが働きはじめてから今の体制になりました。

 

――野歩さんのカクテルと里美さんのお菓子のペアリングを楽しむことができるのは、このお店ならではの魅力です。

野歩さん:私は以前、お菓子は買ってお家で食べたり、フルコースの最後に食べたりするものくらいに思っていたんです。でも里美さんのお菓子を食べてから、「お店で楽しむもの」としてお菓子を見ることができるようになって。それで2018年から「お菓子とカクテルのペアリング」をはじめました。

 

里美さん:お菓子のペアリングコースは、お菓子を3品ご用意しています。そのうちのひとつのショートケーキは、お店で食べるからこその味わいを感じてもらえたら、と思います。よかったら食べてみてください。今、準備をはじめますね。

 

壁に掛かった大きな写真は、野歩さんがカンボジアに行ったときに撮影したもの。

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表現の幅を広げる、卓上減圧蒸留器。
味も香りも、存分に楽しめるペアリング。

――こちらではアルコールの入っていない、モクテルも楽しむことができますね。

野歩さん:モクテルでペアリングコースを組むこともできます。カクテルやモクテルの幅を広げるために、昨年から「卓上減圧蒸留器」というものを使いはじめました。

 

――それはいったい、どんなものなのでしょうか。

野歩さん:タンクの中に果物やハーブと水を入れて蒸留させて、食材の香りがついた蒸留水を作る機械です。減圧蒸留なので、40度から50度くらいで沸騰します。今回はいちごのモクテルに使う、イチゴの蒸留水を作っています。他の果物やハーブを入れて蒸留水を作ることもあります。

 

――入れるもの次第で、いろんなモクテルを作ることができそうです。

野歩さん:この蒸留水はカクテルやお菓子にも活用ができます。ベルガモットを使った蒸留水は、お菓子の香り付けとしても使ったりしています。それと、ペアリングを組むときは、グラスの形も含めて考えているんです。グラスの形が変わると、液体のニュアンスも変わってきます。ここでは、主に「木村硝子」さんのグラスを使って、ペアリングを組んでいます。

 

――グラス形はただのデザインではない、と。

野歩さん:液体にとって、香りってとても重要な要素なんです。例えばお料理のコースで、カブと真鯛をあんにかけた「蕪蒸し」という料理にあわせて、すだちの蒸留水を使ったモクテルをお出しします。ステムと呼ばれる、グラスの脚がなく口径が広い「ベッロL」というグラスで出すと、ミネラル感が出やすくて、ステムのある口径の狭い「ピーポ390」というグラスだと、より直線的な風味が楽しめます。「蕪蒸し」の場合、ミネラル感は真鯛にあるので、直線的な風味が感じられるグラスを選択しました。

 

――野歩さんがカクテルやモクテルを作るなかで、どんなことを大切にしているのでしょう。

野歩さん:ワインや日本酒って、お酒の原料がそれぞれ決まっているけれど、カクテルはいろんなお酒を使うので、選択肢が膨大にあるんですよ。うちはメニュー数も多い方ですし、何を選んだらいいかわからないっていう方も多いと思うんです。だからまず、お客さまの好みを聞くことは大切にしていますね。どんな味が好みで、日頃どんなものを飲んでいるのか。2軒目で来てくださった方は、1軒目で何を食べてきたかを聞くこともあります。

 

――好みを聞いて、提案してくれるんですね。

野歩さん:あと、メニューの名前を「ちょうどいい金柑」みたいに、キャッチーなものにしているんです。この名前にしているおかげか、お客さまから「これってなんですか」って質問していただけることも多くて。そこからカクテルに合ったお菓子の提案や、お酒の提案をすることもあります。バーって、お酒の上級者向けみたいなイメージを持っている方もいると思うんです。うちでは、どのお客様とも会話をしてお酒をつくっているので、気軽に楽しんでもらえるかなと思っています。

 

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新しい食体験を、
できたてのお菓子とカクテルで。

――お話を聞きながら、ショートケーキとモクテルを作っていただきました。 このケーキには、どんなこだわりがあるのでしょう。

里美さん:これは「作りたて」のショートケーキなんです。その日焼いたスポンジに、季節ごとのフルーツ、それに合わせたとろとろのクリームをのせています。今日は広島のブラッドオレンジをソースにしたものと、カカオをつかったクリームを使っています。

 

野歩さん:それに合わせて、越後姫を使ったモクテルをご用意しました。コールドプレスしたものと、蒸留水にしたもの、ラズベリービネガーとハーブと一緒に漬け込んだ自家製のビネガーシロップに越後姫を使っています。この3つとクランベリージュースをシェイクして、仕上げにディルをのせて、レモンピールの香りをプラスしています。ビネガーシロップとクリームの相性が抜群ですよ。

 

――ケーキのスポンジって、できたてはこんなにふわふわなんですね。モクテルの酸味とクリームがスッと入ってきて、食べるのが止まらないです(笑)

里美さん:そう言ってもらえて嬉しいです。 今の時期はレモンを使ったケーキもご用意しています。季節のケーキやガトーショコラは温めてお出ししているんです。私自身、あったかいケーキが好きで、お店で食べてもらうなら、あたたかい状態で出したいなって。このケーキは「レモンドリズル」っていうイギリスのお菓子をアレンジしたものになります。

 

野歩さん:このケーキには、シナノゴールドを使ったモクテルと合わせると美味しいですよ。シナノゴールドのジュースに自家製のトリュフハニーシロップとグレープフルーツジュース、アクセントにクローブとシナモン、ガーニッシュにいり番茶の茶葉をのせました。

 

――ひとつひとつの食材に意味がある、と考えるとより一層美味しく感じます。

野歩さん:ペアリングってほんとに面白くて、「絶対に合う」って思っていた組み合わせも、実際やってみると全然合わないなんてことがあったり、逆に、思ったよりも合う組み合わせのものもあったり。合うか合わないかは、やってみないとわからないっていう大変さもありますけど、それも面白いなって思っています。

 

上と下、それぞれのスポンジで食感が変わるのも◎。「作りたて」のショートケーキは、コースのみ提供。

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長岡だから、できたこと。
ふたりが目指す、これからの「0258」。

――「0258」をオープンしてから、今年で12年目になります。手応えとしてはいかがでしょう。

野歩さん:長岡でお店をはじめたからこそ、その年ごとにいろいろ挑戦できているなって思っています。ペアリングをはじめたことも、卓上減圧蒸留器を使うことも、ここだったからできたのかなって。きっと、東京でお店を出していたら、新しいことに挑戦する時間はなかったのかもしれないです。

 

――今後やってみたい「挑戦」を教えてください。

野歩さん:卓上減圧蒸留器を使って、新しいことにチャレンジしてみたいです。今考えているのは、木を使った蒸留水を作ることですね。上手い具合に蒸留できれば、ノンアルコールのハイボールもできるし、木のニュアンスは柑橘やハーブとも相性がいいので、モクテルの幅も広がると思うんです。あとは焦がしのニュアンスも、ノンアルコールで再現してみたいですね。卓上減圧蒸留器をもっと活用できるように、いろいろ試していこうと思います。

 

里美さん:「お菓子×カクテル」の楽しみを、もっといろんな方に知ってもらうために、「0258」で季節にあわせた提案をしていきたいと思っています。

 

心がほどけるような、優しくてあったかいケーキでした。

0258

長岡市城内町2-5-6

昼の部 11:30~17:00 (予約制/当日不可)

夜の部 18:00~23:00

月・火曜定休

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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