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世田谷の洋菓子店から受け継いだ「オランジェット」が看板の「Un sourire」。

「オランジェット」というお菓子を知っていますか? 砂糖漬けしたオレンジの皮を、チョコレートで包んだフランス生まれのお菓子です。苦みと甘みのバランスが絶妙で、大好きだという人も多いのではないでしょうか。そんな「オランジェット」がメインの「Un sourire(アン・スリール)」という洋菓子店が昨年末、五泉にオープンしたんだそう。オーナーシェフの江口さんを訪ね、お店のことや「オランジェット」のこだわりについて聞いてきました。

 

 

Un sourire

江口 真季子 Makiko Eguchi

1980年五泉市生まれ。高校卒業後すぐに上京し、洋菓子作りの修業をする。最後に修業した「Un sourire」の店名や商品を引き継ぎつつ、2022年12月に五泉で「Un sourire」をオープン。ジャンルを問わず音楽を聴くことが好き。

 

修業した東京の店を受け継ぎ、五泉で洋菓子店をオープン。

——江口さんは昔からお菓子作りが好きだったんですか?

江口さん:そうですね。小学生の頃からお菓子作りが好きで、バレンタインデーにチョコを作ったりしていました。ケーキを食べることよりも、ケーキ屋さんのショーケースを眺めたり、レシピ本を見たりすることの方が好きだったんです(笑)

 

——根っからのパティシエですね(笑)

江口さん:ずっとパティシエに憧れていたので、学校を卒業してすぐに東京のケーキ店で働きはじめたんです。ところが実際に仕事をしてみると、自分が抱いていた夢とのギャップに驚きましたね。

 

——どんなことにギャップを感じたんでしょう?

江口さん:私のなかではパティシエの仕事って、女性らしい華麗でふんわりしたイメージがあったんです。ところが実際は体力勝負の仕事で男性の方が圧倒的に多いし、女性は長続きしないんですよ。労働条件もいいわけではないので、本当に好きじゃなければ続けられない仕事でしたね。

 

 

——文化系のイメージだったのに体育会系だったと。江口さんは本当にお菓子作りが好きだったから続けてこられたんですね。ずっとそのケーキ店で修業されていたんですか?

江口さん:遠い親戚が世田谷で洋菓子店をやっていたので、ふらっと立ち寄ってみたんです。そしたら人手が足りなくて困っているということだったので、28歳くらいからそのお店を手伝うことになりました。

 

——そこはどんなお店だったんでしょうか。

江口さん:創業30年以上の洋菓子店で、20種類以上の生ケーキや焼菓子を作っていました。なかでも「オランジェット」を看板商品にしていたんです。

 

——じゃあ江口さんが作っている「オランジェット」は、その頃に勉強されたものなんですね。

江口さん:はい、私はオレンジの皮を切る作業を担当していたんですけど、長さや厚さについては1ミリ単位で、最後まで叱られ続けていました(笑)。そのこだわりがあったからこそ、30年以上もお客様に愛され続けてきたんだろうなと思います。

 

 

——すごいこだわりですね。

江口さん:ところがオーナーが体調を崩して、お店を続けることができなくなってしまったんです。最初は世田谷のお店を継いで続けてほしいと言われたんですけど、私には荷が重いと思ってお断りしたんですよ。それでお店を畳むことになって、私は昨年新潟に戻ってきました。

 

——それは大変でしたね……。でも、どうして新潟へ戻ってくることに?

江口さん:18歳の頃から「いつかは新潟でお菓子屋さんをやりたい」という夢を持っていたんです。同時に、あんなにもお客様に愛され続けた「オランジェット」を残したいという思いもあったので、「Un sourire」という店名共々受け継ぐことにしました。

 

シンプルな材料で作るから、絶妙なバランスが大事。

——オープンにあたって苦労したことはありましたか?

江口さん:すぐ独立することになるとは思っていなかったので、開店資金の準備をまったくしていなかったんです(笑)。ですから、そのやりくりが大変でしたね。

 

——確かに急な展開だから大変だったでしょうね。しかもオープンした12月ってただでさえ忙しい時期なんじゃないでしょうか。

江口さん:チョコレート商品って夏場より冬場の方が売れるんです。売れる時期を逃したくないと思ったので12月にオープンしたら、いきなり繁忙期に突入することになってしまって大変でしたね。その後も地元新聞で紹介していただいた反響があって、半年近くはバタバタしていました。

 

——大変そうですけど、反響があるのはうれしいことですね。

江口さん:そうですね。長い間会っていなかった地元の知り合いが、新聞で知って来店してくれたり、幼稚園でお世話になった先生と再会できたりして嬉しかったです。

 

 

——ところで、やっぱり看板商品は世田谷の修業先から受け継いだ「オランジェット」なんですよね。

江口さん:修業先のお店を畳むときに、常連のお客様から「お店を閉めても『オランジェット』だけは続けてほしい」っていう声があったんです。全国的にも「オランジェット」をメインでやっている洋菓子店ってほとんどないので、ネット販売でも全国各地からご注文をいただきますし、「オランジェット」目当てで遠方から買いに来てくださるお客様も多いですね。

 

——どんなことにこだわって「オランジェット」を作っているんですか?

江口さん:オレンジの皮とチョコレートだけのシンプルな材料で作っているので、絶妙なバランスが大事なんです。チョコレートが変わるだけで、味がガラッと変わってしまうんですよ。

 

 

——味もそうですけど、このかたちやサイズも絶妙ですよね。いくらでも食べられちゃいます(笑)

江口さん:クセになりますよね。ありがたいことにお客様のなかにはリピーターになってくださる方も多いんです。午前中に買っていかれたのに「美味しかったから」と言ってまた午後に買いに来られたお客様もいました(笑)

 

——そこまでハマってもらえると嬉しいですね。オープンしてまだ半年ですけど、これからはどんなふうに営業していきたいですか?

江口さん:私は欲がないので、お店を大きくしたいとか増やしたいとか、そういう考えは全然ないんです。「オランジェット」を守りながら、長くお店を続けられたらいいなって思っています。

 

 

 

Un sourire

五泉市木越1519−3

10:00-18:00

月火曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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