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館内にカフェをオープンした、うさぎ尽くしの「光兎の宿 あらかわ荘」。

これから秋が深まってくると紅葉の美しい季節を迎えます。荒川沿いの関川村には人気の紅葉スポットがたくさんあり、高瀬温泉には多くの観光客が宿泊に訪れます。その高瀬温泉にある「光兎(こうさぎ)の宿 あらかわ荘」にカフェができたと聞いて、うさぎに囲まれた和モダンな空間で、若旦那の佐藤さんにお話を聞いてきました。

 

 

光兎の宿 あらかわ荘

佐藤 匠 Takumi Sato

1996年岩船郡関川村生まれ。新潟の調理師専門学校を卒業し、東京赤坂の料亭で8年間修業。新潟に帰ってから村上の料亭で1年間の修業を経て「光兎の宿 あらかわ荘」に就業。趣味はカフェ巡り。

 

高瀬温泉にある、うさぎだらけの謎のお宿。

——館内どこを見てもうさぎだらけですね。これは一体どうして……?

佐藤さん:月のうさぎが山の上に降り立って村の守り神になったという、関川村に伝わる「光兎伝説」が元になっているんです。女将である母もうさぎが大好きで2匹も飼っていますし、祖母は弥彦の出身でうさぎに縁があるので「月の使者うさぎが見守る宿」というコンセプトの旅館になりました。うさぎの同伴OKなお部屋もご用意しているんですよ。

 

 

——うさぎまで泊まれるんですね。裏にある蔵は使っているんですか?

佐藤さん:母のコレクションしたスノードームや、かえるの置物を展示するギャラリーになっているんです。興味のある方にはぜひ覗いてみてほしいですね。

 

——うさぎだけじゃなくて、かえるまで……(笑)。ところでこちらは廊下がすべて畳敷きなんですね。

佐藤さん:以前はカーペットの上をスリッパで歩いていただいていたんですけど、自分の家のように寛いでいただきたいということで、8年前に増築リフォームして全館畳敷きに変えたんですよ。大浴場の洗い場も畳敷きなので、海外からのお客様がとても喜んでくださいました。

 

やる気のなかった料理人見習いを、目覚めさせた出来事。

——佐藤さんは家業の「あらかわ荘」を継ぐ意志があったんでしょうか?

佐藤さん:「いつかそうなるんだろうな」くらいに思っていましたね。だからなんとなく調理師専門学校で料理の勉強をして、東京の赤坂にある料亭で修業したんです。「ミシュランガイド」で三つ星に選ばれたお店でした。

 

——料亭で「なんとなく」修業をするなんて……(笑)。絶対に厳しい職場ですよね。

佐藤さん:仕事を終わって寮に帰ると、同僚が逃げ出していなくなっていることもありました。そんな厳しい職場なのに、やる気がない上に不器用なので、叱られまくっていましたね(笑)。なんだろう……人格からボコボコに叩きのめされるような感じで、トイレでひとり泣くこともありましたよ。

 

 

——そんな目にあったら、料理が嫌になるんじゃないですか?

佐藤さん:でも料理に打ち込むきっかけとなった出来事があったんです。修業をはじめて2年目に焼き場の助手をやっていたとき、排煙するダクトの掃除は僕の仕事だったんだったんですよ。カウンターからそのダクトを見たお客様が「いつも綺麗にしているね」と感心して褒めてくださったらしいんです。普段はとても厳しい先輩が僕にその言葉を伝えてくれて、「お前のおかげで褒めていただけたんだ。ありがとう」と褒めてくれたんです。

 

——それは嬉しいですね。

佐藤さん:それからはその先輩への憧れもあって、料理がどんどん好きになっていったんです。ぼんやりとしか考えていなかった家業のことも、真剣に考えるようになりましたね。その先輩は僕が料亭を辞めるときも、買ってきたお守りを泣きながら渡してくれました。僕にとっては一生の宝物です。

 

——私もちょっと泣きそうなんですけど……。いい人と巡り会いましたね。

佐藤さん:本当にそう思います。料亭のお客様もいい方ばかりで、ずいぶんとお心づけをいただきました。遠くから「あらかわ荘」へ泊まりに来てくださるお客様までいらっしゃるんですよ。

 

知られていない関川村の「美味しいもの」を紹介したい。

——「あらかわ荘」で働きはじめて、大変だったことがあったら教えてください。

佐藤さん:修業先の料亭で学んだこととのギャップに悩むことが多かったですね。修業先では最新の調理設備を使っていましたが、「あらかわ荘」では古い設備を使って料理を作るので、火加減や焼き時間が変わってきちゃうんですよ。料理にかけられる原価も違うので、原価を抑えながらクオリティの高い料理を作らなければならず、食材の組み合わせを工夫して試行錯誤を重ねました。

 

——「勝手が違う」ということですね。料理をする際に心がけていることってあるんですか?

佐藤さん:旅の楽しみといえばその土地の料理だと思うので、関川村や村上市の食材を使って、美味しさを引き出すような料理を心がけています。料理を通して関川村を好きになってもらいたいですね。

 

——関川村の美味しい食材には、どんなものがあるんでしょうか?

佐藤さん:カジカやアユ、イワナといった川魚は有名ですけど、藻くず蟹がよく捕れることはあまり知られていないんですよ。他にも、めちゃめちゃ甘いカボチャやシイタケ、「蛇喰豚(じゃばみぶた)」や「朝日豚」もオススメです。そうしたあまり知られていない名産品を、世の中に紹介していきたいと思っています。

 

カフェメニューもやっぱり、うさぎだらけ。

——このたびカフェをオープンされたいきさつを教えてください。

佐藤さん:旅館って敷居が高くて入りにくいと思うんですけど、若い人をはじめとしたいろいろな人から気軽にご利用いただきたいという思いがあったんです。まわりにカフェがないので、村の人たちが憩えるような場所を作りたいという気持ちもありました。そこでラウンジを使って今年の7月から「Cafe RaviRavi(カフェ ラビラビ)」をオープンしたんです。

 

 

——カフェのメニューも佐藤さんが手がけていらっしゃるんですか?

佐藤さん:カフェは妹が母と相談しながら担当しています。妹は横浜にあるホテルのキッチンや喫茶店で働いていた経験があるんです。

 

——それじゃあカフェの仕事はぴったりですね。「Cafe RaviRavi」をオープンするにあたって、気をつけたことはあるんでしょうか?

佐藤さん:旅館の雰囲気を壊さないように気をつけましたね。和モダンテイストのスペースにして、「光兎の宿」らしくいろいろなところにうさぎがいるんです。お料理やスイーツにもうさぎを盛り込んであって、泣いて喜んでくださるうさぎ好きのお客様もいらっしゃいました(笑)

 

 

——そこまで喜ばれるメニューって、どんなものなんでしょう?

佐藤さん:人気があるのは「わらび餅」ですね。小国のわらび粉を100パーセント使った、混ぜものなしの「わらび餅」なんですよ。わらび粉だけで作っているのでとても柔らかくて、風味が口一杯に広がるんです。

 

——うさぎをデザインした皮に餅を乗っけて、最中のように食べるんですね。こちらの「クリームソーダ」にも白いうさぎが頭を出してますね(笑)

佐藤さん:ここまで大きなアイスクリームを使っている「クリームソーダ」はあんまりないみたいで、小さなお子様に人気があります。

 

——スイーツだけじゃなくて、軽食も用意されているんですね。

佐藤さん:ランチタイムにご提供している「タコライス」は、この辺であまり食べることができないメニューなので人気です。あと、うさぎの形をした自家製パンで作る「フレンチトースト」も人気があるんですよ。限定3食ですけど、事前にご予約いただければご用意できます。

 

旅館やカフェを通して紹介したい関川村の魅力。

——「Cafe RaviRavi」を通してやってみたいことはあるんでしょうか?

佐藤さん:期間限定メニューとして、高瀬温泉にある「中村屋製菓」さんのあんこを使った「栗羊羹」を提供しています。そんなふうに、これからも地元のお店とコラボしながら、温泉街や関川村を盛り上げていきたいと考えています。

 

——なるほど。関川村の魅力やオススメスポットを教えてもらえますか?

佐藤さん:関川村は山と川に囲まれた豊かな自然が魅力だと思います。春には桜並木が綺麗ですし、土手からは満天の星空を見ることもできます。僕のイチオシは「丸山大橋」ですね。44mの高さから見下ろす景色は圧巻で、新緑や紅葉の他に雲海が見られることもあるんですよ。

 

——それはぜひ見てみたいですね。最後に、今後予定していることがあったら教えてください。

佐藤さん:「あらかわ荘」の話になりますが、カフェとは別に食堂の営業を考えているんです。あと旧館をリフォームして「大正浪漫」をテーマにした客室を作る予定もあります。「あらかわ荘」や「Cafe RaviRavi」をきっかけに、魅力ある関川村にも興味を持っていただけたら嬉しいですね。

 

 

 

光兎の宿 あらかわ荘

岩船郡関川村高瀬308

0254-64-2118

日帰り入浴10:00-15:00/カフェ10:00-16:00(15:30L.O)

火水休(カフェは金土日曜のみ営業)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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