Things

就労支援施設がはじめた、焼き菓子と手作り雑貨のお店「AORINGO」。

障がい福祉サービス事業所「NPO法人 青りんごの会」。障がいを持つ方の就労支援やグループホームの運営を行っているこちらの施設では、活動のひとつとして利用者の方が作ったお菓子や雑貨を販売しているんだとか。これまでは委託販売を中心に活動していましたが、昨年10月に新潟市北区で直売店「AORINGO」をオープンしました。中村さんご夫婦で運営しているという「青りんごの会」、今回は奥さんの優子さんに施設でお菓子作りをはじめた経緯や、お店のことについて、いろいろとお話を聞いてきました。

 

 

AORINGO

中村 優子 Yuko Nakamura

1979年新潟市生まれ。結婚を機に障がい福祉事業に携わるようになる。現在はサービス管理責任者としてご主人と一緒に「特定非営利活動法人 青りんごの会」「サポートセンター青りんご」「グループホーム青りんご」を運営。昨年10月、施設に併設するかたちで焼き菓子や手作り雑貨の直売店「AORINGO」をオープン。趣味は旅行で、家族で全県制覇を目指している。

 

「誰でも参加できる」というところからはじめた、お菓子作り。

――まずは、「AORINGO」を運営する「青りんごの会」について教えていただけますか。

優子さん:福祉サービス事業を行っているNPO法人です。具体的に何をしているかっていうと、障がいのある方と一緒に訓練して2年間で一般就労を目指す「就労移行支援」っていう事業と、ここに働きに来て地域参加する「就労継続支援B型」っていう事業。あとは、よくグループホームって言われるんですが「共同生活援助」という事業もやっています。

 

――その中で優子さんはどういったお仕事をされているんですか?

優子さん:私はサービス管理責任者の立場で、利用者さんや職員さんの困りごとを聞いたりして、全体を調整しています。施設長は主人で、夫婦で運営しているんです。

 

 

――支援事業の中でお菓子作りや雑貨作りといった活動は、どういう位置づけにあるんでしょうか。

優子さん:「就労継続支援B型」の事業の一環で、ここに働きに来て「工賃」っていうお給料を貰うチームの方たちの授産活動として「焼き菓子」「縫製」「園芸」「施設外就労」をやっています。

 

――お菓子作りは会の設立当初からしていたそうですね。

優子さん:「青りんごの会」はもともと主人のご両親がはじめたものなんです。法人化する前から、障がいを持つお子さんとお母さんの居場所作りや、身体障がいを持つ方が地域に繰り出すためのサポートをする中で、「支援学校を卒業しても働く場所がない」という相談を受けたことがきっかけでした。そこで、「誰でも参加できる」っていうところからお菓子作りを取り入れました。もう20年以上前ですね。

 

 

――ずっと委託販売を中心に販売されていたそうですが、直売店をオープンすることになったのにはどんなきっかけが?

優子さん:数年前までは豊栄駅周辺に事業所を構えていたんですけど、引っ越すことになって。10年以上前にこの大瀬柳で農園を開いていたこともあって、こちらに本体と焼き菓子部門を移すことになりました。それで「新しく建てるのであれば、直営ショップをやりたいね」って話になって。

 

――ふむふむ。

優子さん:お店があることで、利用者さんが自分たちの作ったものがどのように流通されていくか肌で感じられるようになりますし。

 

 

――いろんな焼き菓子を販売している中で、スコーンが人気だと伺いました。スコーンは会の設立当初から作られていたんですか?

優子さん:そうです。日本が米不足でなかなかお米が食べられなかった時期に、義理の母がイギリスのお菓子であるスコーンを作ってご飯代わりにしていたってことで、そのレシピをもとに作りはじめました。

 

――じゃあスコーンが流行るかなり前から作っていたんですね!

優子さん:今はスコーンの認知度って高いと思うんですけど、「スコーンってなんだ?」って言われる時代から作っていました(笑)。それもあって、とても大事にしているお菓子です。ほかの焼き菓子も義理の母が考えたレシピをベースにして、季節に合わせていろいろ調整しながら作っています。

 

――今はお菓子作りの全部の工程を利用者さんがやられているんですか?

優子さん:うちでは最初から最後まで利用者さん主体でやっています。職員は全体をスムーズに流すとか、作業をつなぎ合わせる役目として関わっています。

 

 

――優子さんご自身は、このお仕事をはじめられてどのくらいですか?

優子さん:結婚してからなので11〜12年ですね。

 

――大変なことも多いお仕事だとは思いますが、その中でやりがいを感じることはありますか?

優子さん:うーん……。「青りんご」を引き継いでまだ間もないですし、やりがいや達成感っていうのはまだまだ感じられるほどではないっていうのが実際で。ただ、結婚するまでは障がいのある方との関わりってなかったんですけど、この仕事をはじめて、年齢や性別、抱えている障がいもそれぞれ違う方たちが、みなさん一生懸命働いている姿を目の当たりにする中で、その生活のひとつの手助けになれたらいいなって思いました。

 

――引き継いだばかりで、今はきっと目の前のお仕事で毎日お忙しいですよね(笑)

優子さん:そうなんです(笑)。あとうちでは就労移行支援事業に紐づいて、一般就労されて半年経った方を対象に、更に継続的に就労できるようにサポートする「就労定着支援」をやっていて。「就職できてよかった」で終わるんじゃなくて、就職した後も続けられるように「何かを続ける」っていうことの大切さをサポートしていきたいです。

 

地域の方に貢献できるように、展開していきたい。

――お店に来るお客さんは、どういう方が多いですか?

優子さん:いろんな方が来られますけど、特に近所の方には喜んでいただいています。地元の小学生が、夏休みとか学校終わってから遊びに来てくれることもあります。ここは買い物困難地域だったり洪水警戒地域だったり、いろんなことが重なっている地域で。それもあって、この建物の2階は部屋の壁が取れるように作ったので、避難場所として迎えられるようになっているんです。将来的に、地域の方に貢献できるように展開していきたいです。

 

 

――ここが今以上に地元の方から大切にされる場所になるといいですね。ほかにも、これからの目標があれば教えてください。

優子さん:お店に関しては、一般の小売店さんに到達できるように、しっかり売れる商品を提案できるようになることが大事なのかなって思っています。組織としては、すべての世代の方に対してサポートできる体制を整えられたらいいなって思っています。高齢者の方は介護が必要になることもあって、今はなかなかお引き受けできない体制なので、全体を通してお手伝いできるようになったらいいですね。あ、主人が帰ってきました。

 

――いいタイミングで! 最後に、施設長の勉さんからもひとこといただけますか?

勉さん:障がいのある人もない人も、一緒に働けるようなまちづくりができるといいですよね。「青りんごの会」としていろいろな部分で関われるようになったらいいなって考えています。

 

 

 

AORINGO

新潟市北区大瀬柳5244番地4

025-386-5590

営業時間:月~金 10:00-17:00/土 10:00-15:00

定休日:日曜・祝日・隔週土曜

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • She
  • 僕らの工場
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP